火災報知器が誤作動する原因

火災報知器って、かなり誤作動するんですよね。
多くの方を悩ませている火災報知器の誤作動が起こる原因と、最も難易度が高い業務とも言えるその対策について述べていきます。

火災報知器が誤作動する原因は様々

一度は火災報知器のベルが鳴ったものの『…あれ、火事にはなっていなかったのか!』という現場に居合わせた事があるのではないでしょうか。

残念ながら、火災が起こっていないにもかかわらず火災報知器が作動する「非火災報」は結構な頻度で発生し得ます。

その原因も様々で、単純なケースだと発信機のボタンが何者かによってイタズラで押されて作動している事があります。

また、原因を特定する際に面倒な作業を要する複雑なケースですと、建物中に張り巡らされた電線のどこかをネズミが噛んだ為に、大元の制御盤である火災受信機が火災を知らせる電気信号を感知してしまい作動していたという事もあります。

「非火災報」が起こる原理

大元の制御盤である火災受信機は、感知器や発信機に接続された電線のプラス(+、ラインともいう)とマイナス(—、コモンともいう)が電気的に接触してショート(短絡)した事を検知して火災と判断しています。

差動式スポット型熱感知器が誤作動する原因

まず、最も普及しており皆様にとって馴染みの深い“従来型”と呼ばれている熱感知器の作動原理について知っておくと理解が早いでしょう。

差動式スポット型熱感知器(従来型)は温度変化に伴って下図のBにある空気の膨張によってAのダイヤフラムと呼ばれる可動域が押し上げられ、Dの接点がくっつく事によりプラス(+、ライン)とマイナス(-、コモン)が接触して火災信号を発する仕組みになっています。

Cの箇所に「リーク孔」と呼ばれる穴があり、多少の温度変化による空気の膨張であれば、リーク孔から空気が逃げるようになっており、火災時の様な急激な温度上昇で無い限り作動しない仕組みになっています。

注意

我々の生活にも急激な温度上昇が発生している場合があり、例えば冬場に暖房器具を使用して急激に部屋内の温度が高められる事で、正常に機器が作動する事による非火災報が起こったというケースは毎年の様に起こっています。

また、機器の設置から年数が経過していたり、ホコリや粉塵が多い環境下にあると、リーク孔が詰まってしまい、空気が逃がされず少々の温度上昇でも敏感に反応して火災信号を発してしまうという現象が起こる事があります。

感知器が破損している様々なケース

差動式スポット型熱感知器(従来型)が作動する仕組みをご覧頂きました通り、機器本体に直接衝撃があり凹み等の変形に伴えば、非火災報を発する事に繋がります。

感知器は手の届かない天井に設置される事が殆どですが、例えば階段下の収納スペース等の手の届く箇所にも設置されており、そこに荷物を入れる際にぶつけてしまったというケースがありました。

また、学校においては暇を持て余した生徒たちによって、天井の感知器がホウキの柄で突っつかれたり、ボール投げの的になったりと、予想外に破損している事も…。

光電式スポット型煙感知器が誤作動する原因

次に、現在最も普及している光電式スポット型という煙感知器の作動原理を把握し、非火災報の原因について考えてみます。

光電式スポット型煙感知器の中にAの防虫網を抜けて一定濃度以上の煙が入ると、Bの発光素子から出た光が煙の粒子に反射してCの受光素子に届くようになります。その変化を回路が検出し、火災信号を発する仕組みになっています。

非常に細かい目の防虫網がある事によって小さい虫等は入れない様になっていますが、それ以下のサイズである粒子が機器内に入ると非火災報の原因となります。身近な所では、例えば浴室から出た湯気を感知して機器が作動してしまうケースがあります。

その為、浴室と隣接している洗面所には一定の温度以上で作動する定温式の熱感知器が設置されています。

ところが、ユニットバスになっているワンルームには洗面所が無い為、浴室の扉を開けた際に出た湯気がそのまま部屋に設置された煙感知器に届いてしまう事があり、非火災報を招いてしまうというケースが起こります。

その為、ホテル等によってはユニットバスの扉に「お部屋の煙感知器が鳴るので開放したままにしないで…」と注意書きが掲示されているのも見かけます。

また、建設現場にて煙感知器を設置する際、工事中のホコリ等が原因で誤作動する可能性がある為、新品購入時のカバーをそのまま付けておく場合や、既設の煙感知器には養生カバーを付けておく等の対策をします。

