誘導灯の種類と設置基準について
目次
誘導灯の種類
常日頃、周囲をよく観察されている方であればご存知かもしれませんが、誘導灯には幾つか種類があります。消防法施行令第26条では、大きく以下の3つに分類されています。
避難口誘導灯
まず、屋内から外へ通じている出入口の上部や、階段の出入口などに設けられるのが、こちらの避難口誘導灯になります。
誘導灯の中では、最も目にする機会が多いのではないでしょうか。
通路誘導灯
次に、避難口誘導灯までの経路に設置されるものとして通路誘導灯という機器があります。
避難口誘導灯が緑地であるのに対して、通路誘導灯は白地であり、避難方向を示す矢印のシンボルが付されていることが特徴です。
客席誘導灯
客席誘導灯は文字通り、劇場や映画館などの用途の建物の客席に設置されるバッテリー付きの電灯です。
通路の床面における照度を確保する為、座席の下部に設けられています。
暗室で停電した際も、こちらを目印に避難できるという訳です。
誘導灯の設置基準
誘導灯の設置が必要な用途の建物は消防法や建築基準法で謳われています。
そして、当該設置場所については、機器の大きさと種類によって間隔が規定されています。
例えば、避難口C級と通路C級の誘導灯を設置する場合を考えてみましょう。
避難口C級は最も小さいサイズであり、矢印付きのパネルが無い為、表の“避難方向を示すシンボルがないもの”の欄となり、包含距離が15mとなっています。
そして、通路C級は10mとなっている為「避難口15m + 通路10m = 25m」となり、避難口誘導灯から25m以内の箇所に一つ目の通路誘導灯を設置すれば良いと分かります。
上記の基準が原則となりますが、建物ごとに状況は異なる為、視認性等々を考慮して複数台の誘導灯が近い位置に付くこともあります。
図面上で誘導灯の配線ルートや避難経路を考えて記すのですが、その最適解は物件によって様々なので工夫の余地があります。
以前、点検時に見かけた例として、曲がり角に通路誘導灯があり、そのすぐの箇所ある階段の上部に避難口誘導灯が設置されていました。
上記のケースですと、通路誘導灯が設置されている位置に以下のような“避難方向を示すシンボルのある避難口誘導灯”を設置すれば機器が一台で済む可能性があります。
所轄消防署の予防担当者さまと要相談になりますが、設計時に機器を減らすことができれば、費用削減することができ、お客様に喜んで頂けることに繋がります。
蛍光灯からLED誘導灯に変更する際の注意点
サイズが変わる
従来の蛍光灯を光源とした小型の誘導灯と同等の現行品はC級の誘導灯となりますが、その機器の大きさは異なります。
機器を取り替えるに際して古い機器を撤去すると、本体が接触していた壁や天井が光で焼けていたり、誘導灯設置後に塗装がされていることがある為、そのままコンパクトなC級のLED誘導灯を設置してしまうと不恰好な見栄えになってしまいます。
リニューアルプレート
そこで、従来の機器の設置後を隠す製品である“リニューアルプレート”というプレートを固定し、そこに新しいLED誘導灯をつける事で、より美しい仕上がりとなります。
その後、人間の形をしたピクトグラムと“非常口”の文字が併せて表示されたものが登場します。
そして最終的に、同様の緑色でかつ人型のピクトグラムが表示された電灯は非常口を示すものであるという認識が世間一般的になり、非常口の文字が省略されて人型のピクトグラムのみとなった現在のコンパクトな誘導灯が誕生することとなりました。
機器のサイズが小さくなった時、従来までの光源として蛍光灯を用いたものは廃止されました。
その後、冷陰極管という、より小型化することが可能な光源が採用された機器が普及しました。
そして、冷陰極管よりも性能の良い光源であるLEDが開発された為、現在はLED誘導灯のみが一般的に設置されています。
LED化せずに活躍中の「文字だけ誘導灯」
全ての誘導灯がLED化されているかといえばそうではなく、従来の蛍光灯を光源として用いた誘導灯もまだまだ街中で見かける事ができます。
中でも最も古く、存在台数の少ない「非常出口」の文字のみが表示されている機器は“文字だけ誘導灯”と呼ばれ、それを好むマニアもSNS上には一定数存在し、その目撃情報が共有されています。
私も以前“文字だけ誘導灯”を発見した際に写真を撮って投稿しましたが、予想を上回る反響があって驚きました。
建物の改修や用途変更の際に現行の機器に交換するのも我々の業務の一つですが、歴史のある誘導灯が温存されている箇所というのが年々減少するのは名残惜しくもあります。