防火ダンパーとは?設置義務と点検基準を徹底解説!【温度ヒューズ】
防火ダンパーに関わる実務経験も豊富な管理人が、わかりやすく解説します!
このページを見れば、防火ダンパーの種類や設置基準および点検方法について一通り分かるようになります。
目次
防火ダンパーの種類
防火ダンパーは「火災により煙が発生した場合に自動的に閉鎖するもの」と「火災により温度が急激に上昇した場合に自動的に閉鎖するもの」の2つに大別できます。
- SFD(煙感知器連動防火ダンパー)
- PFD(消火ガス圧式防火ダンパー)
- FD(防火ダンパー)
- HFD(排煙用防火ダンパー)
その中でも代表的な4種類について説明していきます。
煙が発生した場合に自動的に閉鎖する防火ダンパー
火災により煙が発生した場合に自動的に閉鎖する代表的な防火ダンパーには「1⃣ SFD(煙感知器連動防火ダンパー)」と「2⃣ PFD(消火ガス圧式防火ダンパー)」が挙げられます。
1⃣ SFD(煙感知器連動防火ダンパー)
煙感知器との連動による電気信号で閉鎖する機能の付いたダンパー。
防火区画には、火災により煙が発生した場合に自動的に閉鎖する機能のある防煙ダンパーを設けることが建築基準法施行令 第112条〔防火区画〕にて以下の通り定められています。
ニ 常時閉鎖または作動をした状態にあるもの以外のものにあっては、火災により煙が発生した場合または火災により温度が急激に上昇した場合のいずれかの場合に、自動的に閉鎖または作動をするものであること。
消防法じゃないからオレら関係ないわ知らんぷりしよ~♪
消防士さんは指導対象外かもしれませんが消防設備士はゴリゴリのメケメケに建築設備定期検査とかで関わってくる為、一通りプロなら触れます。
2⃣ PFD(消火ガス圧式防火ダンパー)
ガス系消火設備の消火ガス放出圧力でピストンレリーザーが押し込まれることで閉鎖するダンパー。
ガス系消火設備は主に防護区画の酸素濃度を下げる窒息作用によって消火する為、消火ガスによる消火の際は給気を遮断するガス圧式ダンパーを設けます。
ガス系消火薬剤の消火作用は窒息作用だけでなく、消火薬剤によって以下の消火作用もあります。
- 二酸化炭素‥窒息作用、冷却作用
- ハロゲン化物‥窒息作用、抑制作用
消防法上では「自動閉鎖装置」を設けることのみ規定されており、その後の復旧については特に消防法施行規則第19条〔不活性ガス消火設備に関する基準〕では謳われていません。
(ロ) 床面からの高さが階高の2/3以下の位置にある開口部で、放射した消火剤の流失により消火効果を減ずるおそれのあるもの又は保安上の危険があるものには、消火剤放射前に閉鎖できる自動閉鎖装置を設けること。
復旧し忘れ注意ヨシ!
気を引き締めて、ご安全に!
