【記入例】消防計画に基づいて実施される事項【防火管理維持台帳】

防火管理維持台帳の「消防計画に基づいて実施される事項」って、どんな書類に何を記録すりゃエェの⁉
そこ気になりますよね!
もっと防火管理者講習で詳しく解説してくれればいいのに‥その代わりに私が紹介します!

防火管理維持台帳とは

防火管理維持台帳とは建物の消防関係書類一式をまとめて保管しておくための台帳で、定期点検の結果等をまとめて記録しておくことが消防法施行規則 第31条の6などで規定されています。

防火管理維持台帳には以下の関係書類を編冊します。

  1. 防火管理関係
  2. 防火対象物定期点検関係
  3. 消防用設備等点検関係
  4. 消防計画に基づいて実施される事項
  5. 防火管理上必要な書類

それぞれ細かく中身が規定されていますが、その中で今回は「消防計画に基づいて実施される事項の書類について記入例を含めた解説をしていきます。

防火対象物点検の特例認定申請時に防火管理維持台帳の提出がありますので、その直前になって焦らずに済むよう常日頃からコツコツお抱えの消防設備業者とタッグで作成しておきましょう!

「消防計画に基づいて実施される事項」で記録する状況9つ

防火管理者が選任された際に策定した消防計画に基づいて、防火管理者が記録しなければならない「消防計画に基づいて実施される事項」には以下の9つがあります。

消防計画に基づいて実施される事項9つ

防火管理者は以下の9つについて防火管理維持台帳に記録しなければなりません。

  1. 防火対象物についての火災予防上の自主検査の状況
  2. 消防用設備等の点検および整備の状況
  3. 避難施設の維持管理の状況
  4. 防火上の構造の維持管理の状況
  5. 定員の順守その他収容人員の適正化の状況
  6. 防火上必要な教育の状況
  7. 消火・通報および避難訓練の状況
  8. 増築・改築・移転・修繕または模様替えの工事中の防火対象物における防火管理者またはその補助者の立会いその他火気の使用または取扱いの監督の状況
  9. 大規模な地震に係る防災訓練並びに教育および広報の状況(※強化地域に所存する防火対象物に限る。)

上記のうち9⃣については強化地域の建物か否かで記録の必要性が異なりますが、ここ大阪市は南海トラフ地震防災対策推進地域である為、含めて解説します。

つまり「消防計画に基づいて実施される事項」とは、防火管理者が実施した防火管理業務について防火管理維持台帳に記録するための仕組みといえます。

防火管理維持台帳に記録する「消防計画に基づいて実施される事項」について知ることで、より防火管理者に任せられた防火管理業務について分かりやすくなって理解が深まるでしょう。

最大9つは、さすがに多いて‥。
それぞれ簡単な目視点検を記録するだけなんで、数にビビらなくていいですよ!

特に防火管理者および防火対象物点検資格者にとっては要確認、要復習の話です。

1⃣ 防火対象物についての火災予防上の自主検査の状況

消防計画で定めた箇所について火災予防上の自主検査の状況を消防計画で定めた頻度で実施します。

参考消防計画に基づいて実施される事項の編冊図書

防火管理者が全て確認するのは大変やから例えばキッチンに火元責任者を選任して、その火元責任者に火災予防上の自主検査の状況を報告してもらって、それを防火管理者が記録するってのもアリ。
お見込みの通り‥。
建物が広いと、防火管理者が全部回るより、その場所をいつも使っている人を火元責任者にして、防火管理業務をしてもらう方が現実的ですからね。

「火元責任者」とは

消防法施行令第4条第2項に以下のような条文があります。

 「防火管理者の責務として、防火管理者は消防のように供する設備、消防用水もしくは消火活動上必要な施設の点検及び整備または下記の使用もしくは取り扱いに関する監督を行うときは、“火元責任者”  その他の防火管理の業務に従事する者に対し、必要な支持を与えなければならない。」

つまり、防火管理者の指示に従い、防火管理者の補助をするものとして置かれているのが“火元責任者” です。

参考“火元責任者” について

2⃣ 消防用設備等の点検および整備の状況

半年に一回実施する機器点検および総合点検の実施日と、その際に見つかった不備箇所の改修(整備)について記録します。

参考消防計画に基づいて実施される事項の編冊図書

消防用設備点検は我々の様なプロ(専門業者)に依頼するでしょうから、お抱えの防災屋(消防設備士の集団)とタッグを組んで記録しましょう!
ちなみに弊社へ消防用設備点検を依頼して下さいましたら‥防火管理者さん専用のマイページ(BOSAIメンバー限定)を作って、そこに防火管理維持台帳を電子データ化して置いておくので便利ですよ。

