【過去問】消火薬剤の充てん|消防設備士乙6【消火器の点検・整備】

消火器の点検・整備については、総務省消防庁によって作成・公開されている「消火器具点検要領」を基準に実施します。

つまり「消火器具点検要領」の原文を読めばエェって話な。
乙6だけじゃなく、消防設備士の行動基準は消防法に定められてます。
とある消防設備士OBが「消火器具点検要領」を音読した動画も用意してくれたので、これを原文を見ながら再生すると覚えやすいかも。

 

ブログ著者の紹介

管理人は、消防法に基づく「消防設備士」および「危険物取扱者」の免状を、共に ❝全類❞ 取得しています。

消火器の点検・整備業務において、特に消火薬剤の充てんは昨今ほとんど実施されません(新品に交換します)が、試験には出るので肝心なところは覚えておきましょう。

蓄圧式粉末消火器の消火薬剤充てん方法

蓄圧式の消火器は「水系」と「粉末」に分かれています。

本体容器の構造はほぼ同じですが、その中で粉末のみ薬剤が粉状で点検整備や充てんにおいて水系の消火器とは少し違いがあります。

窒素ガスのエアブロー

粉末薬剤は湿気で固化する為、基本的に清掃は湿気を含まない窒素ガス(一応、除湿した圧縮空気も可)のエアーブローで行います。

水で洗った場合は乾燥炉などで十分に乾燥させる必要があります。

粉末消火器には窒素ガスを充てん

粉末薬剤は蓄圧ガスと混合された状態で放射するので、圧縮空気が充填されているとそれに含まれる酸素が燃焼を促進させてしまいます。

寝ようとしてる人に大きな声で『ゆっくり寝たら良いよ~!』と何度も声をかけるくらい逆効果。

よって蓄圧式粉末消火器に充てんするガスは「窒素ガス」に限定されていますが、水系の蓄圧ガスには圧縮空気でも可。

加圧式粉末消火器の消火薬剤充てん方法

その昔、粉末消火器といえば加圧式が多く設置されていました。

メンテナンスに大掛かりな器具(窒素ガスボンベ等)が不要の為、現地で手軽に作業ができていました。

容器破裂事故が多発し問題視されてからは、すっかり加圧式粉末消火器はレアキャラになってしまいました。

過去問題に「安全栓と加圧用ガス容器の取り付ける順番」が頻発しているので、しっかり覚えておいて下さい。

なお以下の「消火薬剤の充てん時に使用する器具」にて加圧式消火器の点検および薬剤交換作業の流れが記載されている為、併せて参照して下さい。

消火薬剤の充てん時に使用する器具

以下は、消防庁が交付する、消火器具点検要領の、別添1 第3加圧方式の区分による確認の順序(例)より、一部を抜粋したものに、使用器具を付け加えたものです。

[  ]内は使用器具やコメント。

例:加圧式の消火器(化学泡消火器以外)確認の順序

(1)  消火薬剤量を質量で表示してあるものは、総質量を秤量して消火薬剤量を確認する。

[秤量する器具:秤(※放射能力試験を行わない場合は(4)で薬剤量を確認する)]

(2)  排圧栓のあるものはこれを開き、容器内圧を完全に排出する。

[排圧栓を開く器具:ドライバー(マイナス)]

(3)  キャップを外し、加圧用ガス容器の支持具、加圧用ガス容器等を取り出す。

[本体容器固定器具:クランプ台。キャップを外す器具:キャップスパナ。加圧用ガス容器、支持具等を外す器具:プライヤー]

(4)  消火薬剤量を容量で表示してあるものは、液面表示と同一レベルであるかどうかを確認する。

[消火薬剤量、加圧用ガス容器を秤量する器具:秤(※化学泡消火器以外に液面表示は無い)]

(5)  消火薬剤を別の容器に移す。

[薬剤を移す容器:水系はポリバケツ等、粉末はポリ袋等]

(6)  清掃 [※清掃しながら各部の損傷や劣化具合等も確認する]

