火災報知器と連動している機器
目次
自動火災報知設備の受信機にある「移報接点」と接続される各機器
火災の発生を初期に知らせて逃げ遅れによる被害を予防する自動火災報知設備は、大元の制御盤である受信機が火災信号を感知すると、音響ベルやスピーカーより警報音声が鳴動するというシンプルな仕組みです。
そして、この受信機内に火災信号を受け取った場合にのみ電気を送る端子である「移報接点」があり、連動させたい各機器を接続する事で自動火災報知設備と同時に動作させられる仕様になっており、あらゆる機器を連動させることで追加の機能を得られます。
では、移報接点に接続されるケースのあるものを確認していきましょう。
①誘導灯信号装置
誘導灯信号装置は「音声・点滅機能付き誘導灯」等の制御盤であり、自動火災報知設備と連動しています。
ここで一つ「接点」について補足です。接点について簡潔に述べると「+極と-極が“くっつく”もしくは“離れる”といった接触状態によってON/OFFを切り替える役割を果たすもの」です。
この接点には「有電圧接点」と「無電圧接点」があり、「有電圧接点」は電線に電圧が印加されている接点を指します。さらに、この有電圧接点には「A接点」と「B接点」の二種類があり、「A接点」は常時+極と-極が離れており、ONになるとくっつきます。
一方、「B接点」は常時くっついており、ONになると“離れる”機構になっています。
自動火災報知設備の受信機内には、一般的に「A接点」と「無電圧接点」の端子があります。一方、誘導灯信号装置内には「B接点」の端子台があり、各音声誘導・点滅機能付き誘導灯と接続されています。
その為、「B接点」で繋がっている「誘導灯信号装置」―「音声誘導・点滅機能付き誘導灯」間の電圧が、例えば電線が切れる等が起こって無くなると、音声誘導・点滅機能付き誘導灯が作動する事となります。
実際にあった誘導灯信号装置のトラブル
以前、既設建物の改装をしている工事現場にて音声誘導・点滅機能付き誘導灯が眩しいフラッシュと共に『ピンポーン!ピンポーン!非常口はこちらです!』と鳴り響き誘導灯信号装置上で復旧ボタンを押しても鳴りやまないというトラブルが起こった事がありました
その原因は何らかの理由で誘導灯信号装置内のヒューズが切れていた為、「B接点」である音声誘導・点滅機能付き誘導灯にとって+極と-極が“離れる”のと同様の働きをしていたからでした。
②火災通報装置
火災通報装置は所轄消防署「直通」の電話であり、消防法上で老人ホーム等の用途に該当する建物については自動火災報知設備との連動が義務付けられています。
実際に起こっている火災通報装置のトラブル
この自動火災報知設備と火災通報装置の連動義務は数年前に法改正に基づいています。
それに伴い、自動火災報知設備と火災通報装置が連動して直ぐに119番へ連絡される様になった為、誤作動時にも消防車が現場に来てしまうという事態が急増しました。
安全性が向上した半面、消防士さんが消防ポンプ車に乗って出動及び現地にて状況確認するという労働負担もまた確実に急増しています。
防排煙設備連動制御盤
防排煙設備連動制御盤は「防火戸」や「防火シャッター」の制御盤であり、自動火災報知設備と連動しているものがあります。
実際に起こり得るトラブル
万が一、建物内にいる時に防火戸・防火シャッターが作動すると『‥閉じ込められた!?』とパニックに陥ってしまう事が予想されます。その際には慌てずに、その閉鎖した防火戸・防火シャッター付近にある「くぐり戸」という扉より逃げられる様になっています。
有事の際に適切な行動が取れるよう、頭の片隅にでも置いておいて下さいませ。
カットリレー
カットリレーとは、自動火災報知設備より火災信号を受け取った際に、電源供給を遮断して音響機器を停止させる為の設備であり、コンセント接続口が付いています。
実際に起こり得るカットリレーのトラブル
例えば、バックミュージックに音響機器を用いて歌って踊る様な地下アイドルのライブ中に自動火災報知設備が誤作動してカットリレーが働いてしまうと、演奏が中断されてしまってステージが台無しになってしまいます。
