【過去問】消火器の適応火災|消防設備士乙種6類【消火器の構造・機能】
しかし消火器にも「適応火災」といって、得手不得手があります。
例えば燃えている油に棒状の水系消火器を噴射すると『ボカン!』みたいに危険なことがあるので注意!
これから消防設備士の試験を受ける方、既に消防設備士の免状を取得して業務に従事されている方も今一度、確認しておきましょう!
目次
ブログ著者の紹介
管理人は消防法に基づく消防設備士および危険物取扱者の免状を共に全類取得している為、消火器の構造・機能も円広志の『飛んで飛んで飛んで…♪』くらいマスターしています。
もっとも一般的な粉末ABC消火器は万能性がウリですが、より他の消火器の方が得意な適応火災もあります。消火器毎の適応火災を詳しくみてみましょう。
消火器の適応火災3つ
火災には可燃物によりA火災、B火災に区別されており、それらが電気に関わる設備の火災なら電気火災(C火災)になります。
※消火器の技術上の規格を定める省令では、電気火災の定義は曖昧。
- A火災(普通火災)
- B火災(油火災)
- C火災(電気火災)
【消火器の規格】適応火災マーク(絵表示)の色と大きさ【過去問】
適応火災が定められている理由
火災の種類により適した消火作用がありますが、薬剤の種類や放射の性状によっては意味がなされなかったり、逆に火災が助長されたり、消火器の使用者が感電してしまう等の危険があります。
その可燃物の種類や形状、また周囲の状況や環境により適切な消火が行われるように設定されたのが以下の「適応火災」です。
【早見表】消火器の適応火災
A火災 | B火災 | C火災 | 備考 | |
水消火器 | ◯ | × | ◯ (※霧状) |
|
強化液消火器 | ◯ | ◯ (※霧状) |
◯ (※霧状) |
|
泡消火器 (化学・機械) |
◯ | ◯ | × | 現在は、ほぼ機械泡消火器しかない。 |
二酸化炭素 消火器 |
× | ◯ | ◯ | 消火後の薬剤による汚損が無い。 使用場所に要注意! |
ハロゲン化物 消火器 |
◯ (※大型) |
◯ | ◯ | ハロゲン化物は消火薬剤として有能だが、環境に悪い。 |
粉末消火器 (ABC) |
◯ | ◯ | ◯ | リン酸塩類等を主成分とするABC薬剤以外はA火災に適応しない。 |
※ (霧状)とは霧状に放射するものに限り。(大型)は大型消火器のみ適応。
水消火器[A・C(霧)]
A火災には適応します。
放射には棒状と霧状があり、霧状の場合のみ電気火災(C火災)にも適応します。
水は油よりも比重が大きく、放射しても沈んでしまうので消火できません。
さらに水が広がってしまうとその上に乗った油も広がり燃焼面積が広がる可能性もあるのでB火災には適しません。
強化液消火器[A・B(霧)・C(霧)]
A火災には適応する。
強化液消火薬剤も油より比重が大きいため沈んでしまいますが、霧状で燃焼面にかければ含有している化学成分が燃焼を抑制するので霧状放射ならB火災に適応します。
電気火災(C火災)も霧状放射であれば、適応します。
化学泡・機械泡消火器[A・B]
泡といっても、元は液体なので冷却作用がありA火災に適応します。
B火災は泡が油に浮かんで、表面を覆う形で適応。
電気火災(C火災)では泡を通じて電気が流れて感電するので適応しません。
【二酸化炭素消火器】[B・C]
放射された二酸化炭素ガスは燃焼面の表面に作用する為、立体的な燃焼には適さないことからA火災には適応しません。
B火災には適応。
気体なので電気火災(C火災)にも適応します。
消火後に薬剤による汚損がないメリットがありますが、状況により人体への悪影響があるため設置場所に制限がある。
【ハロゲン化物消火器】[A(大型)・B・C]
大型のものはA火災にも適応していますが、基本的にはB火災と電気火災(C火災)に適応します。
二酸化炭素消火器に比べて人体への悪影響がありませんが、地球への悪影響があるため現在は製造されていませんし、ほとんど設置もされていません。
【粉末消火器】[A・B・C]
粉末消火薬剤には主成分の違いでいろいろ種類がありますが、90%以上がリン酸塩類等を主成分とするABC薬剤です。
リン酸塩類等がA・B・C適応、それ以外がB・C適応と覚えるとよいでしょう。
A火災 | B火災 | C火災 | 備考 | |
水消火器 | ◯ | × | ◯ (※霧状) |
|
強化液消火器 | ◯ | ◯ (※霧状) |
◯ (※霧状) |
|
泡消火器 (化学・機械) |
◯ | ◯ | × | 現在は、ほぼ機械泡消火器しかない。 |
二酸化炭素 消火器 |
× | ◯ | ◯ | 消火後の薬剤による汚損が無い。 使用場所に要注意! |
ハロゲン化物 消火器 |
◯ (※大型) |
◯ | ◯ | ハロゲン化物は消火薬剤として有能だが、環境に悪い。 |
粉末消火器 (ABC) |
◯ | ◯ | ◯ | リン酸塩類等を主成分とするABC薬剤以外はA火災に適応しない。 |
※ (霧状)とは霧状に放射するものに限り。(大型)は大型消火器のみ適応。
それでは以下の消火器の消火作用に関する消防設備士試験の過去問にチャレンジして、これまでの内容が頭に入っているかを確認しましょう!