ア、水系の消火器にあっては、本体容器の内外、キャップ、ホース、ノズル、サイホン管等を水洗いする。

イ、粉末消火器にあっては、水分が禁物であるので乾燥した圧縮空気等により本体容器内、キャップ、ホース、ノズル、サイホン管等を清掃する。

[使用器具:エアードライヤー(除湿装置)付きのコンプレッサー、もしくは窒素ガス]

(7) 各部品についての確認を行う。

[使用器具:点検鏡(反射鏡)、照明器具等。使用臓器:目]

※放射の試料は(1)の確認のあと放射を行うこと。

[(7)の後は元に戻すが、消火薬剤の交換や、放射確認試験を行った場合は、新しい薬剤を充てん等をする]

化学泡消火器の消火薬剤充てん方法

化学泡消火器の消火薬剤は、以下の手順で充てんします。

(1) 外筒の液面表示の8割程度まで水を注入する。

(2) 注入した水を、別のポリバケツに移す。

(3) ポリバケツの水にA剤を少しずつ入れて棒などで攪拌して溶かす。

※外筒に直接A剤を投入しないこと。(容器内部の防錆塗装を傷つける恐れがあるため)

(4) 外筒に漏斗を挿し込み、ポリバケツ内で混ぜたA剤の水溶液を静かに注ぎ込む。

※この時、液面表示まで水を追加します。

(5) 内筒の液面表示の半分程度まで水を注入する。

(6) この水を別のポリバケツに移す。

(7) ポリバケツの水にB剤を少しずつ入れて、棒などで攪拌して溶かします。

※内筒にも直接B剤を投入しない。(小さく混ぜにくいため)

(8) 内筒に漏斗を挿し込み、ポリバケツ内のB剤水溶液を静かに注ぎ込む。

※この後、液面表示まで水を追加します。

(9) 内筒にフタをする(破がい転倒式は内筒封板を取付け、逆さにしても消火薬剤が漏れないことを確認する)。

(10) 内筒を外筒内に挿し込む。

(11) キャップパッキンの変形・損傷・劣化等を確認する。

(12) てこ棒でキャップを締める。

(13) 充てん年月日を点検表に記録する。(本体にも充てん済シールを貼っておくと分かりやすい)

化学泡消火器について学んでも、きっと役に立たないでしょう。
しかし到底プロになんかなれなかったのに小学3年生から大学4年まで15年間続けたゲロを吐いて失神する程キツいバスケの練習も、研究者になれなかったのに高専から大学院(修士)まで9年間勉強していた化学も、全てムダと言えるでしょうか?
否、否であります!
そう考えると化学泡消火器についても『専門家ですか?』と言われるほど詳しくなろうではありませんか。
成長の終わりの鐘を鳴らすのも、鳴らさぬのも、あなた自身です!

それでは以下の消火器の「消火薬剤の充てん」に関する消防設備士試験の過去問にチャレンジして、これまでの内容が頭に入っているかを確認しましょう!

消防設備士試験の過去問(点検・整備)