定期的に『今からバ◯サン(燻煙式の殺虫剤)を部屋で焚くのですが、火災報知器は作動しますか?』という内容のお問合せを頂く事がありますが、それについては『お部屋にある火災報知器が、煙感知器であれば作動します。』とお答えさせて頂いております。

放射性物質が利用されている「イオン化式」の煙感知器

放射性物質である「アメリシウム241」を自宅に隠し持っていた人が逮捕されたというニュースがあり、関連情報を紹介していた弊社ブログのアクセス数が急激に伸びていたという事がありました。

現在は “光電式”の煙感知器が主流であり、その作動原理は上述した通りですが、それ以前は“イオン化式”という放射性物質である「アメリシウム241」を作動機構に用いる煙感知器が設置されていました。

経年劣化等によりイオン化式から光電式に交換するケースがありますが、その際に撤去してきたイオン化式煙感知器の機器本体には放射線物質であるアメリシウム241が含まれていますから、普通のゴミの様に廃棄できません。

RI法という放射線障害の防止に関する法律により「廃棄する者は、その処理を製造会社等へ委託」する事が義務づけられており、違反すると300万円以下の罰金が課せられます。まだ活躍中のイオン化式の煙感知器は古いこともあり、経年劣化に伴って誤作動が起こりやすくなっている機器もあるでしょう。

現場によっては非火災報対策として、本体を勝手に取り外して運用しているという状況を実際に目にしたことがあります。しかし、その際に撤去した煙感知器がイオン化式であれば、くれぐれもそのまま捨てる等という事が無いようにしましょう。

「知らなかった」では済まされません、気をつけましょう!

煙感知器の感度

煙感知器の機器は、どれ位の濃度の煙を検知して火災信号を出すかという煙感知器の「感度」で、1種・2種・3種と分類されており、1種から感度が高い順になっています。

一般的には、2種の煙感知器が設置されることが最も多いです。

煙感知器の設置基準にて床面から天井までの高さが15m以上20m未満の箇所には1種しか設置できないというルールがありますから、それ以外の場合は全て2種であると言い切れる程です。

また、最も感度の鈍い煙感知器の3種は、誤作動を引き起こしにくい事から「防火戸・防火シャッターの連動用」として多く使用されています。自動火災報知設備の煙感知器が作動しても一般的に警報音が鳴り響くのみですが、防火戸・防火シャッターを含む防排煙設備は現地でシャッターが閉鎖したり、機械排煙設備が連動したりと誤作動のリスクが高い為、運用上比較的感度の鈍い3種の煙感知器の方が、都合が良い訳です。

3種の煙感知器ヘッドには、赤いマークで目印がされています。

消防用設備点検の際、自動火災報知設備の煙感知器を加煙試験するのと同様に3種の煙感知器内に試験用の煙を入れてしまうと、防火戸・防火シャッターが起動してしまうので気を付けて作業します。

防火戸が誤作動した原因は‥

3種の煙感知器は感度が鈍く、誤作動しにくい事は上述した通りですが、それでも防火戸・防火シャッターの誤作動の原因になる事はあります。以前、とある施設にて『一か所、防火戸の誤作動が多発する…。』という問題があり現地を見に行ったところ、当該防火扉連動用の3種の煙感知器の真下が喫煙スペースになっており、そこで何人も煙草をモクモクやっており、その濃厚な煙が3種の煙感知器に直撃していました。

その様な状況では、幾ら感度が鈍い3種の煙感知器でも流石に作動してしまいますよ…。

誤作動中の火災報知器等がある位置の調査方法

自動火災報知設備の回路は警戒区域といって、どこのエリアの火災報知器が作動したかが自動火災報知設備の制御盤である受信機上で判別できる様に分けられています。

例えば「①1階」「②2階」という様に分かれており、その警戒面積は原則600㎡以下で一辺の長さが50m以下と規定されています。受信機の近くに「警戒区域図」というマップがあるので、それと照らし合わせて火災報知器が作動しているエリアを特定します。

