【過去問】粉末消火器|消防設備士乙種6類【消火器の構造・機能】
中身が「ピンク色の粉」の消火器が主流なんです!
これから消防設備士の試験を受ける方、既に消防設備士の免状を取得して業務に従事されている方も今一度「粉末消火器」について確認しておきましょう!
目次
ブログ著者の紹介
管理人は消防法に基づく消防設備士および危険物取扱者の免状を共に全類取得している為、消火器の構造・機能もゴリの「ハエたたき」くらいマスターしています。
皆さんの身近にある粉末消火器について、その構造・機能を隅々まで解説していきます!
粉末消火器とは
現在において粉末消火器は、最も普及している消火器です。
英語では“Dry Chemical Fire Extinguisher”(ドライ・ケミカル・ファイヤー・エクスティングウィッシャー)といいます。
加圧式と蓄圧式
粉末消火器は「加圧式」と「蓄圧式」の2種類があります。
加圧式粉末消火器は本体容器が劣化すると破裂する危険性がある為、現在は蓄圧式粉末消火器が主流です。
加圧式消火器の構成部品の役割
加圧式に設けられているカッターは、加圧ガス容器の封板を破りガスを通気させるものです。
紙パックの牛乳などに先端を斜に切ったストローを、差込口に『プスッ』っとするのと似ています。
加圧式粉末消火器の放射
加圧式粉末消火器が放射する際の動作は、以下の通りです。
- カッターがガス容器封板を破り、ガス導入管にガスが流れる。
- ガスの勢いで、逆流防止装置が開く。
- 加圧された薬剤が粉上り防止封板を破く。
- 放射口に薬剤が送られる。
蓄圧式粉末消火器には、これらの加圧ガス導入管やガス導入管に設けられる逆流防止装置も当然ありません。
蓄圧式粉末消火器の開閉バルブ
蓄圧式粉末消火器は本体容器内にガスが充填されており、レバーを握ることで開閉バルブが開いて薬剤が放射されます。
蓄圧式粉末消火器は開閉バルブにて外気と遮断されているので、加圧式粉末消火器のようにサイホン管に粉上り防止封板を付けることもないです。
充てんガスには窒素のみ可能です(※圧縮空気で充てんすると圧縮空気内の酸素が火災の燃焼を促進させることになるので、粉末消火器の圧力源には圧縮空気を使用することはできません。)。
粉末消火器の使用温度範囲
蓄圧式の粉末消火器の使用温度範囲は−30℃〜40℃です。
マツ毛が凍るほどの寒冷地でも使用できます。
粉末消火器の適応火災
リン酸塩類等が主成分のものならA・B・C火災全てに適応します。
粉末消火薬剤の分類
粉末消火薬剤は以下の表のように第1種から第4種に分類されています。
種 別 | 消火剤の主成分 | 一般的呼称 | 適応火災 | 着色 |
第1種 | 炭酸水素ナトリウム(Na) | 重曹薬剤 | B・C | 白色または淡緑色 |
第2種 | 炭酸水素カリウム(K) | カリ薬剤 | B・C | 紫色 |
第3種 | リン酸塩類等(ABC) | ABC薬剤 | A・B・C | 淡紅色 |
第4種 | 炭酸水素カリウムと尿素の反応物(KU) | モネックス | B・C | 淡青色または灰色 |
注)りん酸塩類等を除く他の消火薬剤の着色は、日本消火器工業会の自主基準によるものです。
消防設備士乙6の試験では主成分の化学物質名や薬剤の色などが出題される事もある為、正確に暗記しておいたほうが良いでしょう。
それでは以下の「粉末消火器」に関する消防設備士試験の過去問にチャレンジして、これまでの内容が頭に入っているかを確認しましょう!