蓄圧式消火器の消火薬剤充てん

Q質問

蓄圧式消火器の充てんなどに関して、誤っているものは次のうちどれか。

A回答

(1)(2)気密試験の段階で漏れがあった場合、結局また分解して新しいパッキンを使用し‥みたいなことになる可能性が高い為、新しい物に変える。

(3)二酸化炭素ではなく、圧縮空気もしくは窒素ガス。

※蓄圧式粉末消火器の場合は窒素ガスのみで圧縮空気は使えません。

Q質問

蓄圧式消火器の漏れ検査(気密試験)を行う方法として、正しいものはどれか。

A回答

気密試験は再充てん作業の最終工程で行います。

その試験方法には「水槽に浸漬して気泡の発生を確認する方法」や、「指示圧力計で圧力が保持されていることを確認する方法」があります。

「浸漬(しんせき)」とは‥液体につけひたすこと。

Q質問

蓄圧式粉末消火器の消火薬剤の充てん方法について、誤っているものは次のうちどれか。

A回答

(2)粉末消火薬剤は湿気があると固化してしまう為、普通の圧縮空気は大気中の水分が含まれており容器内部に湿気が出来るので適しません。

清掃するなら「除湿した圧縮空気(窒素ガスでもよい)」でエアブローします。

粉末消火器の蓄圧充てんガスは窒素ガスに限られている為、作業時はどうせ窒素ガスボンベを用意しているのだから窒素ガスでブローするのが現実的。

(3)充てん圧はその時の気温に合わせないと、例えば冬の作業で使用圧力範囲の上限の圧力(0.98MPa)まで加圧すると、夏には気温上昇に伴い上限をはるかに上回っており、点検要領に従うと、内部および機能点検を行わなくてはならない。現在の気温に対して適切な充てん圧力が分かるように示した「温度、圧力線図」なるものがあるが、手元になければ他の『正常な蓄圧式粉末消火器』の指示圧力計を見て現在の気温に対する圧力値の参考にするのもありですね。

加圧式消火器の消火薬剤充てん

Q質問

小型粉末消火器の整備について,正しいものは次のうちどれか。

A回答

(1)× 清掃という目的であっても粉末消火剤は水分をきらうので水洗いは厳禁である。清掃には除湿した圧縮空気または窒素ガスを用います。

(2)× 試験放射は、開放バルブ式消火器の場合は薬剤が空になってしまいます。加えて開閉バルブ式消火器の場合、薬剤量が規定値に対し不足してしまうので行ってはなりません。

(3)× 粉末消火薬剤は適応する火災の種類が同じであっても、それぞれに化学的性質が異なるため決して混合してはなりません。

(4)○ 安全栓を装着する前に加圧用ガス容器を取り付けると、取りつける途中で誤ってカッターが作動して加圧用ガス容器の封板を破ってしまうおそれがある為、必ず先に安全栓を装着しなければなりません。

Q質問

ガス加圧式粉末消火器(開閉バルブ式)の薬剤の詰替え時の手順または注意事項として、正しいものは次のうちどれか。

A回答

開閉バルブ式の場合、放射後に容器内に圧が残っている場合があるのでキャップを開ける前には残圧の確認および処理が必要ですが(1)の方法だとバルブを開けると同時に加圧用ガスの封板を破ってしまうので不適当。

