消防設備士の義務講習を受けずに違反(期限切れ)した場合の罰則は?
消防設備士の義務講習を受けなかったら消防法違反ではありますが、それだけが理由で罰則(免状返納命令)の対象にはなり得ないので、もし実務で使う必要があるなら直近の消防設備士の講習を受けて下さい。
まず最初に、この記事のポイントを箇条書きにしておきます。
- 消防設備士免状の違反点数は加点方式
- 点数の算定は義務講習違反のみ講習区分ごと
- 合計20点以上に到達すると罰則(免状返納命令)
- 義務講習を受けない(=期限切れ)だけでは罰則対象外
- 消防長が都道府県知事に消防設備士の違反を報告する仕組み
(※個人の感想です)
よって消防設備士の義務講習を受けずに違反(期限切れ)になって困ることは、実務で使用できなくなることだけです。
よく『義務講習があるので消防設備士を受けるのをやめました‥』と仰られている方を見かけます。
義務講習を受けなければ厳密には ❝消防法違反❞ の状態(免状の期限切れ)にはなりますが、それだけでは罰則の対象にはならないルールです。
消防設備士の免状を取得しようか迷っている皆さん、どうぞ安心して資格試験に合格して免状交付の申請をして下さいませ。
目次
消防設備士免状の返納命令対象は?
消防設備士免状は、過去3年以内の違反行為によって加点された点数の合計が ❝20点❞ に達した免状ごとに返納命令対象となります。
免状交付知事は、当該違反行為及び当該違反行為のなされた日を起算日とする過去3年以内におけるその他の違反行為に係る違反点数を合計した点数(以下「措置点数」という。)を免状の種類等ごとに算出し、措置点数が20 点に達した免状の種類等がある場合において、当該免状の種類等に係る免状返納命令を行うものとする。
複数の消防設備士免状の交付を受けている者が違反行為を行った場合、違反点数は消防設備士免状の対象設備以外の消防設備士免状にも加算されます。
例えば、甲種第1類、甲種第5 類、乙種第 6類の3つの種類の消防設備士免状の交付を受けている者がスプリンクラー設備(1類)の工事を誤り、その機能・効用が一時損なわれたとしましょう。
この場合、違反点数(8点)が計上されるのは甲種第1類だけでなく、他の 2 つにも計上されるのです。
違反点数は、すべての免状の種類ごとに計上される(≒全部の免状に違反点数が加算される)って話。
ただし例外があり、消防設備士義務講習を受けていなかった場合の加点方法については、それぞれ以下の通り違反行為に係わる免状の種類(講習区分)毎に計上される仕組みです。
消防設備士講習受講義務違反の点数
消防設備士講習受講義務違反の点数は、それぞれ免状の講習区分ごとに5点が加点されます。
№ | 違反行為の種別 | 点数 | ||||
1 | 17 条の3 の3 (規則31 条の4) |
資格外の点検実施又は無資格者を利用しての点検の実施 | 6 | |||
2 | 17 条の5 | 保有する消防設備士免状対応業務以外の業務実施(資格外の工事若しくは整備の実施又は無資格者を利用しての工事若しくは整備の実施(当該無資格者の作業に対する指導・監督が有効に行われている場合を除く。)) | 8 | |||
3 | 17 条の10 | 消防設備士講習受講義務違反 | 5 | |||
4 | 17 条の12 | 誠実業務 実施義務違反 |
技術基準違反の工事・整備実施 | a | 消防用設備等の機能、効用が著しく損なわれている場合 | 8 |
b | a 以外の場合 | 3 | ||||
点検基準違反の点検実施 | a | 消防用設備等の機能、効用が著しく損なわれている場合 | 6 | |||
b | a 以外の場合 | 2 | ||||
事実と異なる点検結果の記載 | a | 消防用設備等の機能、効用が著しく損なわれているにもかかわらず、そうでない旨の記載をした場合 | 6 | |||
b | a 以外の場合 | 2 | ||||
5 | 17 条の13 | 消防設備士免状の携帯義務違反 | 4 | |||
6 | 17 条の14 | 消防用設備等の設置工事着手届出義務違反(事実と異なる届出を含む。) | 4 | |||
7 | 21 条の2④ | 個別検定に合格した旨の表示(検定表示)のない検定対象機械器具等の工事への使用禁止違反 | 7 | |||
8 | 21 条の16 の2 | 自主表示対象機械器具等に係る技術上の規格に適合する旨の表示(自主表示)のない自主表示対象機械器具等の工事への使用禁止違反 | 7 |
※上記以外にも事故や人身事故による加点の規定もあります。
もし特類の義務講習を受けておらず期限切れ状態になっていても「消防設備士講習受講義務違反」は講習区分毎に加点される為、措置点数は1~7類の免状については加点されません。
【補足①】消防設備士免状の講習区分
消防設備士免状の講習区分は以下の4つに分かれています。
講習区分 | 対象となる消防設備士の種類 | 消防用設備等の種類 |
特殊消防用設備等 | 特類の消防設備士 | 特殊消防用設備等 |
消火設備 | 第1類・第2類および第3類の消防設備士 | 屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・水噴霧消火設備・屋外消火栓設備 泡消火設備 不活性ガス消火設備(二酸化炭素消火設備)・粉末消火設備・ハロゲン化物消火設備 |
警報設備 | 第4類および第7類の消防設備士 | 自動火災報知設備・消防機関へ通報する火災報知設備・ガス漏れ火災警報設備 漏電火災警報器 |