消防設備士試験の過去問(構造・機能)
石炭の火災に適応しない消火器は、次のうちどれか。
石炭は『石』と書いてあるが、元を辿れば植物で木炭の親戚だと思えば木が燃えているようなもので、A火災に該当します。
もしかしたら『石炭は燃料、燃料といえばガソリン、ガソリンはB火災!』…みたいに連想したかもしれませんが、それは違います。
(4)のリン酸塩類 “以外” の粉末消火器はBC火災にしか適応していない為、誤り。
A火災 | B火災 | C火災 | 備考 | |
水消火器 | ◯ | × | ◯ (※霧状) |
|
強化液消火器 | ◯ | ◯ (※霧状) |
◯ (※霧状) |
|
泡消火器 (化学・機械) |
◯ | ◯ | × | 現在は、ほぼ機械泡消火器しかない。 |
二酸化炭素 消火器 |
× | ◯ | ◯ | 消火後の薬剤による汚損が無い。 使用場所に要注意! |
ハロゲン化物 消火器 |
◯ (※大型) |
◯ | ◯ | ハロゲン化物は消火薬剤として有能だが、環境に悪い。 |
粉末消火器 (ABC) |
◯ | ◯ | ◯ | リン酸塩類等を主成分とするABC薬剤以外はA火災に適応しない。 |
※ (霧状)とは霧状に放射するものに限り。(大型)は大型消火器のみ適応。
消火器具の適応火災について、正しいものは次のうちどれか。
2. 棒状の水を油にブッかけたら『ボカン!』です。要注意!
3. 乾燥砂、膨張ひる石または膨張真珠岩は「建築物その他の工作物」には適応しない(=A火災に適応しない)のが特徴です。
4. 二酸化炭素消火器は「建築物その他の工作物」には適応しない(=A火災に適応しない)のが特徴です。
消火器具の区分
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対象物の区分
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建築物
その他の工作物 |
電気設備
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危険物
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指定可燃物
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第一類
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第二類
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第三類
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第四類
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第五類
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第六類
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可燃性固体類
または合成樹脂類 |
可燃性液体類
|
その他の
指定可燃物 |
||||||||
アルカリ金属の過酸化物
またはこれを含有するもの |
その他の第一類の危険物
|
鉄粉・金属粉
もしくはマグネシウム またはこれらのいずれかを 含有するもの |
引火性固体
|
その他の
第二類の危険物 |
禁水性物品
|
その他の
第三類の危険物 |
||||||||||
棒状の水を
放射する消火器 |
○
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○
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○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
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○
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|||||||
霧状の水を
放射する消火器 |
○
|
○
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○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
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○
|
○
|
||||||
棒状の強化液を
放射する消火器 |
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
|||||||
霧状の強化液を
放射する消火器 |
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
||||
泡を
放射する消火器 |
○
|
○
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○
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○
|
○
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○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
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|||||
二酸化炭素を
放射する消火器 |
○
|
○
|
○
|
○
|
○
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|||||||||||
ハロゲン化物を
放射する消火器 |
○
|
○
|
○
|
○
|
○
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|||||||||||
消火粉末を
放射する 消火器 |
りん酸塩類等を
使用するもの |
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
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|||||
炭酸水素塩類等を
使用するもの |
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
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||||||||
その他のもの
