誘導灯の配線工事

正式名称が誘導灯である「非常口にある緑色のアレ」の配線って、どないなってるん?
気になりますよね‥電気工事士かつ消防設備士であるワタクシ管理人が徹底解説しましょう!

誘導灯の電源

非常口の場所を示す緑色の光源である誘導灯の各機器にはVVFケーブルが接続されており、AC100Vの電力が供給されています。

この電源ですが、“専用回路”で分電盤内に設けられており、そこから各機器に電力を供給しています。

消防用設備等は火災などの有事の際に作動しなければなりませんから、例えばコンセントの回路と同じにしてしまうと、当該回路に繋がった機器が壊れて短絡してブレーカーが落ちた際に、消防用設備等も道連れになり使用不可になってしまいます。

それでは意味がありませんから、基本的に設備毎に単独のブレーカーを設けて専用回路にする事が規定されています。

また、分電盤内のブレーカーには設備毎の名称を明記すると共に、ハンドルロックという赤いストッパーでブレーカーが落ちないように固定されています。

消防用設備等の工事に必要な免状って…

この分電盤内専用回路から、電気と工事の読者の皆様お馴染みのVVFケーブルで各機器へ配線していきます。

当該電源回路の工事ですが、携わるに際して電気工事士の免状を取得している必要があります。

『甲種4類の消防設備士の免状を取得したから、これで工事でも何でもどんとこい…!』と意気込まれて現場に入ろうものなら、『誘導灯の工事できないです…あ、自動火災報知設備の受信機までの電源も無理です。』と頼りない状態になってしまいますから、消防用設備等の施工を生業の一つにされる際は併せて電気工事士の免状を取得することも不可欠であると言えます。

電源ケーブルの隠ぺい配線

新設建物及び既設建物で天井裏や壁面内にアクセスできる箇所は、天井裏に電源ケーブルを敷設する隠ぺい配線とします。

誘導灯の専用となるブレーカーから機器への配線ですが、一般的な照明やコンセントへの配線と同様にVVFケーブルを敷設するのみです。

もし、既設建物で点検口等の天井裏を覗く手段が無くても、図面や他の埋込照明器具を外す等を行った結果、天井裏にスペースがあると分かれば新たに点検口を作成することもあります。

新設建物への施工時には、まだ天井が貼られていない段階で配線を敷設できるので作業自体は簡単になります。ただ、天井裏に電線を転がしておくという事が出来ない為、配線固定用に寸切りボルトや市販の専用器具を天井面に固定し、電線を巻いておきます。

後々の工程で天井が貼られると、これらの電線は全く見えない様になります。実際に建物の天井裏を覗かれた際は、そこにある電線の量に驚かれる事でしょう。

天井裏にも火災報知器が…!?

管理人も消防設備士としての業務に携わる以前は、天井裏という場所事態を見たことがありませんでした。

天井裏なんて滅多に確認するものではないと思われるかもしれませんが、実は頻繁に見られる場所もあり、例えば自動火災報知設備の感知器が天井裏に設置されている場合が挙げられます。

消防法上、耐火構造でなく、かつ天井裏の高さが50cm以上ある場合には、天井裏にも感知器を設置する必要があります。

その様な現場ですと点検口も一定間隔で複数あるので、機器の新設・増設の工事をする際は比較的簡単にできるので助かります

電源ケーブルの露出配線

天井・壁面内に隠蔽できなければ、露出配線で機器まで電源ケーブルを持っていきます。

誘導灯機器を主に室内に設置する場合はケーブルモールを用いて、屋外等に設置する場合は金属管やPF管等を用いて施工するケースが多いです。

露出配線の場合は、ひたすら壁面や天井面に沿わせてモールや配管を固定し、その中に電線を敷設していくのみです。

最短となる経路を探すだけでなく曲がり角なども減らした方が作業しやすい為、事前にルートを見極める力も大切になってきます。

消防設備士が行う所轄消防署への届出

誘導灯の設置工事に関しては電気工事士の免状取得者が行うという事は前述の通りですが、その工事に際して市町村条例に基づいた工事設計書を所轄消防署に提出し、審査に合格する必要があります。

誘導灯という設備の扱いは少々ややこしく、政令上で誘導灯は消防用設備等の一つとして規定されていますが、その工事着手に際する届出は法令上、甲種消防設備士でなくても行える事となっています。

ただし、設計の要領に詳しい消防設備士が図面上で設置位置を決定し、施工まで行うことが多い為、誘導灯の施工においても実質は消防設備士が所轄消防署に届出をする事が殆どです。

誘導灯の取付け

現行のコンパクトなLED誘導灯は、主に以下の4つより構成されます。

  1. 非常用バッテリー
  2. カセット式ランプ
  3. 誘導灯機器本体
  4. 誘導灯用パネル

固定金具まで配線

設置箇所まで電源ケーブルを敷設できたら、③誘導灯本体機器に付属している固定用金具中央部に電線をくぐらせて設置します。

結線

次に、電線先端部分被覆を剥いて、機器内部に「白・黒」と書かれた接続口へ挿します。

バッテリー取付け

その後、③の誘導灯機器に①の非常用バッテリーをカチッと取付け、④の誘導灯用パネルを入れ、①のカセット式ランプを差し込めば誘導灯の設置完了です。

注意

点検先などで、まれに施工時から①の非常用バッテリーが差さっておらず、停電時に点灯しない様な状態になっている事があります。

設置後には本体の点検スイッチを押すことによる確認及び専用ブレーカーを落として常用電源を遮断した状態でも点灯するか、しっかり試験を行いましょう。

誘導灯のバッテリー試験方法の変遷

従来の蛍光灯タイプの誘導灯機器におけるバッテリーの試験方法は、本体から出ているヒモを引っ張るという仕組みでした。

このヒモですが、劣化して千切れてしまうことも多く、次に半円形のプラスチック部分は本体から突き出ており、それを引っ張るという仕組みになりました。

しかし、このプラスチック部分も劣化すると割れるというトラブルが生じました。その為、現行の誘導灯機器本体の非常用バッテリー試験部分は、ボタンタイプに改善されています

今回は誘導灯の配線と機器取付けに関して解説しました。

設置されている機器を目にすることが多い消防用設備等の一つである誘導灯に対して、想像を膨らませるきっかけとなれば幸いです。

まとめ

  • 非常口の場所を示す緑色の光源である誘導灯の各機器にはVVFケーブルが接続されており、AC100Vの電力が供給されていた。
  • 消防用設備等の施工を生業の一つにされる際は併せて電気工事士の免状を取得することも不可欠であった。
  • 誘導灯という設備の扱いは少々ややこしく、政令上で誘導灯は消防用設備等の一つとして規定されていますが、その工事着手に際する届出は法令上、甲種消防設備士でなくても行える事となっていた。