避難設備・消火器 | 第5類および第6類の消防設備士 | 金属製避難はしご・救助袋・緩降機 消火器 |
かしこく受けよう!消防設備士の義務講習、消防設備士義務講習を受けない人の割合は◯◯%
【補足②】講習受講義務違反だけでは免状返納命令されない理由
義務講習を受けなかっただけでは措置点数の合計は最大で15点にしかならない為、罰則である免状返納命令の対象にはなりません。
消防予第67 号 消防設備士免状の返納命令に関する運用について (通知)
消防設備士講習受講義務違反については、消防法施行規則第 33 条の 17に定める講習の受講期限までに受講しない場合に、それぞれ当該期限が経過したとき違反行為があったものとする。
また、その後1 年以内に受講する機会があるにもかかわらず受講しなかった場合は、1年を経過したとき再度違反行為があったものとし、それ以降においてなお受講しない場合も同様とする。
もし消防設備士の義務講習を受けなかった場合、加点方法スキームは以下の通りです。
step1違反点数5点
まず講習の受講期限までに受講しなかった場合には、その受講期限を経過したときに違反行為があったものと(違反点数5点が加点)されます。
step2違反点数10点
その後1年以内に受講の機会があったにも関わらず受講しなかった場合には、1年を経過するごとに再度違反行為があったもの(違反点数=5点+5 点=10 点が加点)とされます。
step2違反点数15点
義務講習を受けずに3年経過すると、違反点数の合計が15点まで加点されます。
step23年でリセット
過去3年以内におけるその他の違反行為に係る違反点数を合計した点数が免状返納命令の措置点数の合計として扱われる為、合計15点になった年(3年経過時)に措置点数がリセットされて0点に戻ります。
期限切れの消防設備士免状はどうすればいい?
消防設備士の義務講習を受けていない場合、期限切れ(≒実務で使用できない)状態になります。
ここで、消防設備士免状の期限が切れた場合の対処方法として3つ挙げられます。
- そのまま放置する(※あまり大きな声では言えませんが…)
- 義務講習を受ける
- 免状を返納する
ただし実務に携わるプロの消防設備士の場合、免状の期限切れ(講習未受講)状態だと仕事ができない為、速やかに講習を受ける必要があります。
だって消防法で ❝義務講習❞ って言われてるんやから!
ただし義務講習を受けなかったからといって、それだけでは罰則適用の対象には該当しません。
つまり義務講習を受けていない(=免状の期限切れ)は消防法違反ではあるが、罰則の対象ではないグレーゾーンのまま放置できるルールとなっています。
罰則適用のスキーム
消防設備士の違反行為対する違反処理は、消防長が「消防設備士違反処理報告書」を違反があった地区を管轄する都道府県知事(=違反地知事)に提出して報告するスキームとなっています。
東京消防庁職員の方々が消防設備士講習”未受講”であったニュースについて
もし違反者が他の都道府県知事から免状の交付を受けている場合には、さらに違反地知事から「消防設備士違反事項通知書」を免状交付知事に提出し、消防長からの「消防設備士違反処理報告書」による通知をたらい回しにします。
現在、消防設備士に対する違反処理よりも防火対象物(消防用設備等の設置義務が生じている建物)に対する違反処理の方が優先して行われている状況でしょう。
県への消防設備士違反の処理報告書
消防長が「消防設備士違反の処理報告書」を都道府県知事に提出することで、都道府県知事が違反行為に係わる違反点数および措置点数を算定します。
その後、免状交付知事によって、免状を交付した消防設備士の「消防設備士違反処理台帳」が整備されます。
免状交付知事は消防設備士違反処理台帳を確認のうえ、措置点数が20 点以上となるときは違反行為が報告された消防設備士に対して「聴聞(ちょうもん)」を行います。
聴聞(ちょうもん)とは‥行政機関が、行為・決定をする場合に、相手方その他の関係人に意見を述べる機会を与えること。
免状交付知事は聴聞の結果、免状返納命令の決定をしたときは、速やかに当該違反者に免状返納命令通知書により処分内容その他必要事項を通知します。
消防設備士免状の返納命令から1年を経過しない者には、消防設備士の免状が交付されません。
もし消防設備士の免状を返納することになったら、そこから1年間はプロとして商売ができないことを覚えておきましょう。
免状返納命令の前例は?
これまで、消防設備士が違反処理を受けた事例を聞いたことがありません。
(※もし具体例を、ご存じの方いらっしゃいましたら可能な範囲で教えて頂きたいです。)
講習未受講による消防設備士免状の期限切れ(≒実務で使用できない)状態だけでは免状返納命令の対象にはならず、かつ罰則の対象であっても現在まだ消防設備士に対する違反処理の前例自体が少ない状況です。
上記以外に新しい情報など分かり次第、随時追記して解説を更新していきます。
その他、質問など御座いましたらボちゃんねる(掲示板)へ投稿、もしくはLINEオープンチャット「消防設備士Web勉強会」上でご連絡下さいませ。
まとめ
- 消防設備士の義務講習を受けずに違反(期限切れ)しても、それだけでは罰則(免状返納命令)の対象にはならなかった。
- 消防設備士免状は、過去3年以内の違反行為によって加点された点数の合計が ❝20点❞ に達した免状ごとに返納命令対象となった。
- 消防設備士講習受講義務違反の点数は、それぞれ免状の講習区分ごとに5点が加点され、義務講習を受けなかっただけでは措置点数の合計は最大で15点にしかならなかった。