温度が急激に上昇した場合に自動的に閉鎖する防火ダンパー
火災により温度が急激に上昇した場合に自動的に閉鎖する代表的な防火ダンパーには「1⃣ FD(防火ダンパー)」と「2⃣ HFD(排煙用防火ダンパー)」が挙げられます。
1⃣ FD(防火ダンパー)
ダクトに火災が流入した場合にストッパーであるヒューズの溶断でダンパーを閉鎖して延焼を防止する防火用ダンパー。
- 72℃
- 120℃(※火気使用室など排気風が高温になる場合)
ダクト消火設備の交換工事【フード等用簡易自動消火装置】、防火ダンパの構造とその役割_大阪市
防火ダンパー(FD)は建築物の「防火区画」か「延焼の恐れがある部分(隣接する建物の火災の延焼防止を目的として定められる部分)」を貫通するダクトに設けます。
風道が防火区画を貫通する場合は、防火ダンパーとすること。
2⃣ HFD(排煙用防火ダンパー)
排煙口から排煙ダクトに高温の火炎が流入した場合にストッパーであるヒューズ(280℃)の溶断で閉鎖し、延焼を防止する防火用ダンパー。
火災初期には排煙ダクトによって火災煙を排気し、排気が高温になったら排煙ダクトによる排気を遮断する為、通常の防火ダンパーのヒューズ(72℃ or 120℃)より溶断温度が高い。
排煙ダクトは火災時の煙を排気する設備である為、防火ダンパーが作動すると火災時にダクト内が閉鎖されて煙の排気が妨げられるので火災により風道内部の温度が著しく上昇したとき以外は、閉鎖しないことが消防法施行規則第30条第三項ホの(ハ)で次の通り規定されています。
(ハ)火災により風道内部の温度が著しく上昇したとき以外は、閉鎖しないこと。この場合において自動閉鎖装置を設けたダンパーの閉鎖する温度は280℃以上とすること。
よって、排煙口には通常の防火ダンパー(FD)は取り付けず、ヒューズ溶断温度の高い(≒作動しにくい)排煙用防火ダンパー(HFD)を設けるのです。
※マジで消防設備士特類の試験に出ます。
【補足】防火ダンパーの図面記号
ダンパー(Damper)のDに以下のアルファベットが接頭することでダンパー種類の図面記号となります。
図面記号 | 意味 |
F(ファイヤー) | 空気の流れを遮断し、延焼を防ぐもの。 |
H(排煙) | 排煙系統のダクトに使用するもの。 |
S(スモーク) | 煙感知器と連動して閉まり空気(煙)の流れを遮断するもの。 |
P(ピストン) | 消火ガスの放出圧力で閉鎖し、空気の流れを遮断するもの。 |
防火ダンパーの設置義務
防火ダンパーの設置義務が生じるケースは主に以下の3パターンです。
- 防火区画のうち異種用途区画と竪穴区画を貫通するダクトや、延焼の恐れがある部分を貫通するダクトに設けるパターン。
- 油脂を含む蒸気を発生させるおそれのある厨房設備に付属する排気ダクト等に設けるパターン。
- ガス系消火設備の防護区画にある開口部(階高の2/3以下の位置のみ)を消火剤放射前に閉鎖するために設けるパターン。
防火区画を貫通するダクト
防火区画のうち異種用途区画と竪穴区画を貫通するダクトや、延焼の恐れがある部分を貫通するダクトには防火ダンパーを設置します。
異種用途区画とは‥防火区画の一種で、建築物の一部分について他の用途と異なる部分が一定規模以上ある場合に設けられる防火上有効な区画のこと。
有毒な煙の通り道になるので区画してシャットしなければ!
厨房設備に付属する排気ダクト
油脂を含む蒸気を発生させるおそれのある厨房設備に付属する排気ダクト等には防火ダンパー(もしくは火炎伝走防止用消火装置)を設けます。(※温度ヒューズは120℃)
大阪市火災予防条例 第3条の4〔厨房設備〕(2)にて以下の設置基準が規定されています。
(2) 油脂を含む蒸気を発生させるおそれのある厨房設備に付属する排気ダクト等は、次によること
ア 次に掲げる排気ダクト等には火炎の伝走を防止できる自動消火装置、その他の排気ダクト等には火炎の伝走を防止できる防火ダンパーまたは自動消火装置(以下、火炎伝走防止装置という。)を設けること。
ただし、排気ダクトを用いず天がいから屋外へ直接排気を行う構造のもの又は排気ダクトの長さ若しくは当該厨房設備の入力及び使用状況から判断して火災予防上支障がないと認められるものにあっては、この限りでない。
本来は空気の通り道であるダクト内に炎が入ると危険である他、熱風が入り込むことでダクト付近の可燃物に着火してしまう可能性もあるので防火ダンパーを含むダクトの構造は火災予防において重要なのです。