電気錠のかかっているドア等
自動ドアや遠隔操作で電気的に開閉操作が可能な扉等は、停電してしまうと開閉不可能になってしまう為、火災発生に伴って起こり得る停電を想定して自動火災報知設備と連動して自動的に“開”の状態になるものがあります。消防検査の際には、この所謂「パニックオープン」が適切に設定されているかを、現地の作動試験を実施して必ず確認します。
停電時に開けられる仕組みになっていれば良いので、自動火災報知設備と連動した電気的な制御ではなく、非常時にのみ手動でサムターンが操作可能になっている扉もあります。また以前、自動ドアでも機種によっては非常時に強く押すと全開するものも見かけたことがありました。
警備会社
警備会社と契約されている建物の場合、自動火災報知設備が作動すると警備会社へ通報される様に設定されている事が多いです。
実際にあったトラブル
消防用設備点検時には事前に自動火災報知設備の受信機付近に警備会社の連絡先が掲げてあるので、そこへ連絡してから作業を開始します。
その為、初めて行く現場の場合、警備会社に連動していないかの確認を必ず行います。
ところが以前、受信機内の電線に表示が無く、かつ警備会社の連絡先が見つからなかった為、そのまま自動火災報知設備の試験を実施した時の事です。作業開始より暫く経ってから、当該現場に警備会社の警備員さんが駆け付けておりました。
よく見ると自動火災報知設備の受信機付近では無く、少し離れた位置に連絡先の表示がありました。
改修工事に入った現場でしたが、今後同じ様な事が起こらない様に受信機本体の分かり易い位置に警備会社に移報している旨を記載しておきました。
エレベーター
エレベーターも自動火災報知設備と連動しているものがあります。
それらは、自動火災報知設備が作動した際に「火災時管制運転」というモードに切り替わり、強制的に避難階へ移動して扉が開き、それ以降は使用できなくなる仕様になっています。
こちらも、現在は消防検査時に必ず作動試験による確認がされます。
以前「エレベーター火災時呼戻釦」について言及する機会があったのですが、その際に誤って「非常用エレベーター呼戻釦」について言及してしまい大赤っ恥をかいた事が御座いました。
それらはエレベーターの付近に自動火災報知設備の発信機と同じ形状のボタンが設置されていて名称も外観も似ていてややこしいのですが、その役割には二種類あり「非常用エレベーター呼戻釦」と「エレベーター火災時呼戻釦」は明確に役割が異なります。
まず、「非常用エレベーター呼戻釦」は消防隊の方が押して避難階にエレベーターを下ろす為の物であり、降りてきたカゴに消防隊の方が乗り込み「1次消防運転」というモードでエレベーター内の操作で目的階へ行き、消火活動等を行える仕組みになっています。
一方、「エレベーター火災時呼戻釦」は自動火災報知設備と連動してエレベーターが “自動” で避難階へ行き扉が開くという、上述したパニックオープンの “手動” タイプともいえる様なもので、非常用エレベーターでなく一般のエレベーターに設置されています。
SNS上でこの様な質問を受けた際の返答は、確実に分かるもの以外は私だけでなく社内でも聞いた後に発信するのですが、社内の勤続三十年以上のベテラン勢でも知見を持っていない様なケースがあるので情報精査の方法もより工夫しなければ痛い目に遭うという事がわかりました。
まとめ
- 受信機内に火災信号を受け取った場合にのみ電気を送る端子である「移報接点」があり、連動させたい各機器を接続する事で自動火災報知設備と同時に動作させられる仕様になっていた。
- 「B接点」で繋がっている「誘導灯信号装置」―「音声誘導・点滅機能付き誘導灯」間の電圧が、例えば電線が切れる等が起こって無くなると、音声誘導・点滅機能付き誘導灯が作動した。
- 自動火災報知設備と火災通報装置が連動して直ぐに119番へ連絡される様になった為、誤作動時にも消防車が現場に来てしまうという事態が急増した。