防火管理者の選任が不要な建物の規模は?収容人員の算定方法も解説!

防火管理者って正直やりたくないので‥選任がいらない様にできないのかな?
建物の用途によって防火管理者の選任義務の有無を判定する収容人員の算定方法が違うので、もしかしたら省略できるかも‥。

防火管理者の選任義務が生じる防火対象物

防火管理者の選任義務の有無は、建物の収容人員の数で決まります。

主に特定防火対象物(下表の背景色が赤の用途)は30人以上、非特定防火対象物は50人以上の収容人数で防火管理者の選任が必要です。

用途によって防火管理者を選任するかどうかの基準も異なるワケですか。
火災リスクは建物の使われ方によって変わりますから、理にかなったルールでしょう。

※ただし⑹項ロの福祉施設等および⑹項ロを含む複合用途については10人以上で防火管理者の選任義務が生じるので注意。

防火管理者の選任を要する収容人数の基準

消防法施行令別表第1に掲げる
防火対象物の区分
選任を要する
収容人数
甲種防火対象物 乙種防火対象物
イ 劇場、映画館、演芸場又は観覧場 30人
以上
300㎡
以上
300㎡
未満
ロ 公会堂又は集会場
⑵  イ キャバレー、カフェー、ナイトクラブその他これらに類するもの 30人
以上
300㎡
以上
300㎡
未満
ロ 遊技場又はダンスホール
ハ 性 風 俗 関 連 特 殊 営 業 を 営 む 店 舗 等
ニ カ ラ オ ケボ ッ ク ス そ の 他 遊 興 の た め の 設 備 又 は 物 品 を 個 室
に お い て 客 に 利 用 さ せ る 役 務 を 提 供 す る 業 務 を 営 む 店 舗 等
イ 待 合 、 料 理 店 そ の 他 こ れ ら に 類 す る も の 30人
以上
300㎡
以上
300㎡
未満
ロ 飲 食 店
百貨店、マ-ケットその他の物品販売業を営む店舗又は展示場 30人
以上
300㎡
以上
300㎡
未満
イ 旅館、ホテル又は宿泊所その他これらに類するもの 30人
以上
300㎡
以上
300㎡
未満
ロ 寄 宿 舎 、 下 宿 又 は 共 同 住 宅 50人
以上
500㎡
以上
500㎡
未満
イ 病 院 、 診 療 所 又 は 助 産 所 30人
以上
300㎡
以上
300㎡
未満
ロ 特 別 養 護 老 人 ホ ー ム 、 有 料 老 人 ホ ー ム 、 自 力 避 難 困 難
者 が 入 所 し て い る 小 規 模 社 会 福 祉 施 設 等
10人
以上
300㎡
以上
300㎡
未満
ハ 老人福祉施設、有料老人ホーム((6)項ロに該当するものを除
く。)、障害福祉サービス事業を行う施設等
30人
以上
300㎡
以上
300㎡
未満
ニ 幼 稚 園 、 盲 学 校 、 聾 学 校 又 は 養 護 学 校 30人
以上
300㎡
以上
300㎡
未満
小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、高等専門学校、大学、
専修学校、各種学校その他これらに類するもの
50人
以上
500㎡
以上
500㎡
未満
図書館、博物館、美術館その他これらに類するもの 50人
以上
500㎡
以上
500㎡
未満
イ 公衆浴場のうち、蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類するもの 30人
以上
300㎡
以上
300㎡
未満
ロ 蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類するもの以外の公衆浴場 50人
以上
500㎡
以上
500㎡
未満
車 両 の 停 車 場 50人
以上
500㎡
以上
500㎡
未満
神 社 、 寺 院 、 教 会 そ の 他 こ れ ら に 類 す る も の 50人
以上
500㎡
以上
500㎡
未満
イ 工 場 又 は 作 業 場 50人
以上
500㎡
以上
500㎡
未満
ロ 映画スタジオ又はテレビスタジオ
イ 自 動 車 車 庫 又 は 駐 車 場 50人
以上
500㎡
以上
500㎡
未満
ロ 飛行機又は回転翼航空機の格納庫
倉 庫 50人
以上
500㎡
以上
500㎡
未満
令別表第1(1)項から(14)項に該当しない事業場 50人
以上
500㎡
以上
500㎡
未満
イ 複合用途防火対象物のうち、その一部が(6)項ロに掲げる防火対
象物の用途に供されているもの
10人
以上
300㎡
以上
300㎡
未満
イ 複合用途防火対象物のうち、その一部が(1)項から(4)項まで、(5)
項イ、(6)項イ、ハ、ニ又は(9)項イに掲げる防火対象物の用途に
供されているもの
30人
以上
300㎡
以上
300㎡
未満
ロ イに掲げる複合用途防火対象物以外の複合用途防火対象物 50人
以上
500㎡
以上
500㎡
未満
重要文化財等 50人
以上
500㎡
以上
500㎡
未満