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3⃣ 避難施設の維持管理の状況

避難経路に物品が残置されていないかを実際に現地を巡回して目視にて確認します。

参考消防計画に基づいて実施される事項の編冊図書

防火管理者の外部委託をサービスとして受け付けられている業者さんは、だいたい3か月に1回の頻度で現地を巡回されているそうです。
ただ選任されているだけで何もしていない名ばかり防火管理者より、よっぽど外部委託されている方が巡回とか「実務」がルールに則ってされているので今のところマシって状況。

「防火管理者の外部委託」とは

第8条に『署長は、防火管理者の共同選任及び共同住宅の防火管理業務の一部委託などを行っている防火対象物のうち、防火管理上必要な業務が適切に遂行されていないと認められるものにあっては、当該管理権限者に対して、外部委託による防火管理者の選任を指導するものとする』とあります。

『防火管理者の業務の委託の委任契約書』という書類を消防署に提出しますが、ここに興味深い文章として『甲は管理権限者として最終的な防火管理責任を負うものであり、防火管理の業務の委託を行っても、その責任を免れるものではないまた、受託者乙は付与された権限の範囲内において、防火管理責任を負うものである。』とあります。

防火管理者の外部委託によって委託できるのは “実務” であり、“責任” までは外部委託できない点は要チェックです。

参考防火管理者の実務は外部委託が可能!

4⃣ 防火上の構造の維持管理の状況

火災発生時の煙(有毒ガス)の充満を防ぐための区画や、延焼を防ぐための構造が維持できているかを確認します。

参考消防計画に基づいて実施される事項の編冊図書

建物によって構造はもちろん区画形成の位置も異なるので、あらかじめ消防計画で規定した箇所について確認するようにしましょう。

正直この項目、防火管理者に任せるのって少々じゃない⁉
とりあえず竪穴区画の防火扉や防火戸、大きめの建物やったら廊下の防火シャッターあたり目視で巡回点検しておけば間違いないかと。

竪穴(たてあな)区画とは

建物を縦に貫通する階段やエレベーター等の区画。

火災発生時、有毒ガスを含んだ煙が竪穴区画を通って上階に充満する為、吹き抜け部分を区画して仕切ることで建物全体へ被害が及ぶことを防ぐもの。

防火扉には「常時閉鎖」のものと「常時開放、非常時閉鎖(煙感知器連動)」があり、いずれも閉鎖を妨げるものがあると建物内で火災が発生した場合に煙の充満や延焼など被害が大きくなる恐れがある為、定期的な確認が必要です。

防火戸を維持管理するための表示

防火戸であることを知らなかったがゆえに寄りかかったり、付近に障害物が置かれたりする恐れがある為、防火戸である旨がパッと見で分かる表示をしておくことは有効でしょう。

参考㈱石井マーク(@ishiimark_sign)

その他、防火区画を貫通する防火ダンパーの確認などは「防火ダンパーとは?設置義務と点検基準を徹底解説!【温度ヒューズ】」を参照の上、実際の点検および改修工事は専門家にお任せ下さい。

5⃣ 定員の順守その他収容人員の適正化の状況

収容人員の管理も防火管理者が任された防火管理業務である為、防火管理維持台帳に特筆すべき内容は記録しておきます。

参考消防計画に基づいて実施される事項の編冊図書

あらかじめ消防計画や建物の使用開始届出書に記載した収容人員を超えそうな場合、防火管理者が調整することも防火管理業務の一つです。

収容人数の「定員」について、表示を掲げておくことも防火管理上有効でしょう。

もしコンスタントに収容人員が、当初の消防計画や消防署に提出した使用開始届などから増員される場合は‥どうしたらエエの⁉
そうなると‥収容人員の数が設置基準の目安となる避難器具や非常放送設備などの消防用設備の設置義務が生じる可能性もある為、要注意!。