この建物の場合は屋上にある排気ファンが動作し、排気ガラリ(換気口)よりダクト内の空気が外に出される仕様ですが、ここに高温の炎が通り続けると危険であることが分かります。
ガス系消火設備の防護区画にある開口部
ガス系消火設備は主に防護区画の酸素濃度を下げる窒息作用によって消火する為、消火ガスを外に漏らさないように消火ガス放射と連動して閉まる防火ダンパーを開口部に設けます。
防火ダンパーの取付位置
防火区画を貫通する防火ダンパーの場合、空調ダクト等が防火区画を貫通する部分または近接する部分に設けられます。
その他にはフードであればダクト接続部分、焼肉店のロースターであれば各席のダクトに一か所ずつ防火ダンパーを設けます。
例外的に二酸化炭素消火設備のダンパーについては二酸化炭素消火設備の作動に伴って開放し、二酸化炭素を排出するものである場合は二酸化炭素が空気より重い為、床面に設置されています。
二酸化炭素には毒性がある為、危険な高濃度の二酸化炭素を排出するための措置を講じることが消防法施行規則第19条にて定められています。
十八 不活性ガス消火設備を設置した場所には、その放出された消火剤及び燃焼ガスを安全な場所に排出するための措置を講じること。
このダクトが消火終了後の二酸化炭素消火設備の防護区画内の有毒なCO₂ガス消火薬剤を換気してくれますが、他のダンパと同様に炎の通り道になる可能性があるので防火ダンパーが備わっています。
温度ヒューズ式のFD(防火ダンパー)
温度ヒューズ式FDの温度ヒューズは、ダクト内を流れる空気の温度が高くなると溶融して防火ダンパーが機械的に閉鎖されます。
SFD-N206ヒューズ装置交換要領、ヒューズ案内㈱ダイリツ
温度ヒューズ式FD(防火ダンパー)の仕組み
温度ヒューズ式の防火ダンパーが閉鎖する仕組みについて分かりやすい説明が(有)東立空調さんのYouTubeで公開されておりましたので引用させて頂きます。
step1ダンパーの羽を閉じるハンドルは鉄心に引っかかっている
step2鉄心はダンパー内側で温度ヒューズに繋がっている
step3ダクト内に熱風が通ると温度ヒューズが溶けて鉄心が引っ込む
step4ハンドルが引っかかりを失って防火ダンパーの羽が閉じる
何度も言いますが、防火ダンパーを正常に作動させて火災の被害を最小限に留めるには、以下に述べていきます定期メンテナンスが欠かせません。
防火ダンパーの点検
防火ダンパーに関する点検は以下の3種類があります。
- 日本防排煙工業会が推奨する自主点検
- 消防用設備点検(※ガス系消火設備がある建物のみ)
- 建築設備定期検査
1⃣ 日本防排煙工業会が推奨する自主点検
現在、防火ダンパーのメーカー団体である日本防排煙工業会より「防火ダンパー自主管理制度」が設けられており、その「自主適合マーク」にも記載されている通り6ヶ月に1回以上の作動点検をすることが推奨されています。
step1ダンパーの手動による閉鎖が正常に作動することを確認する
step2自動閉鎖装置(開閉器)が正常にセットされていることを確認
step3自動閉鎖装置から温度ヒューズ装置のねじを緩めて抜き取る
step4温度ヒューズ装置の先端部(ヒューズ取付部)の汚れ具合を目視で確認する
step5次の事項に該当するときは温度ヒューズ装置又はヒューズを速やかに交換する
- ヒューズが黒ずんでいる
- ヒューズに油脂が固着している
- ヒューズに塵埃が付着している
- ヒューズが変形している
- 温度ヒューズ装置が腐食している
- 上記以外の異常が認められるとき
step6ダンパーを閉鎖作動させた後、復帰させた場合の異常の有無を点検し、関係部位が元の状態に戻ることを確認する
2⃣ 消防用設備点検(ガス系消火設備の開口部)
消防用設備点検時にも、ガス系消火設備の防護区画に設置されている開口部の防火ダンパーを点検します。
消防法 第17条の3の3に基づいて機器点検は6ヶ月に1回、総合点検は1年に1回の頻度で以下の防火ダンパーに関する点検項目を確認します。
🔍外形‥目視及び手動操作により確認する。
- ア 変形、損傷、著しい腐食等がないこと。
- イ 取付けが完全で、扉等の開閉が円滑かつ確実に行えること。
- ウ 扉等はストッパー、障害物等がなく、電気式またはガス圧式の自動閉鎖装置を除き常時閉鎖の状態にあること。
🔍電気で作動するもの‥手動式起動装置を操作して確認する。
- ア 変形、損傷、著しい腐食、端子の緩み等がないこと。