消防設備士試験の過去問(構造・機能)
粉末消火器の消火薬剤と適応火災の組合せで、正しいものはどれか。
最も一般的な粉末消火器といえば、淡紅色(ピンク色)の薬剤のABC粉末消火器です。
これを念頭において(1)、(3)は淡紅色じゃないのにA火災が入っているので誤り。
(4)に関しては、B火災、C火災に適応するので誤り。
種 別 | 消火剤の主成分 | 一般的呼称 | 適応火災 | 着色 |
第1種 | 炭酸水素ナトリウム(Na) | 重曹薬剤 | B・C | 白色または淡緑色 |
第2種 | 炭酸水素カリウム(K) | カリ薬剤 | B・C | 紫色 |
第3種 | リン酸塩類等(ABC) | ABC薬剤 | A・B・C | 淡紅色 |
第4種 | 炭酸水素カリウムと尿素の反応物(KU) | モネックス | B・C | 淡青色または灰色 |
粉末薬剤の種類全体でみるとA火災に適応していることの方がレアです。
粉末消火器の消火薬剤の性状及び適応性について、誤っているものは次のうちどれか。
「粉末消火薬剤は基本B、C火災に適応、リン酸塩類等(淡紅色)薬剤だけA、B、C火災に適応する」と覚えておけば、(1)はリン酸塩類等(リン酸アンモニウム)なのでABC適応で正しい。
(2)(4)は基本のBC適応なので正しい。(3)はリン酸塩類等薬剤では無いのにAが適応に入っているので誤り‥と答えを導くことができる。
粉末消火器の消火薬剤名と消火薬剤の成分の組合せとして、正しいものは次のうちどれか。
(1)ABCはリン酸アンモニウムのこと。
覚えるときに『たしか、なんとかアンモニウムだったような…』みたいな感じだと引っかかる問題。
(4)は正しい。
- “ABC”は、リン酸塩類等(リン酸アンモニウム)だが、これだけ適応火災が略称になってる。
- “K”は、炭酸水素カリウム[カリウム:K]
- “KU”は、炭酸カリウムと尿素の反応物[尿素:U (urea )]
- “Na”は、炭酸水素ナトリウム[ナトリウム:Na]
粉末消火器(蓄圧式)の構造について、最も不適当なものは次のうちどれか。
粉上り防止封板が付いているのは、開放式(開閉バルブが無いもの)の加圧式粉末消火器です。
粉上り防止封板は、加圧式粉末消火器がサイホン管からホース先端まで常時開放されていることから、使用時以外に粉末薬剤流出防止および異物や湿気などが内部に入り込まないためのものです。
開閉バルブが付いている蓄圧式消火器に粉上り防止封板は、不要である。
蓄圧式粉末消火器について、誤っているものは次のうちどれか。
粉末消火器の場合、消火薬剤が放射する時に粉末消火薬剤と圧縮ガスが混同した状態で放射されます。
圧縮空気で充てんすると圧縮空気内の酸素が火災の燃焼を促進させることになるので、粉末消火器の圧力源には圧縮空気を使用することはできません。
よって、不活性ガス(化学的に安定で、他の元素あるいは化合物と容易に反応しないガス)である窒素ガスを使用します。
粉末消火器(蓄圧式)の使用圧力の範囲として、最も適正なものは次のうちどれか。
蓄圧式粉末消火器の使用圧力の範囲は「0.7MPa以上〜0.98MPa未満」です。
消火器に関する数値語呂暗記法の第56条に、粉末消火器(蓄圧式)の使用圧力の範囲の覚え方は『蓄(チク)圧(アツ)0.7(オンナ)〜0.98(オクバ)』は「チクッとしたアツさを、女は奥歯で感じた」(これと同等の覚えやすい語呂あわせがあればそちらでもよい)とすること、と定められている。※もちろんウソである。
蓄圧式の粉末消火器の構造又は機能について、最も不適当なものは次のうちどれか。
蓄圧ガスを充填する手順は以下の3ステップです。
step1ホース取り付け口に充填ガスのボンベを繋ぐ