収容人員の管理は適切に実施しておきましょう。

6⃣ 防火上必要な教育の状況

建物の利用者に対して、後述する訓練とは別で実施した教育について記録します。

参考消防計画に基づいて実施される事項の編冊図書

例えば弊社やと義平社員を含むメンテナンス部が先日、工場でものづくりされているクライアントに対して「漏電火災」の教育を実験しながらやっていたよね。
建物によって「防火上必要な教育」って内容異なるから、ここも我々の様な防火管理のプロと建物に選任された防火管理者がタッグを組んで実施していくべき。

漏電火災についての教育

弊社ではクライアントのニーズに合わせて防火上必要な教育も実施しており、以前は漏電火災について大阪市平野区にて耐震製品を扱う㈱システックキョーワ様にて教育および訓練を承りました。

参考株式会社システックキョーワ 様

もし防火管理者だけでは防火上必要な教育が施せない場合、防火管理のプロに依頼することも選択肢の一つでしょう。

7⃣ 消火・通報および避難訓練の状況

特定防火対象物であれば年に2回以上、非特定防火対象物であれば消防計画に定めた頻度で消火・通報および避難訓練(まとめて消防訓練)の実施義務がある為、防火管理維持台帳に実施内容を記録しておきましょう。

種 別 内 容 訓練の回数
特定防火対象物 非特定防火対象物
消火訓練  消火器や屋内消火栓を使用した初期消火の訓練 年2回以上 消防計画に定めた回数
避難訓練 建物内に発災を知らせ、避難・誘導及び避難器具の訓練
通報訓練 発災の確認後、建物内に周知して消防機関に通報する訓練 消防計画に定めた回数

参考消防・避難訓練の実施義務を果たしていますか?

8⃣ 増築・改築・移転・修繕または模様替えの工事中の防火対象物における防火管理者またはその補助者の立会いその他火気の使用または取扱いの監督の状況

工事中の防火管理状況について、防火管理者が防火管理維持台帳に記録するものです。

参考消防計画に基づいて実施される事項の編冊図書

例えば近年、健康増進法に基づく分煙化の影響で喫煙所の工事が盛んに行われていたよね。
特に工事中って火災リスク高まるので、一層防火管理に力入れるべきってのは脳ミソに刷り込んでおくべき話。

工事後の構造が消防法や建築基準法違反にならない様、設計段階で確認しておくことも重要です!

9⃣ 大規模な地震に係る防災訓練並びに教育および広報の状況

大地震が発生した場合の避難行動や避難場所について、あらかじめ備えておくことが(※強化地域にある建物については)防災訓練・教育および広報をすることを消防計画で規定している為、防火管理維持台帳に記録しておきます。

参考消防計画に基づいて実施される事項の編冊図書

いや広報て‥こんなん青木防災㈱に任せろて言うてるようなモンやん。
これら「消防計画に基づいて実施される事項」って9つありましたが…どれも防火管理者さんだけで適切に遂行できるかといえば‥現実かなり難しいと思いますよ。

上述した9つの「消防計画に基づいて実施される事項」ですが、実は防火対象物点検の点検要領等消防安第125号 消防法施行規則第4条の2の6第1項で定める点検基準に係る点検要領等について(別添2)点検要領)にて全く同じ項目を防火対象物点検資格者も確認することが規定されています。

そりゃ防火対象物点検って、もともと『防火管理者と防火対象物点検資格者(プロ)が二人三脚で建物の防火管理しっかりやっていこうぜ!』って制度やから…二重チェックみたいなルールは妥当。
だから、その二重チェックのルールを有効活用できるようにするためにも防火管理維持台帳に「消防計画に基づいて実施される事項」を記録しておくことが大事って話になってきますよ。

ちなみに青木防災㈱のBOSAIメンバーであれば、上記の防火管理維持台帳に記録する「消防計画に基づいて実施される事項」を全てWeb上の専用マイページにて電子データで管理できる為、防火管理業務がラクになりますよ!

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現場からは以上です!

まとめ

  • 防火管理維持台帳とは建物の消防関係書類一式をまとめて保管しておくための台帳で、定期点検の結果等をまとめて記録しておくことが消防法施行規則 第31条の6などで規定されていた。
  • 「消防計画に基づいて実施される事項」とは、防火管理者が実施した防火管理業務について防火管理維持台帳に記録するための仕組みといえた。
  • 防火管理者の外部委託によって委託できるのは “実務” であり、“責任” までは外部委託できない点は要チェックであった。