- イ 確実に作動し、遅延装置の作動時限の範囲内で閉鎖状態となった後、消火剤が放出されるようになっていること。
- ウ 出入口に設けてあるシャッタ等で、他に退避できる別の出入口等がないものにあっては、放出用スイッチ操作後、設定値(ハロン2402又はハロン1211を消火剤とするものにあっては20秒以上とする。)の範囲内で閉鎖完了する遅延装置等が設けられ、かつ、シャッタ閉鎖後に消火剤が放出される構造となっていること。
※ 手動式起動装置を操作するときは、必ず容器弁開放装置を取り外して行うこと。
🔍ガス圧で作動するもの‥試験用ガスを用い、自動閉鎖装置に通ずる操作管に接続して確認する。なお、試験用ガスに窒素ガスまたは空気を用いるときは噴射ヘッドの規定圧力以上に加圧すること。
- ア 変形、損傷、著しい腐食等がないこと。
- イ 確実に作動すること。
- ウ 操作管及び自動閉鎖装置等からガス漏れがないこと。
- エ 自動閉鎖装置の復帰が、加圧時の圧力を抜くことにより自動的に行われるものにあっては、復帰が確実に行われること。
🔍開口部等の自動閉鎖装置が正常に作動し、換気装置が確実に停止すること。(全域放出方式)
ただし、ガス圧式の自動閉鎖装置の場合にあっては、機器点検の点検要領により個々に確認してもよい。(※不活性ガス消火設備のみ)
- (ア) 放射区画は完全に換気するまでは中に入らないこと。
- (イ) 点検終了後は、すべて確実に復元しておくこと。
3⃣ 建築設備定期検査
防火ダンパーの点検は、建築基準法第12条に基づく定期報告制度上(12条点検)でも1年に1回の頻度で実施義務があります。
点検種別 | 検査項目 |
建築設備定期検査 |
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防火設備定期検査 |
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昇降機定期検査 |
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特定建築物定期調査 |
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防火管理者も防火ダンパーを確認する
防火管理者は消防計画に基づいて防火管理業務を実施しますが、その確認項目の中にも防火ダンパーに係るものが含まれています。
- 防火対象物についての火災予防上の自主検査の状況
- 消防用設備等の点検および整備の状況
- 防火上の構造の維持管理の状況
防火ダンパーの確認なんて素人なんやからウチ何にも分からへんて!
防火管理者さんは “確認” をして “記録” するのが仕事ですから、もちろん点検や改修工事などの実作業はプロに任せるのが普通です。
防火管理者ってホンマに「管理職」みたいな役割なんやな。
それでは、防火管理者が防火ダンパーについて確認および記録する項目について具体例を挙げていきます。
1⃣ 防火対象物についての火災予防上の自主検査の状況
消防計画で定めた箇所について火災予防上の自主検査の状況を消防計画で定めた頻度で実施します。
2⃣ 消防用設備等の点検および整備の状況
半年に一回実施する機器点検および総合点検の実施日と、その際に見つかった不備箇所の改修(整備)について記録します。
3⃣ 防火上の構造の維持管理の状況
火災発生時の煙(有毒ガス)の充満を防ぐための区画や、延焼を防ぐための構造が維持できているかを確認します。
ただでさえ日常業務で多忙なところを防火管理者も兼任して防火管理業務をするわけですから。
ほな現場からは以上です、また!
まとめ
- 防火ダンパーは「火災発生時に炎がダクト内を通って燃え広がらない様、道を塞ぐため」にあり、防火区画の貫通部分や厨房設備に付属する排気ダクト等およびガス系消火設備の防護区画にある開口部に設けられていた。
- 防火ダンパーは「火災により煙が発生した場合に自動的に閉鎖するもの」と「火災により温度が急激に上昇した場合に自動的に閉鎖するもの」の2つに大別でき、「SFD(煙感知器連動防火ダンパー)」と「PFD(消火ガス圧式防火ダンパー)」および「FD(防火ダンパー)」と「HFD(排煙用防火ダンパー)」の代表的な4つについて解説した。
- 防火ダンパーに関する確認は防火管理者の防火管理業務とも係わっている為、特に防火管理者という管理職および防火管理者と関わりのある方々は当ページを確認すべきであった。