【※最大1億円の罰金】防火管理者に責任は?消防法上の罰則について

もし消防法を違反してしまった場合‥防火管理者の責任って問われるの?
防火管理者というよりは、主に「建物の管理権原者」が罰則の対象になります。

管理権原者とは

防火対象物又はその部分における火気の使用又は取扱いその他法令に定める防火の管理に関する事項について、法律・契約又は慣習上当然行うべき者のこと。

つまり管理権原者には「建物の所有者(オーナー)や、建物を借りて事業をしている事業主」が該当します。

参考管理権原者とは誰を指すの?

防火管理者に選任される人は主に以下の3種類でしょう。

  1. 建物の所有者(オーナー)本人
  2. 建物を借りている事業主もしくは、そこで管理監督の地位を有する人
  3. 建物に入っている管理会社の従業員やマンションの管理組合の人

特に建物の所有者(オーナー)本人は防火管理者を選任したからといって、その防火管理者が防火管理業務を怠っていた場合には所有者(オーナー)側に責任が生じる仕組みなので注意しましょう。

消防署の違反処理スキーム

所轄消防署が建物の管理権原者に対して消防法を遵守するように指導する違反処理は、以下の様な流れで進みます。

警察や検察に告発する前に、消防署から「命令」という厳しい指導が入ります。
しかし、この「命令」がなくても罰則の対象となる消防法違反もありますね。

ここでは「命令違反以外の罰則」と「命令違反に対する罰則」の2つに分けて話を進めていきます。

命令違反以外の罰則

まず、消防署から「命令」という厳しい指導が入らなくても警察や検察への告発対象となる罰則について解説します。

防火管理者の選任・解任の届出

違反条文 第 8 条第 2 項
違反概要 防火管理者の選任・解任の届出を怠った場合
罰則規定 第 44 条第 8 号
罰則内容 30 万円以下の罰金又は拘留

そもそも防火管理者の選任や解任をしていなかった場合の罰則ですか。
防火管理者の選任義務が生じる建物かどうか今一度確認しておきましょう!

ちなみに後述しますが「防火管理者選任命令違反」という、より厳しい指導である命令をされた後の違反もあります。

つまり、こちらは命令に至るまでにワンクッション置く為の罰則規定であると言えるでしょう。

防火対象物点検結果の未報告または虚偽の報告

違反条文 第 8 条の 2 の 2第1項
違反概要 防火対象物の点検結果を報告せず又は虚偽の報告をした場合
罰則規定 第 44 条第 11 号、第 45 条第 3 号
罰則内容 30 万円以下の罰金又は拘留、両罰規定:本条の罰金

【補足】両罰規定とは

両罰規定とは

法人に所属する役員や従業員らが、法人の業務に関連して違法な行為をした場合、個人だけでなく、法人も併せて罰せられる規定のこと。
ここで紹介する罰則については主に以下の消防法 第45条〔両罰規定〕が適用されており、後述する命令違反に適用される両罰規定については最大1億円もの罰金刑に処される可能性もあるのです。

法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。

参考消防法 第45条〔両罰規定〕

ちなみにタイトルの【※最大1億円の罰金】は、この両罰規定が適用された場合の罰金額となります。

違法な防火対象物点検済表示または紛らわしい表示

違反条文 第 8 条の 2 の 2第3項
違反概要 違法に防火対象物の点検済表示をした場合又は紛らわしい表示をした場合
罰則規定 第 44 条第 3 号、第 45 条第 3 号
罰則内容 30 万円以下の罰金又は拘留、両罰規定:本条の罰金

防火対象物点検の実施および特例認定(3年間メンテナンス費用が不要になります!)も青木防災㈱の防火対象物点検資格者にお任せ下さいませ。

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管理権原の変更届(特例認定を受けた建物)

違反条文 第 8 条の 2 の 3第5項
違反概要 防火対象物の特例認定を受けたものが、管理権原の変更届を怠った場合
罰則規定 第 46 条の 5
罰則内容 5 万円以下の過料

上述した防火対象物点検および防災管理点検の実施義務がある建物で、かつ特例認定を受けていたものについて管理権原者が変わったにもかかわらず変更届を怠った場合は罰則の対象となります。

