受信機の設置基準と配線工事
目次
受信機の種類
まず、自動火災報知設備の受信機はP型とR型の大きく二種類に分けられます。
P型が感知器・発信機の接点が閉じることにより電流が流れる原理を利用しているのに対して、R型は固有のアドレスが設定された感知器・発信機と通信することで火災を検知しています。
ここにガス漏れ検知の機能が合わさったものもあり、それぞれGP型、GR型といいます。
R型の受信機は現在、大型の建物にしか設置されていませんので、ここでは主流であるP型の受信機について解説させて頂きます。
P型受信機の種類は、どれだけのエリアを監視するかという回線数によって以下のように分類されています。
- P型2級⇒5回線以下
- P型1級⇒6回線以上
P型1級では、受信機―発信機間での通話が可能になります。
最近の受信機はマイクが付いており、受話器が無くても話せる使用になっていることが多いです。
また、1回線のみのP型3級という受信機もあるのですが、こちらは共同住宅のインターホンと一体になっているものが殆どであり、単体の受信機として用いるケースは稀です。
その理由として、延べ面積に300㎡以下の建物に自動火災報知設備を設置する場合は、特定小規模施設用自動火災報知設備というワイヤレスの感知器のみのものが使用でき、受信機が不要となることが挙げられます。
受信機の役割
続いて、受信機の役割についてですが、大きく以下の3つが挙げられます。
- 「火災発報する場所(警戒区域)の表示」
- 「音響などの各種機能停止・復旧操作」
- 「感知器・総合盤内機器への電源供給」
それぞれ、順番に説明していきます。
火災発報する場所(警戒区域)の表示
感知器や発信機などの火災を知らせる機器は建物中に設置されていますが、どのエリアで火災を感知したか、発信機が押されたかという情報は受信機上で例えば「1階」「2階」のように分けられている「地区窓」で確認することができます。
建物の警戒区域がどのように分かれているかを分かりやすくするため、受信機の付近に「警戒区域図」を掲げることと消防法令上で定められています。
警戒区域の分け方については、消防法上で幾つか基準が設けられています。以下にその原則を示します。
- 警戒面積は600㎡以下とし、その一辺の長さは50m以下とすること。
- 防火対象物の2つ以上の階にわたらないものとすること。
以下に例を挙げて説明してみます。
一辺が50mを超えている場合、同じフロアで警戒面積が600㎡を超えていなくても、警戒区域を二つに分ける必要があります。
この場合、受信機の地区窓には例えば「①1階西」「②1階東」と表示します。
火災報知のベルが館内に鳴り響いた際は、まず受信機上の地区窓で、どこの警戒区域で火災信号が発報しているのかを確認した後、現場を確認します。もし火災であった場合にすぐ初期消火ができるように消火器を持っていく事を避難訓練の際には指導しています。
音響などの各種機能停止・復旧操作
消防設備士でなくても操作をする可能性がある部分として「主音響停止スイッチ」と「地区音響一時停止」スイッチが挙げられます。
どちらも、まず地区窓で発報箇所を参照後、現場を確認して非火災報だと断定された時点で操作することになります。
音響停止スイッチの形状も昔の物であればレバー操作であったり、ボタン操作でも受信機のメーカーによって異なります。
いずれも受信機本体から警報音が鳴る「主音響」と、建物内各所に設置された音響ベルやスピーカーの音を指す「地区音響」を操作するスイッチがあります。
「主音響」の停止操作をした場合は、そのまま停止し続けられますが、現行の受信機において地区音響は「一時停止」させるのみで、感知器や発信機が作動して火災信号を出している状態では、地区音響を停止しても一定時間後に再び鳴動するようになっています。
これを「再鳴動機能」といい、有事の際に地区音響が停止されていて火災を報知できなかったという状況を防ぐために備えられています。
また、この他にも主に消防設備士が消防用設備点検時などに操作する他の設備との連動を停止するスイッチや感知器試験時に自動で復旧させる為のスイッチ等が受信機上に設けられています。
また、3階以上の階に特定用途があり、そこから避難階までに屋内階段が一つしかない建物を「特定一階段等防火対象物」といい、より危険性の高い建物として追加の規制が設けられています。
最近、築年数の経っている共同住宅を民泊に用途変更するケースが後を絶たないのですが、その建物に屋内階段が一つしかない場合、民泊用途に変更する事で特定一階段等防火対象物に該当してきます。そこで問題になってくるのが、特定一階段等防火対象物に設ける受信機は「再鳴動機能付き」でなければならないという事です。
現行の受信機は全て再鳴動機能付きですが、古い型式の受信機だと再鳴動機能が無いものも存在し、用途変更に伴って受信機の交換も必要となり、民泊を営業されるお客様の費用面での負担が大きくなり嫌がられるという事が起こります。
感知器・総合盤内機器への電源供給
受信機には専用回路でAC100Vの電源が接続されています。その為、受信機の設置工事などを一括で行う際、ブレーカーよりAC100Vの電源を引っ張ってくる工事が発生するので、実際は甲種4類の消防設備士の免状だけでなく、電気工事士の免状も必要になってきます。
また、停電時にも作動するように受信機には専用のバッテリーが内蔵されています。
AC100Vの電圧は変圧器を介して、例えば地区音響装置の端子台であればDC24Vに降圧され、機器に供給されます。
ここから、各警戒区域の感知器・総合盤等へ配線されている他、例えば自動火災報知設備の作動と連動して自動ドアが開く仕組みである「パニックオープン」や、警備会社に連絡する装置を作動させたりする「移報」の信号も発せられます。
それらの受験資格に準ずるものとして掲げられている条件の中に「電気工事士」の免状取得者が挙あり、電気工事士の免状を先に取ってしまえば甲種消防設備士試験の受験資格が得られます。
第二種電気工事士の試験には受験資格がありませんので、一刻も早く実務上免状が必要な場合は、後々必要にもなってくる電気工事士の免状をまず取得する事をお勧めします。
まとめ
- 受信機とは、自動火災報知設備の大元の制御盤であった。
- 現行の受信機において地区音響は「一時停止」させるのみで、感知器や発信機が作動して火災信号を出している状態では、地区音響を停止しても一定時間後に再び鳴動するようになっていた。
- 延べ面積に300㎡以下の建物に自動火災報知設備を設置する場合は、特定小規模施設用自動火災報知設備というワイヤレスの感知器のみのものが使用でき、受信機が不要となることがあった。