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○
|
○
|
○
|
|||||||||||||
水バケツ又は水槽
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○
|
○
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○
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○
|
○
|
○
|
○
|
○
|
○
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|||||||
乾燥砂
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○
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○
|
○
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○
|
○
|
○
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○
|
○
|
○
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○
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○
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○
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||||
膨張ひる石または膨張真珠岩
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○
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○
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○
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○
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○
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○
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○
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○
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○
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○
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○
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○
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【備考】
- 一 ○印は、対象物の区分の欄に掲げるものに、当該各項に掲げる消火器具がそれぞれ適応するものであることを示す。
- 二 りん酸塩類等とは、りん酸塩類、硫酸塩類その他防炎性を有する薬剤をいう。
- 三 炭酸水素塩類等とは、炭酸水素塩類及び炭酸水素塩類と尿素との反応生成物をいう。
- 四 禁水性物品とは、危険物の規制に関する政令第十条第一項第十号に定める禁水性物品をいう。
【早見表】消火器の設置基準|法令(類別)消防設備士乙6【過去問】
防火対象物またはその部分には ❝建築物その他の工作物❞ の消火に適応するものとされる消火器具を、その能力単位の数値の合計数が当該防火対象物または、その部分の延べ面積または床面積を以下の表に定める算定基準面積で除して(割り算して)得た数以上の値となるように設けます。
その為、補足ですが二酸化炭素消火器を設置しても建物ごとに生じている消火器の設置義務を満たすことはできません。
電気設備の火災に適応しない消火器は、次のうちどれか。
粉末消火器の消火薬剤の性状および消火の適応性について、誤っているものは次のうちどれか。
粉末消火薬剤でA、B、C火災に適応しているものは、リン酸塩類等(リン酸アンモニウム)が主成分のものだけで、他はB火災、C火災のみである。
国内で最も多く生産されている消火器は粉末消火器で、そのうちABC薬剤(リン酸塩類等)が90%を占めている。
種別 | 消火剤の主成分 | 一般的呼称 | 適応火災 | 着色 |
第1種 | 炭酸水素ナトリウム(Na) | 重曹薬剤 | BC | 白色または淡緑色 |
第2種 | 炭酸水素カリウム(K) | カリ薬剤 | BC | 紫色 |
第3種 | リン酸塩類等(ABC) | ABC薬剤 | ABC | 淡紅色 |
第4種 | 炭酸水素カリウムと 尿素の反応物(KU) |
モネックス | BC | 淡青色または灰色 |
薬剤の色もABC薬剤だけが消防法で定められており、他は消火器業界での自主基準である。
消火器について、誤っているものは次のうちどれか。
(1)霧状放射では薬剤が細かい粒で放射される為、薬剤を通じて感電する恐れがないので電気火災にも適応します。
(2)水は油よりも重い為、油にかけても沈んでしまい油火災には適応しません。
(3)化学泡消火薬剤のうち硫酸アルミニウムは鉄を侵すので、もし外筒に入れたら腐食してしまい穴が空くでしょう。
消防設備士「過去問テスト」は、その名の通り“過去に出た問題” のテストであり、ブログでお馴染みの管理人が過去問に関する情報収集を積み重ね、その中からピックアップして過去問ベースの模擬試験を作成したものです。
上記以外に新傾向問題の情報など提供あり次第、随時追記して解説を更新していきます。
その他、質問など御座いましたらボちゃんねる(掲示板)へ投稿、もしくはLINEオープンチャット「消防設備士Web勉強会」上でご連絡下さいませ。
まとめ
- 火災の種類により適した消火作用がありますが、薬剤の種類や放射の性状によって無意味どころか逆に火災が助長されたり、消火器の使用者が感電してしまう等の危険があった。
- 強化液消火薬剤は油より比重が大きいため消火薬剤が沈んでしまうが、霧状で燃焼面にかければ含有している化学成分が燃焼を抑制するので霧状放射ならB火災に適応した。
- 放射された二酸化炭素ガスは燃焼面の表面に作用する為、立体的な燃焼には適さないことからA火災には適応しなかった。