【法令共通】消防法の遡及適用とは?用途変更の特例も解説【過去問】

消防法って昔の建物にも適用されるってホンマなん!?
そうなんです‥消防法って「遡及」して適用される場合があるんです。
消防関係者でも、この「遡及」適用は厄介なイメージある‥。
ポイント抑えれば簡単なので、ここでは消防設備士試験の過去問にも触れながら解説していきます!

消防法の「遡及」とは

消防法は一定の条件に当てはまる防火対象物については、過去の建物であっても現行の基準が適用=遡及(そきゅう)する法律です。

まず、消防法が遡及して適用されない場合について確認していきましょう。

消防法が遡及されない防火対象物

消防法が遡及されない=現行の消防法が適用除外されるのは以下の既存防火対象物です。

参考消防法 第17条の2の5〔適用除外〕

既に建っている防火対象物や、法改正前に工事に着手していた建物には消防法の遡及適用はされません。

よって消防法においても「既存不適格」の物件は生じ得ます。

しかし、いくつかの条件を満たしてしまうと消防法が遡及して適用される例外の規定が設けられています。

消防法が遡及して適用される条件

消防法が遡及して適用されるかどうかを分ける条件として、大きく以下の3種類が挙げられます。

  1. 消防用設備等の種類
  2. 増改築や修繕および模様替えの規模
  3. 用途変更

詳しく見ていきましょう。

1. 消防用設備等の種類による遡及

消防用設備等の種類によって以下の通り消防法の遡及が適用されるものがあります。

参考消防法施行令 第34条〔適用が除外されない消防用設備等〕

ポイント

後から設置および工事をすることが比較的簡単な設備のみ遡及の対象となっています。
例えば『屋内消火栓の法改正あったから、配管やりかえて‥』とか言われても、そんなもん費用かかりすぎるから無理やわ!って話。
消火器やったら置くだけやし‥特定防火対象物のみ自火報も遡及しますが、それだけ大事な設備って位置づけなのが伺えます。

2. 増改築や修繕および模様替えの規模による遡及

大きく以下の4つの場合については消防法が遡及されます。

  1. 従前の規定に、もともと違反している場合
  2. 工事の着手が、法律が施行または適用された後で政令で定める増築・改築または主要構造部である壁について行う過半の修繕もしくは模様替えをした場合
  3. もとから消防用設備等が規定に適合していた場合
  4. 特定防火対象物である場合

特に、実務でも消防設備士の試験でも頻出する2. と4. の場合に注意が必要です。

① 従前の規定に、もともと違反している場合

もともと消防法を違反していた建物について、それを是正する際は現行の基準に従わなければならないという意味です。

②工事の着手が、法律が施行または適用された後で政令で定める増築・改築または主要構造部である壁について行う過半の修繕もしくは模様替えをした場合

こちら消防設備士の過去問にて頻出ですから必ず覚えておきましょう。

参考消防法施行令 第34条の2〔増築及び改築の範囲〕消防法施行令 第34条の3〔大規模の修繕及び模様替えの範囲〕

政令で定める増改築とは

  1. 増築または改築に係る当該防火対象物の部分の床面積の合計が1,000㎡以上となるもの
  2. 増築または改築に係る当該防火対象物の部分の床面積の合計が、基準時における当該防火対象物の延べ面積の1/2以上となるもの

例えば最悪なのが増改築の工事計画を進めていて、その途中に法改正があった場合です。
もし工事計画していた増改築の規模が床面積1,000㎡以上もしくは延べ面積の1/2以上であった場合は設計変更する必要があります。

③もとから消防用設備等が規定に適合していた場合

本来その建物に不要(任意設置)していた設備が、法改正によって義務設置扱いになったとします。

その際に『メンテナンス費用がかかるから…従前の規定なら不要だったので外します!』というのはダメという話です。

④特定防火対象物

結局、特定防火対象物の用途に該当する建物であれば消防法は遡及するのです。

そんな‥一番初めに「①現に存する防火対象物」と「②工事中の防火対象物」について消防法は遡及しないと謳ってたじゃん!
(5)項ロ 共同住宅とか(12)項イ 工場は非特定防火対象物なので遡及しないけど、まるっと特定防火対象物って括りはキツいよね。