step2レバーを握った状態で窒素ガスを注入する
step3サイホン管を通じて内部にガスが入る
逆流防止装置が付いていたら充填ができないので、ダメ。
蓄圧式粉末消火器の構造又は機能について、正しいものは次のうちどれか。
(1)手さげ式〜小さめの車載式の加圧式粉末消火器は一般的に二酸化炭素だが、蓄圧式粉末消火器は窒素ガスです。
(2)蓄圧式消火器(二酸化炭素・ハロン1301除く)の使用圧力範囲は0.70MPa〜0.98MPa。
(4)蓄圧式粉末消火器には開閉バルブが設けられているため粉上がらないので防止の必要はないから、粉上り防止用封板は不要です。
手さげ式ガス圧粉末消火器の説明で誤っているものは次のうちどれか。
サイホン管の下部には「粉上り防止用封板」が取り付けてあります。
手さげ式ガス加圧粉末消火器の構造について、誤っているものは次のうちどれか。
(1)低温では加圧用ガスの液化炭酸ガスが十分な圧力を供給出来ないので蓄圧式(−30℃)よりも低温に弱いと思われる。
(3)は、例えばまだ中身残ってるので、また今度火事になったらその時使おう』って意味では誤り。もちろん消火したと思ってレバーの握りを離してホッとしていたら再燃してきた炎に対して追加でまた再放射する分には構いません。
粉末消火器の付属品の機能について次のうち誤っているものはどれか。
ガス導入管の先端には「逆流防止装置」が付いています。
ガス加圧式粉末消火器の構成部品で、省令で取付を義務付けているものは次のうちどれか。
消火器の技術上の規格 第13条の四号に、“…本体容器内の圧力を完全に減圧することができる減圧孔又は減圧溝を設けること” とあります。
他については、取付けを義務付ける文言はありません。
大型粉末消火器(ガス加圧式)の構造について、最も不適切なものは次のうちどれか。
小容量は二酸化炭素、大容量が窒素ガス。
二酸化炭素は場合により“炭酸ガス”や“液化炭酸ガス”や“CO₂”など色々に表現されるが同じことをいっていると思ってよい。
【補足】二酸化炭素の呼称について、厳密には以下の違いがあります。
- 二酸化炭素(CO₂)‥物質名
- 炭酸ガス‥気体の二酸化炭素を呼ぶ際の呼称
- 液化炭酸ガス‥液体の二酸化炭素を呼ぶ際の呼称(マイナス56.6℃、圧力が少なくとも0.518MPa以上(大気圧では存在しない))
粉末消火器 (大型を除く。) の構造について、一般的でないものは次のうちどれか。
ガス加圧式のガス導入管には逆流防止装置、サイホン管には粉上り防止封板が装着されています。
なお、ろ過網が装着されているのは化学泡消火器だけです。
(2)(3)蓄圧式はレバーで放射を停止出来るので無駄に薬剤まみれにならなくて便利です。
加圧式の開放式は加圧用ガスの全量出し切るまで薬剤の放射が止まらりませんが、本体をひっくり返せばガスだけ放出することができます。
消防設備士「過去問テスト」は、その名の通り“過去に出た問題” のテストであり、ブログでお馴染みの管理人が過去問に関する情報収集を積み重ね、その中からピックアップして過去問ベースの模擬試験を作成したものです。
上記以外に新傾向問題の情報など提供あり次第、随時追記して解説を更新していきます。
その他、質問など御座いましたらボちゃんねる(掲示板)へ投稿、もしくはLINEオープンチャット「消防設備士Web勉強会」上でご連絡下さいませ。
まとめ
- 加圧式粉末消火器は本体容器が劣化すると破裂する危険性がある為、現在は蓄圧式粉末消火器が主流であった。
- 蓄圧式粉末消火器は本体容器内にガスが充填されており、レバーを握ることで開閉バルブが開いて薬剤が放射された。
- 粉末消火薬剤は以下の表のように第1種から第4種に分類されていた。