消防人の矜持(きょうじ)とは

大阪市平野消防署の男子トイレ小便器前に以下の「不祥事根絶に向けた心構え」に関する貼り紙が掲げてあるのを見かけました。

不祥事根絶に向けた心構え

中央の枠に “消防人としての矜持” なる言葉が記してあります。ザックリ解説してありますが、これだけパッと見ても「消防人の矜持」についてフワッとしか頭に入ってきません。

「消防人」とは

防人の定義について、ここでは以下の消防に係る方々を指すものと解釈します。

  • 消防士
  • 消防設備士
  • 消防団員
  • 防火管理者

う~ん‥まず矜持(きょうじ)って、どういう意味!?
これが難解なのですが…一言で「いい意味でのプライド」ってニュアンスですかね。
ンなら最初から、そやって言うたらエエやん!
何かカッコイイじゃないですか “矜持” って‥パッと見で読めないところもカッコいい。
で‥そんな便利そうな「消防人」とか「矜持」って言葉の陣地を取りに行って、最終的には何が言いたいの?
結論は「消防設備士も消防人として、消防人の矜持を抱いて仕事をしよう。」です!
消防用設備等があることによって‥警防の消防士(火消し部隊)が命懸けになる場面が減らせていたり、救命士さんの負担が軽減されていますからね。
そうなんですが…それらの設置および維持管理している消防設備士って「いい意味でのプライド(矜持)」どころか、むしろ『#消防設備士やめとけ』みたいな感じでひねくれちゃってる人もいる。
『(いや‥それ言うとんのも、お前やろ‥。)』

ここで消防設備士が抱くべき「消防人の矜持」とは何なのか、および「消防人の矜持」を抱くべき理由について書いていきます。

では早速、消防人の矜持について解説していきます。

1⃣ 誇りやプライド

大阪市平野消防署の男子トイレ小便器前に掲げてあった “消防人としての矜持の保持” には、以下の通り記されていました。

消防人としての誇りやプライドを持ち、職場の内外を問わず、どのような場面でも消防人としての使命をわきまえ、決意や覚悟を保持すること。

ちなみに‥この “どのような場面でも” って部分、特に24時間気を抜かずに勤務する消防士っぽい表現でもありますね。
かく語る消防設備士の私も大阪市平野消防署で放尿中という場面に読ませてもらったので、やはり “どのような場面でも” みたいです。

わざわざ矜持(きょうじ)という単語を使ったにもかかわらず、その直後に誇りやプライドと言い換えられた結果ザラメを綿菓子にした位ふんわり仕上げな主張と化しているので、しっかり意味を固めていきましょう。

矜持とプライドの違い

上述した通り、矜持「いい意味でのプライド」の意味があります。

「プライド」とは

「プライド」も誇りを抱く様な意味ですが、単なる “プライド” だけでは良くも悪くも‥なニュアンスがあるのです。

そのプライドについてドラゴンボールのベジータを例に説明してみます。

ドラゴンボールのベジータはサイヤ人ゆえにプライドが高いと作中でいわれております。

そんなベジータは自分がサイヤ人であることに誇りを持つばかりでなく、サイヤ人だからと周囲に実力を不必要に誇示したり、その力を過信してボコボコにされたりと誇りがマイナスな方向にも作用しちゃっている格好になっています。

このベジータは矜持あるサイヤ人ではなく、プライドが高いサイヤ人と言えるでしょう。

サイヤ人を消防人に置き換えてみましょう。

消防人だからといって自身が従事する業務についてイキり散らかすのではなく、ただ「これだけは譲れない」といった熱い想いを自分の中だけで抱いていればいいのです。

この間ジミーちゃん(@0816Jimmy)氏が運営するLINEオープンチャットで消防署で働く消防士さんや救命救急士さんが『消防署の花形は○○や!』みたいな感じで、どの部署が花形なのかプライドむき出しで熱く語り合ってましたね。
あれ正直メッチャ不毛かつ矜持ない議論やな‥と思ってた。
せめて「オレの部署が花形や!」って主張するなら、その根拠をセットで周囲が納得できる形にして述べないと。
例えば化学の世界やったら‥あらゆる物質を合成で作るから、有機化学が花形。
鈴与㈱やったら‥事業収益の源泉だから、コンテナターミナル部が花形。
スラムダンクやったら‥翔陽のセンターが、花形‥。
お前それ最後の花形は「花形 透」の苗字やんけ!