特定防火対象物と非特定防火対象物については以下のブログをご参照下さいませ。

3. 用途変更による遡及

実際もう少しルールは細かいですが、変更後の用途が非特定防火対象物の場合のみ特例で遡及しなくてよいと覚えておいてください。

参考消防法 第17条の3〔用途変更の場合の特例〕

ちなみにイラストは非特定防火対象物として(15)項 その他の事業所および(14)項 倉庫を、特定防火対象物として(3)項ロ 飲食店を例示しています。

つまり特定防火対象物に用途変更したら、それに合わせて消防法も遡及されるって話か‥。
民泊バブルの時、(5)項ロ 共同住宅から(5)項イ ホテルに用途変更されまくっていたので‥追加で消防用設備等の設置義務が生じるパターンありましたね。

では、ここまで学んだ話を実際に消防設備士の試験に出題された過去問を用いてクイズ形式でおさらいしていきましょう!

消防設備士試験の過去問(法令共通)

Q質問

消防用設備等の技術上の基準が改正された場合、すべての防火対象物に改正後の規定が適用される消防用設備等は次のうちどれか。(甲4奈良)

A回答

消防法が遡及される消防用設備等は以下の通りです。

Q質問

防火対象物の増築に関する次の記述において、文中の〔 〕に当てはまる数値として、消防法令上、正しいものはどれか。(乙6京都)

「設備等技術基準の施行または適用の際、現に存する特定防火対象物以外の防火対象物における消防用設備等 (消火器・避難器具その他政令で定めるものを除く。) がこれらの規定に適合せず、当該規定が適用されていないとき、当該防火対象物を増築した場合、基準時以降の増築部分の床面積の合計が、〔 〕㎡となるものは、当該消防用設備等を当該規定に適合させなけばならない。ただし、当該消防用設備等が、従前の規定に適合しており、工事の着手は基準時以降であって、増築部分の床面積の合計が、基準時における当該防火対象物の延べ面積の2分の1以上とならないものである。」

A回答

消防法が遡及される増改築した場合の条件は以下の通りです。

Q質問

既存の特定防火対象物以外の防火対象物を消防用設備等(消火器、避難器具その他政令で定めるものを除く。)の技術上の基準が改正された後に増築した場合、消防用設備等を改正後の基準に適合させなければならないものとして、消防法令上、正しいものは次のうちどれか。ただし、当該消防用設備等が、従前の規定に適合しているものとする。(乙6滋賀)

A回答

消防法が遡及される増改築した場合の条件は以下の通りです。

Q質問

防火対象物の用途が変更された場合の消防用設備等の技術上の基準の適用について、消防法令上、誤っているものは次のうちどれか。(甲4奈良)

A回答

消防法が遡及される用途変更の条件は以下の通りです。

Q質問

現に存する特定防火対象物以外の防火対象物における消防用設備等(消火器・避難器具その他政令で定めるものを除く。)に係る設備等技術基準が改正された後に、当該防火対象物の大規模の修繕または模様替えを行った場合、当該消防用設備等を改正後の基準に適合させなければならない大規模の修繕および模様替えとして、消防法令上、正しいものは次のうちどれか。ただし、当該消防用設備等は、従前の規定に適合しているものとする。(甲5奈良)

A回答

工事の着手が、法律が施行または適用された後で政令で定める増築・改築または主要構造部である壁について行う過半の修繕もしくは模様替えをした場合は、過去の建物であっても現行の基準が適用=遡及(そきゅう)します。

Q質問

防火対象物の用途が変更された場合の消防用設備等の技術上の基準の適用について、消防法令上、誤っているものは次のうちどれか。(甲1大阪)

A回答

消防法が遡及される用途変更の条件は以下の通りです。

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まとめ

  • 既に建っている防火対象物や法改正前に工事に着手していた建物には消防法の遡及適用はされないが、たくさん例外があった。
  • 消防法が遡及して適用されるかどうかを分ける条件に「①消防用設備等の種類」と「②増改築や修繕および模様替えの規模」および「③用途変更」の3つがあった。
  • 実際に消防設備士の試験に出題された過去問を用いて、おさらいした。