感知器の確認灯が光っている場合

現行の火災報知器には、確認灯という「火災報知器が作動している事を示すランプ」がついています。その為、まず確認灯が点灯している火災報知器を探します。

次に、確認灯で誤作動している火災報知器を特定できない場合について説明していきます。

誤作動している火災報知器を特定できない場合

自動火災報知設備の配線についてですが、警戒区域毎に“一筆書き”で配線されています。

その最後尾となる火災報知器に「終端抵抗」という、受信機に「一番最後まで配線が正常にされている事を知らせる物」が接続してあります。

感知器には、以下の様に終端抵抗が刺さってるものがあります。

では、以下の自動火災報知設備回路例をご覧下さい。

四角の中に“S”と書かれている図記号は、煙感知器を示しています。

最後尾である右端の煙感知器の右上に“Ω”の記号がありますが、これが終端抵抗を示しています。

もし、火災報知器が作動中の場合は、受信機の 「“火災” の表示が “断線” の表示よりも優先される」という法則を利用して調査をしていきます。

例えば、以下の様に受信機上で「3階」の警戒区域にて発報していたとします。

この時、例えば受信機から一番離れた位置にある感知器の線を一度抜いてみます。

その後、受信機上で以下の二つのパターンが起こり得ます。

①まだ“火災”発報中の場合

まだ 受信機上で“火災”のランプが点滅し、警戒区域のランプが点灯している状態、つまり発報中のままであれば、線を抜いた位置の感知器よりも受信機側の感知器が発報していると分かります。なぜなら、“断線” の表示よりも “火災” 発報の方が優先されるため、まだ受信機側に火災発報中の感知器があると判断できるからです。

②“断線” 表示に変わった場合

受信機上で“火災”のランプが消灯し、警戒区域のランプが点灯から点滅に変わって、“断線” の表示になれば、その線を抜いた感知器が火災発報していたと判定できます。

電線を抜いて“火災” の表示が消えれば、線を抜いた感知器より向こう側で火災信号が出ていたと分かる為、この様に徐々に受信機側に向かって線を抜いていき、断線の表示に切り替わる位置を探せば、誤報原因の “火災” 信号を出している感知器が特定できるという仕組みです。

この例では対象の警戒区域にある火災報知器の数が少量でしたが、例えば200件の部屋がある建物の誤報箇所を特定したい場合は「ちょうど100件目の真ん中の線を抜いてみる」というのも一つの良い手段です。

真ん中の感知器線を抜いてみて、まだ “火災” 発報中であれば “受信機側の100件が誤報原因箇所” だと分かりますし、“断線” 表示に切り替われば “真ん中以降の残り100件が誤報原因箇所” であると絞り込むことができますから、調査すべき火災報知器のあるエリアを一気に減らしていく事ができます。

終端抵抗が誤作動の原因に…!?

以前、火災報知器の誤作動対応時に、その原因が分からず往生した時の話です。一般的な火災報知器の終端抵抗は “抵抗まる出し”の見た目なのですが、ニッタン社さんは独自の終端抵抗であるCREという、見た目通りブラックボックスに包まれているものが使用されている場合があります。

この時、『もしかしたら…このブラックボックスの中で導通して発報したんじゃないの‥?』という疑いの念が生じました。本来、配線上で+と-の間の電気的な壁の役割を果たす終端抵抗が、逆に+と-を繋げて短絡させて発報させている原因になっているとしたら…このCREへの疑惑を晴らすためにも、中身を知っておく必要があったので、CREのブラックボックス部分を破壊してみました(笑)。

ブラックボックスの中身はコンデンサと小さい抵抗でした。分解する前にニッタン社さんのホームページを見ておれば普通にCREの機器図と回路図があってコンデンサと抵抗で構成されているという情報は。以下の通り得られていました…(笑)。

分解したときは『直列かな…』と思いましたが、機器図にはしっかり並列の回路図が載っていました。

通常、終端抵抗は10kΩなどの容量のものを使用していますが、CRE回路の抵抗については20Ωと数値が小さい代わりに4.7µFというコンデンサが接続されています。コンデンサには静電容量というものがあり、直流だと一定量の電荷を食べてすぐお腹いっぱいになり、壁になります。

