消防関係書類の電子申請(オンライン化)が進まない理由を聞いた結果

現役消防士兼YouTuberのかずぺん様より、弊社の前ブログ ❝防火管理者が電子申請をする近未来❞ についてTwitterで以下の通り言及頂いておりました。

わ~ぉ!!
現役消防士さん直々にブログの内容について触れて頂けるとは大変光栄です!!
かずぺん様が仰られている ❝なぜこれ(オンライン化)が進まないのか、こちら側(※消防署側)の意見を記事に載せて‥❞ の部分を早速、実現させて頂きます。それでは、かずぺん様よろしくお願いします。
余命多分15年、現役の消防士(救命士)のかずぺんと申します。
顔を出してるのは自分の意見をこそこそ言うような人間にはなりたくないから。
消防士の働く環境をよくしましょう。

それでは実際にかずぺん様に「なぜ消防関係書類の電子申請(オンライン化)が進まないのか?」を伺い、頂いた回答を紹介させて頂きます。

消防関係書類の電子申請(オンライン化)が進まない理由

結論「紙の台帳に頼っているうちはオンライン化は進まないのではないか」というのが、かずぺん様の考えです。

「紙の台帳」って?

消防署は、管轄エリア内にある防火対象物(消防用設備等の設置・点検義務のある建物)の情報を、それぞれの防火対象物ごとに1つの冊子(=紙の台帳)にまとめて保存しています。

オンライン化が進まない原因としては、ソフト面およびハード面どちらにも問題があります。
詳しく、お聞かせ頂きたいです!

オンライン化の方法3つ

まず、オンライン化には主に以下の3つの方法があることを抑えておきましょう。

オンライン化の方法3つ

  1. 総務省消防庁がすすめるオンライン化(※ぴったりサービス絡み)のもの
  2. LoGoフォームを利用したもの
  3. 単純にメールにデータを添付したもの

非常に長くなるので‥休み休み読んで下さいね。

①ぴったりサービス(総務省消防庁)のオンライン化

まずオンライン化する一つ目の方法として、IFCAA2022横浜のシンポジウムでも大々的に紹介されていた「ぴったりサービス」によるものが挙げられます。

オンライン化の方法3つ

  1. 総務省消防庁がすすめるオンライン化(※ぴったりサービス絡み)のもの
  2. LoGoフォームを利用したもの
  3. 単純にメールにデータを添付したもの

「ぴったりサービス」とは

ぴったりサービスとは‥総務省が提供する、自治体ごとの申請や届出などの行政手続きをオンラインで検索・書類作成および電子申請することができるシステムのこと。

参考ぴったりサービスについて

この「ぴったりサービス」は消防独自では進めてはいけず、あくまで市役所の情報部局の管轄の下で行わなければなりません。
各消防署は市町村毎に権限が分けられているので、その市町村の動きが遅かったら引っ張られそうですね。
サービスを利用できるように設定していくのも簡単ではないです。

②LoGoフォームを利用したもの

次にオンライン化する二つ目の方法として「LoGoフォーム」を利用したものが挙げられます。

オンライン化の方法3つ

  1. 総務省消防庁がすすめるオンライン化(※ぴったりサービス絡み)のもの
  2. LoGoフォームを利用したもの
  3. 単純にメールにデータを添付したもの

「LoGoフォーム」とは

LoGoフォームとは‥株式会社トラストバンク社が「LGWAN-ASPサービス」として提供している自治体職員が電子申請や申込予約・アンケートなどのフォームを作成・集計し、一元管理できる自治体専用の「デジタル化総合プラットフォーム」です。

参考自治体専用デジタル化総合プラットフォーム「LoGoフォーム」

ちょ‥ちょストップストップ!!
一気に置き去りにされたよ!
LoGoフォームって言葉の意味が分からず調べたら‥その説明の中に「LGWAN-ASPサービス」って意味分からん言葉が含まれてますな。

【補足①】LGWANとは

まずLGWANとは、「Local Government Wide Area Network」を略した言葉で、地方公共団体を相互に接続する行政専用ネットワークのことです。
※読み方は「エルジーワン」です。

参考LGWANとは? さくマガ

官公庁のパソコン同士はLGWAN系というシステムで繋がっており、外の世界(インターネット系)とは別世界で動かしています。

【補足②】LGWAN-ASPとは

「LGWAN-ASP(読み方:エルジーワン エーエスピー)」とは、LGWANを介して各種行政事務サービスを提供するものです。

参考LGWANとは? さくマガ

なるほど‥このLGWAN-ASPサービスがあれば官公庁のネットワークであるLGWAN系に入れるワケですか。
例えば消防署のネットワークにウイルス侵入して119番通報できなくなったら超困るので、こんな感じでセキュリティが厳しくなってるんですね。
前述したLoGoフォームも「LGWAN-ASPサービス」の一つで、LGWAN系とインターネット系の両者を繋ぐトンネルの様な存在です。

㊙LoGoフォームの課題2つ

この官公庁のネットワークであるLGWAN系に入れるLGWAN-ASPサービス「LoGoフォーム」について、かずぺん様は以下の課題2つを挙げられていました。

LoGoフォームの課題

  1. インターネット系に出ていくには暗証番号を入れないといけない
  2. 一定時間(※自治体よって異なるかも)が経過したら自動で切断される

セキュリティのためには仕方ないけど、使いにくいシステムです。

③メールにデータを添付したもの

オンライン化する三つ目の方法として「メールにデータを添付」する単純なものが挙げられます。

オンライン化の方法3つ

  1. 総務省消防庁がすすめるオンライン化(※ぴったりサービス絡み)のもの
  2. LoGoフォームを利用したもの
  3. 単純にメールにデータを添付したもの

メールによるデータ修正なんかは、消防署によっては何年も前(新型コロナ禍より以前)から受け付けられているところありましたよね。
『いや、ほんならメールでエェやん。』って話も、この電子申請に関する云々を議論する際には頻出です。
比較的「②LoGoフォームを利用したもの」と「③メールにデータを添付したもの」は簡単にできるのですが…弊害もあるんです。