加圧式の排圧は、排圧栓や減圧孔にて行います。

(2)古い薬剤は全て廃棄して、内部をエアブローして容器内面に異常が無いかを確認した後に、新しい薬剤を充てんします。

薬剤の詰替えと言っているのに、不足分だけ充てんするのは、車のオイル交換をお願いしたのに「ちょっと減っていたので足しておきました~♪」って言われた気分に相当する。

(3)加圧ガス容器を取り付けるタイミングは安全栓をセットした後でなければ「うっかりレバー現象(握ってしまう)」が発生した場合、誤放出の可能性があるので注意。

Q質問

粉末消火薬剤の充てんに関し、誤っているものは次のうちどれか。

A回答

(3)粉末薬剤は容器に充てん直後は空気を含んでフワフワしているが、しばらくすると落ち着いて沈みます。

そうなると粉の密度が高くなりサイホン管が差し込めなくなってしまいます。

しかし、素早く薬剤を流し込むと含んだ空気量が多くて、あふれ出る場合もあるしまうので注意。

Q質問

手さげ式の加圧式粉末消火器の薬剤充てん方法について、順を追って述べた次の説明のうち、誤っているものはどれか。

A回答

(2)安全栓が先です。安全栓を最初にセットしておくと安心してレバーをつかむことができます。

実際に作業をやってみると分かりますが、どの作業もレバーを持ってしないと非常にやりづらいこともあるので、まず安全栓をセットしましょう。

化学泡消火器の消火薬剤充てん

Q質問

化学泡消火器の消火薬剤の充てん方法について、誤っているものは次のうちどれか。

A回答

(1)本体容器内で撹拌しながら溶かしてはなりません。

別途ポリバケツを用意し、そこで水溶液を作ります。

(2)先に水を入れてそれに粉剤を入れること。粉剤に水を入れるのはNG。

※撹拌時に使う水の量は内筒は液面表示の約半分ですが、外筒は液面表示の8割程度の量の水を使用します。

(4)化学泡消火器の薬剤詰め替えと、内部および機能の点検が設置後1年となっている為、記録しておきます。

Q質問

化学泡消火薬剤の充てん上の注意事項として、誤っているものは次のうちどれか。

A回答

(1)内部および機能の点検も1年に1回なので、薬剤詰め替え作業と同時に実施します。

(2)A剤は外筒に充てんされた薬剤で、水を追加しても成分が薄まってしまうので誤り。

(※著しく減量している場合、本体容器のどこかから漏れている可能性が高い。)

(3)撹拌棒で容器内面を傷つけてしまう為、別の容器に移して水溶液を作ります。

(4)他の廃棄処理方法は、A剤、B剤を別々に多量の水で希釈して下水に流してもよいです。

Q質問

化学泡消火器の消火薬剤を充てんする場合の注意事項として、誤っているものは次のうちどれか。

A回答

(4)消火薬剤を水に溶解する時はポリバケツ等にて行うこと。

その際「外筒用のA剤は液面表示の量の8割程度」および「内筒用のB剤は液面表示の半分程度」の水で撹拌し、容器に充てんしてから足りない分の水を入れます。

Q質問

化学泡消火器の消火薬剤の充てんに関する記述として、最も不適当なものは次のうちどれか。

A回答

(2)ポリバケツ等で8割の水で溶解させて下さい。

(4)化学泡消火器には、以下の3種類があります。

  1. 転倒式(ひっくり返すだけ)
  2. 破がい転倒式(フタを破ってひっくり返す)
  3. 開がい転倒式(蓋を開けてひっくり返す)

順に、放射までの操作が複雑になっています。

破がい転倒式・開がい転倒式は誤放射が少ないですが、たまたまその場に居ただけの一般人が消火活動するなら転倒式が簡単でしょう。

消火薬剤の充てん時に使用する器具

Q質問

ガス加圧式粉末消火器の内部および機能の確認または消火薬剤の充てんに際し使用する器具などで、不適当なものが含まれているものは次のうちどれか。

A回答

(4)の選択肢については、秤以外は蓄圧式の時に使う器具です。

・秤:消火薬剤や加圧用ガスの質量を測る。・クランプ台:消火器本体容器を固定する。

・ドライヤー:本体容器等の水分を乾かす。・キャップスパナ:キャップを開閉する。

・点検鏡(反射鏡):本体容器内面の様子を目視するために使用。

・プライヤー:加圧用ガス容器等を外したり、付けたりする。

・コンプレッサー=圧縮空気を生成する。

・エアードライヤー(除湿装置)=圧縮空気の湿気を除去する

・エアーガン:コンプレッサーに接続されたホースの先端に付け、エアーブロー清掃時のエアーの勢いを増す(開閉バルブ付き)。

・漏斗:本体容器内に消火薬剤を入れるときに入れやすくする。

迷わずに回答できましたか?
もし、まだ自信がないのであれば繰り返し「過去問テスト」等を使って類題を解くことをオススメします!

消防設備士「過去問テスト」とは

消防設備士「過去問テスト」は、その名の通り“過去に出た問題” のテストであり、ブログでお馴染みの管理人が過去問に関する情報収集を積み重ね、その中からピックアップして過去問ベースの模擬試験を作成したものです。

参考青木防災㈱【公式】🧯note

\そのまま試験に出ます/

消防設備士「過去問テスト」

※マークシート付き


上記以外に新傾向問題の情報など提供あり次第、随時追記して解説を更新していきます。

その他、質問など御座いましたらボちゃんねる(掲示板)へ投稿、もしくはLINEオープンチャット「消防設備士Web勉強会」上でご連絡下さいませ。

弊社HPお問い合わせフォームからの連絡はご遠慮下さいませ。