この辺りも少々ややこしいですから、我々の様な専門業者に一任しておくと安全でしょう。

防炎性能を有するもの以外に指定表示または紛らわしい表示

違反条文 第 8 条の 3 第 3 項
違反概要 防炎性能を有するもの以外に指定表示又はこれと紛らわしい表示をした場合
罰則規定 第 44 条第 3 号、第 45 条第 3 号
罰則内容 30 万円以下の罰金又は拘留、両罰規定:本条の罰金

防炎性能の表示とは

防炎性能を有するものの指定表示には以下の2種類があります。

  1. 防炎物品の表示
  2. 防炎製品の表示

防炎物品は高層建築物・地下街または劇場・病院等の建築物(防炎防火対象物)に使用が消防法で義務付けられているもので、防炎製品は消防法に基づく防炎物品以外の防炎品で使用する人を火災から守るため火災予防上防炎性能を有することが望ましいとの考えから消防庁等の指導により普及が図られているものです。

参考「防炎物品いろいろ」パンフレット「防炎製品いろいろ」パンフレット

消防検査の拒否および設置届の未提出

違反条文 第 17 条の 3 の 2
違反概要 消防用設備等の検査を拒否した場合、消防用設備等の設置の届出を怠った場合
罰則規定 第 44 条第 4 号、第 44 条第 8号
罰則内容 30 万円以下の罰金又は拘留、両罰規定:本条の罰金

設置届の提出後、消防検査を受ける義務については消防法 第17条の3の2〔消防用設備等又は特殊消防用設備等の検査〕にて以下の通り謳われています。

防火対象物のうち特定防火対象物その他の政令で定める建物の関係者は、設備等技術基準または設備等設置維持計画に従って設置しなければならない消防用設備等または特殊消防用設備等を設置したときは、その旨を消防長または消防署長に届け出て、検査を受けなければならない。

参考消防法第17条の3の2〔消防用設備等又は特殊消防用設備等の検査〕

消防検査は消防用設備等の設置完了検査であり、消防用設備等を設置した後に消防士立会の下で受けるものです。
長い棒持った消防設備士が天井の火災報知器を半年に1回くらい点検しにくるアレは消防設備士による消防用設備点検(俗に言う消防点検)である為、消防検査と異なります。

消防検査と立入検査も異なります!

消防署が抜き打ちでチェックしに来る「立入検査」もあります。

立入検査は建物が消防法に則った状態かを所轄消防署が見回る制度である為、消防検査と異なります。

参考消防検査とは‥?済証受取りまでの流れを解説!

消防用設備点検結果の未報告は虚偽の報告

違反条文 第 17 条の 3 の 3
違反概要 消防用設備等の点検結果を報告せず又は虚偽の報告をした場合
罰則規定 第 44 条第 11号、第 45 条第 3号
罰則内容 30 万円以下の罰金又は拘留、両罰規定:本条の罰金

 

命令違反に対する罰則

ここからは命令違反に対する罰則です。

屋外における火災の予防または消防活動の障害除去のための措置命令違反

違反条文 第 3 条第 1 項
違反概要 屋外における火災の予防又は消防活動の障害除去のための措置命令に従わなかった場合
罰則規定 第 44 条第 1号、第 45 条第 3号
罰則内容 30 万円以下の罰金又は拘留、両罰規定:本条の罰金

 

資料提出命令および消防職員の立入検査を拒否

違反条文 第 4 条第 1 項
違反概要 資料提出命令に従わなかった場合、報告の徴収及び消防職員の立入検査を拒否した場合
罰則規定 第 44 条第 2号
罰則内容 30 万円以下の罰金又は拘留

 

防火対象物に対する措置命令( 改修・移転・除去等 )違反

違反条文 第 5 条第 1 項
違反概要 防火対象物に対する措置命令( 改修・移転・除去等 ) に従わなかった場合
罰則規定 第 39 条の 3 の 2、第 45 条第 1 号
罰則内容 2年以下の懲役と200 万円以下の罰金、両罰規定:1 億円以下の罰金

 

防火対象物に対する措置命令( 使用禁止・停止・制限等 )違反

違反条文 第 5 条の 2 第 1 項
違反概要 防火対象物に対する措置命令( 使用禁止・停止・制限等 )に従わなかった場合
罰則規定 第 39 条の 2 の 2、第 45 条第 1 号
罰則内容 3年以下の懲役と300 万円以下の罰金、両罰規定:1 億円以下の罰金

 