消防人はプライドではなく矜持を保持しましょう。

自律心と矜持

大阪市平野消防署の男子トイレ小便器前に掲げてあった “自律心と人権感覚の堅持” には以下の通り記されていました。

自分自身の感情や欲望をコントロールし、自らの意思で正しい行動をとる。

この “自分自身の感情や欲望をコントロールし‥” の部分は、矜持ある消防人として欠かせない点でしょう。

なぜなら、この自分を律する心によってプライドから「いい意味でのプライド(≒矜持)」のみが抽出されるからです。

もし自律心を堅持しなければ‥己をイタズラに誇示するイキりベジータになったり、偉そうな人に媚びて弱そうな人を見下すインチキおじさん登場しちゃうでしょう。

頭では‥自律心を堅持して『これだけは譲れない‥頑張る!』等と分かっていたとしても、すぐ組織の論理に染まっちゃう。
人間の意志力って弱いですから、こんな感じで「消防人の矜持」として理解して頭に入れておかないと言い訳をして易きに流れちゃうんですよね。

次に実際たくさん蔓延っている矜持なし付和雷同フワライド人間マンが周囲に流されず、消防人の矜持を貫く方法を紹介します。

周囲に流されない方法

易きに流れない、周囲に流されない人(≒自律心があって矜持ある人)となるには、確固たる自信の礎となる「知」を得る方法があります。

「知」を得ない、得ようとしない人の末路

逆に「知」を得ない、得ようとしない人がどうなるかというとプライドを持つだけの根拠に乏しい為、周囲を下げる思考や発言で結果的に自分を上げようとするネガティブキャンペーン(以降、ネガキャン)に走ります。
もし矜持ある消防人となって日々エネルギッシュに活動したいのであれば、こういったネガキャンを張る人は害になるので一線引いた方が身のためでしょう。
どこの組織でもネガキャン張る人はいるので‥もし一線引きにくい環境なら最悪、転職も視野に入れた方がいい。
特に仕事の成果が数値化しにくい言うたモン勝ちな職種だとネガキャンは起こりやすいでしょう。
ちなみに異動や転勤の無い地域密着の中小企業が多い消防設備業界はキャリアプランが10年くらいで飽和する為、今のところスキルの横展開など「知」のアップデートを行う工夫が必須です。

そういった確固たる自信の礎となる「知」のアップデートを終了させてしまった人ほどネガキャンで無理やり上げた自己評価のつじつま合わせをする為、偉い人に媚びたり誰かを見下して何とか自己解決しようとする悲しきモンスター化が進んでいます。

媚びない、そして見下さない。
その為の確固たる自信の礎を形成する為、消防設備士も「知」を追うのです。
もし周囲のやり方に違和感を抱いたならば、こちらが確からしいソースから情報を集めて「知」として頭の引き出しに保存しておく。
前進すべく「知」を追っていけば、むしろ同志が集まっていい流れに乗ることもできますよ。
この “いい流れ” の波乗りをするには「発信」することが、まだまだ道半ばですが近道でした。(※私の場合)

こうして真のプライド(≒矜持ある消防設備士)を保持できれば、クライアントの「かけがえのない大切な友人」として信頼できるアドバイザーのポジションを獲得できるでしょう。

「顧客」と「クライアント」の違い

『ウェブスター英語辞典』によれば、一見同じような2つの言葉の定義は次の通りです。

  • 顧客:商品やサービスを購入する人
  • クライアント:他人の保護下にある人

参考ハイパワー・マーケティング P.32~33

「我々(消防設備士)の保護下にある人」は1回で最大限の利益を得るためだけに商品やサービスを売る対象ではない為、取引時に必要とされる結果まで(クライアント自身が言語化できていなかったとしても)導きます。

つまりクライアントは生涯、信頼できるアドバイザーである我々(消防設備士)の保護下にある存在となります。

この “信頼できるアドバイザー” ポジションを確立する為に「知」は欠かせない、つまり消防人の矜持があるのもだけが “クライアント” を相手に商売ができるのです。

消防設備士にとってのクライアント

ちなみに消防設備士にとってのクライアントに該当するのは建物関係者や工務店およびビル管理会社などの分かりやすい「お客様」だけでなく、消防士も含まれると思っています。