オンライン化の弊害

オンライン化の方法として挙げられた「②LoGoフォームを利用したもの」と「③メールにデータを添付したもの」について、かずぺん様より以下の弊害2つが挙げられました。

オンライン化の弊害2つ

  1. 消防の受付印を押したものを対象物の関係者に返せない
  2. 消防で書類を印刷する手間や費用が発生する

また、前述した「①ぴったりサービス」はインターネット系での作業になる為、官公庁のネットワークであるLGWAN系での作業と比べると作業効率も落ちてしまうとのこと。

参考マイナポータル(ぴったりサービス)の取組について

PCのスペック作業するネット環境が整っていないところもオンライン化の障壁になってます。
これらの弊害があると‥オンライン化って、あまり進められなさそうですね。

続いて、オンライン化を進める上での課題について触れていきます。

オンライン化を進める上での課題3つ

オンライン化を進める上で、かずぺん様より以下の課題3つが挙げられました。

オンライン化の課題3つ

  1. オンライン化の担当者不足
  2. 独自システムが構築されている消防本部が多い
  3. 紙の台帳をシステム化する予算が取られていない

課題1⃣ オンライン化の担当者不足

かずぺん様が所属する○○市では、かずぺん様たった一人のみがオンライン化の担当者となっているそうです。

他の業務と並行しては、とてもじゃないけどオンライン化なんて着手できない状態です。
ちなみに他の消防本部って、どんな状況でオンライン化に取り組まれているんですかね?
他市の予防課の人からも問い合わせがあった際、同じような話をされていましたので‥やりたくても(オンライン化の担当者不足)で着手できない市消防本部が多いのではないかと推測しています。

課題2⃣ 独自システムが構築されている消防本部が多い

対象物のデータを管理するパソコンとは別の系統でシステム(独自システム)を構築されている消防本部が多いことも課題です。
オンライン化の方法として挙げられた「①ぴったりサービス」と「②LoGoフォームを利用」および「③メールにデータを添付」どれが独自システムと連携するに際して、一番マシですか?
結局①②③どれで来られても独自システムに入力する等の手間は生じてしまいます。

課題3⃣ 紙の台帳をシステム化する予算が取られていない

今般の消防関係書類の届出オンライン化は、紙の台帳をシステムに全て入力することが前提となります。

予算とって、アウトソーシングで紙の台帳の内容全てをシステムに入力して効率化していきましょうと提案しましたが…
もちろんオンライン化の担当者はかずぺん様たった一人なので、そこは考慮されて予算取れたんですよね?
‥余裕で却下されました。
えぇ~っ!!
そんなん現場のオンライン化の担当者になった方めっちゃハズレってか、膨大な量の業務負担を抱えさせられることになりますやん!
ちなみに国もオンライン化を進めていますが、今のところそれにかかる費用を自治体に出す素振りはありません。
一体どないせぇっちゅうねん‥。

よって消防関係書類のオンライン化は、現場に膨大な量の負担がかかる前提無理やり運用されようとしている実態があるのです。

紙の台帳を電子データ化するために要するリソースが確保されていないことが、消防関係書類の電子申請(オンライン化)が進まない理由となっています。

オンライン化の今後

かずぺん様が最初に紹介したツイートに続き、以下の内容も投稿されておりました。

オンライン化の担当者であった、かずぺん様は「電子媒体での提出以外認めない(≒効率よく防火管理ができる)世の中にしたい」意向をお持ちの熱い消防士さんです。

しかし、かずぺん様がムリと判断して『今後は、やりません』と上席の方に伝えて滞っている現状です。

意志ある者が損をする格好になっており、このままでは消防本部によってオンライン化の格差が生じてしまいそうです。

かずぺん様に便乗して私からも『総務省消防庁の方、対応をお願いします。』ということで締めさせて頂きます!
かずぺん様、お忙しい中ご対応頂きまして有難う御座いました!
今後とも、情報共有できたら嬉しいです。

【P.S】予防の時代

かずぺん様のタイムラインを拝見させて頂きましたところ、以下のツイートを見つけました。

今って予防課の所属じゃない消防士も、今後のキャリア考えて「予防技術検定」受ける人が増えてるらしいね。
予防技術検定を受けられる消防士さん、ぜひ現役消防士と消防設備士が共同管理人をしているLINEオープンチャット「予防技術検定Web勉強会」にご参加下さいませ。

>> 予防技術検定Web勉強会

※LINEオープンチャットはLINE株式会社による無料サービスです。
※いつでも参加・退出できますので、お気軽に。
※共同管理人をしている現役消防士は、かずぺん様ではありません。

【✍追記】大阪市消防局の規制課で電子申請(オンライン化)について伺った結果

別ブログにて、大阪市消防局予防部規制課の担当者(※匿名)様にも電子申請(オンライン化)について話を伺っています。

併せて、ご確認下さいませ。

まとめ

  • 現役消防士兼YouTuberのかずぺん様に「なぜ消防関係書類の電子申請(オンライン化)が進まないのか?」を伺い、頂いた回答を紹介した。
  • 「紙の台帳に頼っているうちはオンライン化は進まないのではないか」というのが、かずぺん様の考えであった。
  • 紙の台帳を電子データ化するために要するリソースが確保されていないことが、消防関係書類の電子申請(オンライン化)が進まない理由となっていた。

予防技術検定Web勉強会

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