漏電火災警報器の設置基準と配線工事

第7類の「漏電火災警報器」って、どんな消防用設備?
電気が漏れた時に音を鳴らすものですね‥解説していきます!

漏電火災警報器について

屋内の配線や電気機器から電気が漏れ出すと、感電や火災の原因となり、大変危険です。

その為、名称からも分かる通り、電気が漏れ出す事によって起こる「漏電火災」を未然に防ぐ為に、表示灯及び音響装置を作動させて漏電を知らせる第7類の消防用設備に該当する「漏電火災警報器」が設置されます。

漏電火災警報器は「受信機」と「変流器」の二つによって構成されています。

漏電火災警報器の受信機

漏電火災警報器の変流器

漏電火災警報器の設置基準

漏電火災警報器の設置義務が生じる建物として、消防法上で以下の二つの条件を満たす建物について規定されています。

  1. 壁・床・天井いずれかの下地が木造などの準不燃材料以外の材料で作られ、かつ、鉄網(ラス)入りである場合。
  2. 上記1.の構造であり、用途によって規定の延べ面積または契約電流容量が50Aを超える場合。

よって1.の条件が当てはまる代表例として鉄網(ラス)にモルタル(水・砂・セメントを混ぜたもの)を塗った“ラス・モルタル構造”である建物に該当するかが、設置義務が生じるかどうかの大きな分かれ目になっています。

現在は比較的古い建物でなければ、まずラス・モルタル構造になっている事は殆ど無く、設置義務が生じる事は滅多にありません。

メタルラス モルタル

では、何故“ラス・モルタル構造”の様な建物には漏電火災警報器の設置義務が生じるのかと言うと、金属であるラスに漏洩電流が流れ、それが壁面などを伝って可燃物である木材に接触する事で火災が発生する原因になるからです。

実際に、ラス・モルタル構造で作られた文化住宅等の比較的歴史ある建物において、漏電火災が起こっていた事が、設置義務が生じる様になった背景となっています。

古民家を民泊へ変更する際に特需が…!

世間を賑わせている民泊ブームによって、「古民家」を民泊に用途変更して活用するという動きが広まりました。

現在、新しい建物に対して消防法上で漏電火災警報器の設置義務が生じる事は殆どありません。

しかし、本来消防用設備の設置義務が生じないラス・モルタル構造に該当する既設の一戸建てについて、それを一般住宅から民泊への用途変更するに際して、漏電火災警報器を設置するという案件が急増しました。

民泊ですと、エアコンや洗濯機などが複数台設置されるケースも多く、小規模でも契約電流容量が50A以上に変更される為、漏電火災警報器の設置対象に該当し易いという事情もありました。

老朽化が進んでおり、日本人である我々にとって何ら魅力的に感じる事の無い古民家でも、海外の方からすれば興味をそそる様です。

弊社のお客様でも、古民家を「Traditional house(直訳すれば“伝統的な家”)」と謳って民泊仲介サイトに登録し、大人気宿泊先として活用されている方がおられました。この様な“価値観のギャップ”がビジネスになるという訳です。

漏電火災警報器の設置場所

漏電火災警報器の変流器を設置する場所については消防法上にて、主に以下の2箇所が規定されています。

  1. 設置する建物の「①電路の引込み口配線」
  2. 上記または「②B種接地工事を施した接地線」

①については、電柱から建物に電気を引込み始めている箇所、②については元々電気が漏れた際に大地へ電流を逃す為に設けられた電線を指しています

また、消防法上にて設置義務が生じている箇所以外に、変電設備であるキュービクル内にも漏電火災警報器があります。変電設備についても漏電していれば危険である為、例えば変電設備を管理する電気主任技術者の方が、異常を早期発見できる様に漏電火災警報器が利用されているという訳です。