また、防火対象物の規模により「甲種防火対象物」と「乙種防火対象物」に区分されており、選任条件となる講習区分が異なります。

  • 甲種防火対象物‥甲種防火管理講習の課程を修了した者等
  • 乙種防火対象物‥乙種または甲種防火管理講習の課程を修了した者等

甲種防火管理者講習を受けておけば特に気にする必要は無い部分です。

では防火管理者の選任義務が生じる条件が収容人員の数であると分かった為、次に収容人員が何名になるのかを計算する方法について解説していきます。

収容人員の数え方

収容人員の算定方法は消防法施行規則第1条の3〔収容人員の算定方法〕にて規定されており、防火対象物の区分(建物の用途)によって以下の通り異なります。

防火対象物の区分 算定方法
令別表第1(1)項に掲げる防火対象物
(劇場、映画館等/公会堂、集会場等)
次に掲げる数を合算して算定する。
1 従業者の数
2 客席の部分ごとに次のイからハまでによつて算定した数の合計数
イ 固定式のいす席を設ける部分については,当該部分にあるいす席の数に対応する数。
この場合において,長いす式のいす席にあつては,当該いす席の正面幅を 0.4 mで除して得た数(1未満の端数は切り捨てるものとする。)とする。
ロ 立見席を設ける部分については,当該部分の床面積を 0.2 ㎡で除して得た数
ハ その他の部分については,当該部分の床面積を 0.5 ㎡で除して得た数
令別表第1(2)項および(3)項に掲げる防火対象物
(2)項
・キャバレー
・カフェー
・カラオケ BOX 等
(3)項
・待合、料理店
・飲食店 等
遊技場 次に掲げる数を合算して算定する。
1 従業者の数
2 遊技のための機械器具を使用して遊技を行うことができる者の数
3 観覧,飲食又は休憩の用に供する固定式のいす席が設けられている場合は,当該いす席の数に対応する数。この場合において,長いす式のいす席にあつては,当該いす席の正面幅を 0.5mで除して得た数(1未満の端数は切り捨てるものとする。)とする。
その他のもの 次に掲げる数を合算して算定する。
1 従業者の数
2 客席の部分ごとに次のイ及びロによつて算定した数の合計 数
イ 固定式のいす席を設ける部分については,当該部分にあるいす席の数に対応する数。
この場合において,長いす式のいす席にあつては,当該いす席の正面幅を 0.5 mで除して得た数(1未満の端数は切り捨てるものとする。)とする。
ロ その他の部分については,当該部分の床面積を3㎡で除して得た数
令別表第1(4)項に掲げる防火対象物
(物販販売店舗)
次に掲げる数を合算して算定する。
1 従業者の数
2 主として従業者以外の者の使用に供する部分について次のイ及びロによつて算定した数の合計数
イ 飲食又は休憩の用に供する部分については,当該部分の床面積を3㎡で除して得た数
ロ その他の部分については,当該部分の床面積を4㎡で除して得た数
令別表第1(5)項に掲げる防火対象物 イに掲げるもの
(旅館、ホテル)
次に掲げる数を合算して算定する。
1 従業者の数
2 宿泊室ごとに次のイ及びロによつて算定した数の合計数
イ 洋式の宿泊室については,当該宿泊室にあるベッドの数に対応する数
ロ 和式の宿泊室については,当該宿泊室の床面積を6㎡(簡易宿所及び主として団体客を宿泊させるものにあつては,3㎡)で除して得た数
3 集会,飲食又は休憩の用に供する部分について次のイ及びロによつて算定した数の合計数
イ 固定式のいす席を設ける部分については,当該部分にあるいす席の数に対応する数。