ところが直流を通さないコンデンサは寿命がある部品であり、不良品で無くても経年劣化等で故障することが報告されています。

そして、コンデンサという電気的な壁が崩壊してしまうと、断線ではなく、その回路が導通することとなります。

よって、電気的には+と-を接続している短絡状態になる為、受信機上では火災報知器が作動している場合と同じ様に認識され、誤発報を起こします。つまりCRE(終端抵抗)の劣化という不具合でも火災報知器の誤報は起こり得ると結論付けられました。

火災報知器誤作動調査後の対応

誤作動をしている箇所が特定できた場合は、当該機器の交換や電線を敷設し直す等の改修工事を行います。ただ、誤報対応時に原因が特定できない場合があります。例えば、共同住宅等では部屋の中に立ち入る為に、事前に連絡をして日程調整をする必要があるので、誤作動している火災報知器のある場所に適したタイミングでアクセスできない可能性があります。

その様な時は、発報中の警戒区域以外は作動する様に、応急処置的に受信機内へ終端抵抗を入れて復旧させる場合があります。

本来、当該警戒区域の最後尾に接続すべき終端抵抗を一番始めに接続するという事は、一番初めに電気的な壁を設ける事になる為、以降の回路に接続されている全ての火災報知器が作動しない様になります。

当該発報警戒のライン(L線)を抜くと火災信号は消えますが、今度は “断線” の表示が出ることになり、多くの場合、トラブル音響が受信機からピーピーと鳴ってしまいます。その為、誤作動している火災報知器が全く特定できない場合は、この様に終端抵抗を受信機内へ接続する処理がベターとなります。

「電凸」等はお控え下さいませ…。

「電凸」(でんとつ)というのは「電話突撃」の略語で、企業や政党などの団体に対して電話をかける事を指します。お陰様で、お問い合わせのご連絡が増えておりまして、それ自体は大変有り難い話なのですが、あらゆるお声の中には少々対応に困る内容も御座います。

例えば一番多く、かつ困っているのは「ただの質問」です。『スプリンクラー設備が誤作動していて…こういう対策したのですが他に何かありますか?』という電話に対して、『それは◯◯の可能性がありますから…、ところで現場はどちらですか?』と返答した所、『… (営業エリア外) です』等という話が結構あります。

質問して頂ける分には有難いのですが、何せコチラも日常業務中ですので「ただの質問」に時間を割かれていては仕事にならん訳です。

また、Twitter等のSNS経由でDM(ダイレクトメール)を送って下さる方も多いです。

上述した火災報知器が誤作動した際の一次対応として受信機内に終端抵抗を入れて、誤作動中の警戒区域にある火災報知器を全て停止させるといった措置に対して『このやり方だと火事があった場合に危険じゃないですか?これでいいのでしょうか?』という様な意見を頂きます。この時は『勿論、火災報知器を正常な状態に戻すに越した事はありませんが、その場の対応としてそれが最善であると考えられるので…』という回答します。

それに加えて、『この様な質問と、それに対する回答は世の中の多くの人の為になるように、二人しか確認できない閉鎖的なDMではなく、Twitterのタイムライン上かブログのコメント欄の様な誰でも見られる場所でお願いします!』と回答させて頂く事があります。

勿論、この様な質問を頂ける方が未来のお客様になる可能性があるというのは承知しております。

しかし、何せ一人一人に返事をしていては時間が幾らあっても足りないという様な状態になるので、もし同様の疑問が世の中に溢れているのだとすれば、二者間という閉鎖的なコミュニケーションでなく、全体に公開してより有意義な質疑応答にすべきだと思っています。

そうすると、やはり「電凸」は録音して公開するわけにもいかないでしょうから、お控え下さった方が全体の利益になるかと思われるのですが、皆様はどうお考えでしょうか。Twitter上で弊社にいる猫のタマスケが大ブレイクしている今、より多くの方々に情報を発信できる土壌も整っておりますので、是非「電凸」したかった内容も全体公開でお願いしたい次第です。

まとめ

  • 大元の制御盤である火災受信機は、感知器や発信機に接続された電線のプラス(+、ラインともいう)とマイナス(—、コモンともいう)が電気的に接触してショート(短絡)した事を検知して火災と判断していた。
  • 音響ベルが鳴った際には確認灯という「火災報知器が作動している事を示すランプ」がついている火災報知器を探した。
  • 発報中の警戒区域以外は作動する様に、応急処置的に受信機内へ終端抵抗を入れて復旧させる場合があった。