消防設備士が電験三種を取得する利点

変電設備がある建物には電気主任技術者が選任されていますが、その電気主任技術者になる為に“電験”という資格の取得が必要になります。

電験の資格は1~3種に分かれており、最も簡単な「電験三種」ですら合格率が数パーセントと高難易度に設定されています。

消防設備士の実務でも、電気工事士もしくは電気主任技術者の免状取得者である事が作業従事の要件になる場合や、キュービクル内にある消防用設備等に係るブレーカーの試験や自家発電設備のメンテナンスの際に、その建物の電気主任技術者さんと連携して作業を行う事がある為、電験三種は取得しておいた方が良いのは間違いありません。

しかし、試験勉強に膨大な時間を費やさなければならず、私の場合は700時間位かかりました。

よって、気軽に『電験三種、取ったら?』と勧められる様な物ではないのですが、それでも他の消防設備士の方には電験三種に挑戦して頂きたいと思っています。

私が電験三種の資格を取得して良かったと思う事に、実務で使える他に、消防用設備等の業界内に電験三種を持っている人がおらず、「わざわざ消防設備士する人いないでしょ…。」という世間の認識もあって、比較的希少な存在として扱われる様になったという事がありました。

「消防設備士」×「電気主任技術者」の様に“掛け算”となる組み合わせを見つけられれば、もしかしたら大きく成長できるかもしれません。

漏電火災警報器の施工

まず、漏電火災警報器の受信機を屋内の点検が容易な場所に設置します。そこへ、分電盤よりAC100Vの電源を専用回路にて漏電火災警報器の受信機へ配線し、機器の端子台へ結線します。

次に、変流器と受信機を結線するのですが、その変流器には“分割型”と“貫通型”があります。既設の建物に設置する際、分割型であれば電線を挟み込んで中に入れるのみですが、貫通型だと電線の端からくぐらせる手間がかかってしまいますので、注意が必要です。

また、切断された断面を見ると分かり易いのですが、変流器の中身には鉄心に金属の巻き線がされたコイル状の検出部が入っています。

通常時の場合、変流器の貫通孔内電線によって鉄心内に発生する磁束は打ち消されているのですが、漏洩電流が発生すると磁束のバランスが崩れる為、それを検知して受信機へ信号を送る事で漏電の発生を知らせるという仕組みになっています。

この様な変流器は「零相変流器」とも呼ばれており、記号で“ZCT”と表示されている事もあります。

漏電火災警報器の施工時に必要な免状

漏電火災警報器の施工に際して注意すべき点として「電気工事士」の免状が必要である事が挙げられます。

消防設備士の免状は甲種・乙種に分かれており、甲種は工事・整備及び点検が可能であり、乙種は整備・点検が可能になっています。例えば自動火災報知設備の工事をする為には、乙種ではなく甲種4類の消防設備士免状が必要となります。

ところが、工事も発生する第7類の消防用設備である漏電火災警報器の消防設備士免状には整備・点検が可能となる“乙”種しか無く、工事については甲種の免状の代わりに電気工事士の免状が必須となっています。

ちなみに、第7類の他に第6類の消火器具に係る消防設備士免状も乙種のみです。

例えば消火器を設置するのに工事はありませんからね。

ですから、甲種特・1~5類と乙種6・7類の免状を取得すれば、消防設備士の独占業務となっている全ての範囲の作業に従事する事が可能になります。

まとめ

 

  • 電気が漏れ出す事によって起こる「漏電火災」を未然に防ぐ為に、表示灯及び音響装置を作動させて漏電を知らせる第7類の消防用設備に該当する「漏電火災警報器」が設置された。
  • 漏電火災警報器の設置義務は「壁・床・天井いずれかの下地が木造などの準不燃材料以外の材料で作られ、かつ鉄網(ラス)入りである場合」かつ「用途によって規定の延べ面積または契約電流容量が50Aを超える場合」に生じた。
  • 漏電火災警報器の施工に際して注意すべき点として「電気工事士」の免状が必要である事が挙げられた。