では次に、我々消防人に課せられた使命について言及していきます。

2⃣ 使命

大阪市平野消防署の男子トイレ小便器前には “消防の使命と役割” について以下の通り掲げられていました。

消防の使命と役割は「災害の防ぎょ、人命・財産の保護」である。

消防設備士は消防人ですから、もちろん上述されている通り使命と役目があります。

これは、よく似たことが消防法の目的について消防法 第1条〔目的〕でも謳われている通りですね。
消防人は全員この「大義名分」を背負っている…いや心の拠り所として仕事をさせてもらっている。
仕事をする理由としてシンプルで分かりやすい大義名分だから『この仕事‥何でやってんのやろ?』みたいな迷いが生じにくくてモチベーションも保ちやすい。
加えて消防人の中でも民間企業に所属する消防設備士は “産業人” としてのビジョンや感覚を忘れたらアカン思います。

松下幸之助の言葉

平素より弊社が大変お世話になっておりますPanasonic(旧:松下電器産業)ですが、その創始者である松下幸之助さんが以下の通り述べられていました。

僕は産業人たる本分に徹し、社会生活の改善と向上をはかり、世界文化の発展に寄与せんことを期す‥

参考ビジョンとともに働くということ P.140

この「社会生活の改善と向上をはかる」部分は消防人全員に共通することですが、消防設備士については “産業人” としてのアプローチもできるという武器があります。

エエ加減な仕事をすれば死人が出る等の責任を自覚した上であれば消防人の中で唯一、民間企業つまり営利団体である消防設備士だけが産業人に許された社会への価値出しゲームを存分に楽しんでいいと許可されています。
バランス感覚が大事ですが。
例えば目先の利益欲しさにサービスの質を犠牲にした薄利多売の戦略は産業人としては(嫌だけど)アリですが、消防人(※矜持ありの場合)としてはナシでしょう。

最後に、この消防設備士にだけ許された “消防人” と “産業人” の2使命を持って、この消防業界という山を登る上での決意や覚悟を述べていきます。

3⃣ 決意や覚悟

大阪市平野消防署の男子トイレ小便器前に掲げてあった “消防人としての矜持の保持” には以下の通り記されていました。

消防人としての誇りやプライドを持ち、職場の内外を問わず、どのような場面でも消防人としての使命をわきまえ、決意や覚悟を保持すること。

上述した2使命を抱いた上で、これから「消防人の協同」を実現する決意と覚悟を持って仕事に取り組んでいきます。

あの有名なマーティン・ルーサー・キング・ジュニア氏の演説「私には夢がある」の一説に以下の文言があります。

私には夢がある。それは、いつの日か、ジョージア州の赤土の丘で、かつての奴隷の息子たちとかつての奴隷所有者の息子たちが、兄弟として同じテーブルにつくという夢である。

参考米国の歴史と民主主義の基本文書「私には夢がある」(1963年)

キング牧師の言葉を引用し、2使命を抱いて「消防人の協同」を実現したい消防設備士(である私)の夢を語ると以下の通りになります。

消防設備士の夢

私には夢があります。それは、消防士と消防設備士が、同じ消防人としての矜持を保持して防火管理に勤しむという夢であります。

この夢を実現する為にも消防設備士が自律心を持って、確固たる自信の礎となる「知」のアップデートをし続ける決意と覚悟が必要なのです。

もし自律心を持って確固たる自信の礎となる「知」のアップデートをし続けられている状態であれば、この時代を生き抜く上で極めて重要な「他者貢献」も捗るのでメンタル的にも健やかな働き方に。
クライアント(建物関係者や工務店およびビル管理会社などの分かりやすい「お客様」だけでなく、消防士も含まれる)の役に立つことで、きっと消防設備士の価値および消防設備士として業務に従事する自らの価値も実感できるでしょう。
消防人の矜持がある者にのみ、この「生の実感」が与えられるのです。

終わりに

あなたは周囲に同調して頑張っている者の陰口を言ったり、自分にもサボることを許していませんか?

あなたは専門性を磨き、確固たる自信に基づいてクライアントの役に立てていますか?

あなたには、消防人の矜持がありますか?


現場からは以上です!

まとめ

  • 矜持とは「いい意味でのプライド」であり、消防人は矜持を保持すべきであると大阪市平野消防署の男子トイレ小便器前に貼り紙が掲げてあった。
  • 真のプライド(≒矜持ある消防設備士)を保持できれば、クライアントの「かけがえのない大切な友人」として信頼できるアドバイザーのポジションを獲得できた。
  • 消防設備士だけが産業人に許された社会への価値出しゲームを存分に楽しんでいいと許可されており、 “消防人” と “産業人” の2使命を持って「消防人の協同」を実現する「消防人の矜持がある者」にのみ、この「生の実感」が与えられた。