この場合において,長いす式のいす席にあつては,当該いす席の正面幅を 0.5 mで除して得た数(1未満の端数は切り捨てるものとする。)とする。
ロ その他の部分については,当該部分の床面積を3㎡で除して得た数
ロに掲げるもの
(共同住宅、寄宿
舎)
居住者の数により算定する。
令別表第1(6)項に掲げる防火対象物 イに掲げるもの
(病院、診療所)
次に掲げる数を合算して算定する。
1 医師,歯科医師,助産師,薬剤師,看護師その他の従業者の数
2 病室内にある病床の数
3 待合室の床面積の合計を3㎡で除して得た数
ロ及びハに掲げるもの
(社会福祉施設、その他の社会福祉施設)
従業者の数と,老人,乳児,幼児,身体障害者,知的障害者その他の要保護者の数とを合算して算定する。
ニに掲げるもの
(幼稚園、特別支援学校等)
教職員の数と,幼児,児童又は生徒の数とを合算して算定する。
令別表第1(7)項に掲げる防火対象物
(学校)
教職員の数と,児童,生徒又は学生の数とを合算して算定する。
令別表第1(8)項に掲げる防火対象物
(図書館、博物館)
従業者の数と,閲覧室,展示室,展覧室,会議室又は休憩室の床面積の合計を3㎡で除して得た数とを合算して算定する。
令別表第1(9)項に掲げる防火対象物
(蒸気浴場、熱気浴場、公衆浴場等)
従業者の数と,浴場,脱衣場,マッサージ室及び休憩の用に供する部分の床面積の合計を3㎡で除して得た数とを合算して算定する。
令別表第1(11)項に掲げる防火対象物
(神社、寺院、教会等)
神職,僧侶,牧師その他従業者の数と,礼拝,集会又は休憩の用に供する部分の床面積の合計を3㎡で除して得た数とを合算して算定する。
令別表第1(10)項及び(12)項から
(14)項までに掲げる防火対象物
(10)項 停車場
(12)項 工場、作業場、スタジオ等
(13)項 車庫、駐車場、航空機格納庫
(14)項 倉庫
従業者の数により算定する。
令別表第1(15)項に掲げる防火対象物
(事務所等)
従業者の数と,主として従業者以外の者の使用に供する部分の床面積を3㎡で除して得た数とを合算して算定する。
令別表第1(17)項に掲げる防火対象物
(文化財)
床面積を5平方メートルで除して得た数により算定する。

令別表第1(16)項の複合用途および(16 の 2)項の地下街について、収容人員の算定方法は同表各項の用途と同一の用途に供されている当該防火対象物の部分をそれぞれ一の防火対象物とみなして前項の規定を適用した場合における収容人員を合算して算定する方法とする。

例えば飲食店の用途では「固定式のいす」にすると、いすの数になるので可動式にして床面積を3㎡で割る‥って計算すると収容人員の数を減らせる場合があります。
設計段階でギリギリ収容人員の算定で30人を超えそうな時、固定式のいすにしないことで、防火管理者の選任義務や避難器具の設置義務を免れる場合ありますね。

この様に収容人員の算定方法には若干の柔軟性がありますから、きちんとルールを把握しておけば初期費用や維持管理コストを抑えられる可能性もあります。

まとめ

  • 防火管理者の選任義務の有無は建物の収容人員の数で決まり、特定防火対象物(下表の背景色が赤の用途)は30人以上、非特定防火対象物は50人以上の収容人数で防火管理者の選任が必要であった。
  • 収容人員の算定方法は消防法施行規則第1条の3〔収容人員の算定方法〕にて規定されており、防火対象物の区分(建物の用途)によって以下の通り異なった。
  • 収容人員の算定方法には若干の柔軟性があり、きちんとルールを把握しておけば初期費用や維持管理コストを抑えられる可能性もあった。