防火対象物に対する措置命令( 火災の予防又は消防活動の障害除去 ) 違反

違反条文 第 5 条の 3 第 1 項
違反概要 防火対象物に対する措置命令( 火災の予防又は消防活動の障害除去 ) に従わなかった場合
罰則規定 第 41 条、第 45 条第 3 号
罰則内容 1年以下の懲役と100 万円以下の罰金、両罰規定:本条の罰金

 

防火管理者選任命令違反

違反条文 第 8 条第 3 項
違反概要 防火管理者選任命令に従わなかった場合
罰則規定 第 42 条第 1 項、第 45 条第 3 号
罰則内容 6ヶ月以下の懲役と50 万円以下の罰金、両罰規定:本条の罰金

前述した「防火管理者の選任・解任の届出を怠った場合」の罰則に加えて、さらに消防署の命令に従わなかった場合の罰則です。

消防署の警告などのみならず、命令まで無視すると罰則も厳しくなる仕組みですか。
命令になるまでワンクッション置いてあるのだから、これには該当しないようにして欲しいです。

 

防火管理業務適正執行命令違反

違反条文 第 8 条第 4 項
違反概要 防火管理業務適正執行命令に従わなかった場合
罰則規定 第 41 条、第 45 条第 3 号
罰則内容 1年以下の懲役と100 万円以下の罰金、両罰規定:本条の罰金

 

統括防火管理者選任命令違反

違反条文 第 8 条の 2 第 5 項
違反概要 統括防火管理者選任命令に従わなかった場合
罰則規定 直接の罰則規定なし
罰則内容 第 5 条の 2 第 1 項による使用の禁止、停止又は制限の命令対象

 

統括防火管理業務適正執行命令違反

違反条文 第 8 条の 2 第 6 項
違反概要 統括防火管理業務適正執行命令に従わなかった場合
罰則規定 直接の罰則規定なし
罰則内容 第 5 条の 2 第 1 項による使用の禁止、停止又は制限の命令対象

 

防火対象物点検の虚偽表示除去・消印命令違反

違反条文 第 8 条の 2 の 2第4項
違反概要 防火対象物の点検虚偽表示除去・消印命令に従わなかった場合
罰則規定 第 44 条第 17 号
罰則内容 30 万円以下の罰金又は拘留

 

特例認定表示に係る虚偽表示除去・消印命令違反

違反条文 第 8 条の 2 の 3第8項
違反概要 特例認定を受けた防火対象物である旨の表示に係る虚偽表示除去・消印命令に従わなかった場合
罰則規定 第 44 条第 17 号
罰則内容 30 万円以下の罰金又は拘留

 

消防用設備等又は特殊消防用設備等の設置命令違反

違反条文 第 17 条の 4第 1 項
違反概要 消防用設備等又は特殊消防用設備等の設置命令に従わなかった場合
罰則規定 第 41 条、第 45 条第 2 号
罰則内容 1 年以下の懲役と100 万円以下の罰金、両罰規定:3000 万円以下の罰金

消防用設備等未設置に対する命令に従わなかった場合、特に両罰規定における法人(役員や従業員)への罰則が重いです。

特に「重大違反」として扱われるスプリンクラー設備や屋内・屋外消火栓および自動火災報知設備の未設置については刑事告発の事例も多々ある為、早めの是正措置を実施しましょう。

 

消防用設備等又は特殊消防用設備等の維持命令違反

違反条文 第 17 条の 4第 2 項
違反概要 消防用設備等又は特殊消防用設備等の維持命令に従わなかった場合
罰則規定 第 44 条第 12 号、第 45 条第 3 号
罰則内容 30 万円以下の罰金又は拘留、両罰規定:本条の罰金

しっかり消防法で決まったメンテナンスしておけば普段から安心だし、罰則の対象にもならないので一石二鳥!
防火管理者さま、ちなみに消防用設備点検の実施についてはプロの業者である我々にお任せ下さい。

 

まとめ

  • 防火管理者が防火管理業務を怠っていた場合には所有者(オーナー)側に責任が生じる仕組みであった。
  • 両罰規定とは「法人に所属する役員や従業員らが、法人の業務に関連して違法な行為をした場合、個人だけでなく、法人も併せて罰せられる規定」であり、最大1億円もの重い罰則が科せられた。
  • 特に「重大違反」として扱われるスプリンクラー設備や屋内・屋外消火栓および自動火災報知設備の未設置については刑事告発の事例も多々ある為、早めの是正措置を実施すべきであった。