火災通報装置の配線工事

火災通報装置って‥電話だけど配線どうなってんの?
一応、通信工事の資格要るけど‥とても簡単なので解説しますね!

火災通報装置と専用受話器間の配線

火災通報装置本体と専用受話器の各端子台間は、合計9本の電線を用いて接続します。

その内、上の2本に関してはPVC線(電話機接続用電線)を使用しなければなりませんので注意が必要です。

他の7本の電線の種類に関して指定はありません。

その為、8本1対のLANケーブルを使用して施工するのが見栄えもよく仕上がる為、オススメです。

マニュアルを使いこなす事の重要性

皆様も業務に携わるに際して『え~っと、確か…』と手順に迷いが生じてしまったり、分からなくなってしまったりする事があるかと思います。

その時に、自分にとって必要な情報がどこにあるかをパッと思い浮かべて、それに到達するスキルが重要であり、その力の有無で、仕事の速さと正確さに差が生じていると思っています。

特に比較的機会の少ない業務に携わった際は、次回それを再現できるように詳細なマニュアルを作成しておくと便利です。ま

た、それを可能な範囲でホームページ上にブログとしてアップロードして公開しておけば、自分だけでなく多くの方が使用できるものとなり、価値が高まります。

ちなみに、火災通報装置の配線に関しては施工説明書が機器に付属している為、例えば結線の方法をド忘れしても、それを参照すれば問題ありません。

火災通報装置の電源

火災通報装置の電源は、自動火災報知設備や誘導灯と同じく分電盤内にAC100Vの専用回路を設け、火災通報装置本体の端子台に結線します。

前述した火災通報装置本体と専用受話器の工事については甲種4類消防設備士の免状が必要となりますが、この分電盤と機器を繋ぐ電源工事をするに際しては電気工事士の免状が必要となります。

交換機まで引き込んでもらった電話線

先月も言及しましたが、119番直通の電話である火災通報装置には「専用」の電話回線が必要となる為、使用していない固定電話等の利用可能な専用電話回線がなければ、電柱から電話回線を引き込む工事が伴います。

その電柱から引き込まれたアナログ電話回線は電話交換機という機器に接続されています。

電話交換機上部には端子台が設けられており、その左側には「外線」と記載された左側の端子には、外から引き込まれた電話線がL1とL2に2本接続されています。

そして、右側の端子には火災通報装置へと繋ぐ為の電話線を接続します。

電話交換機とローゼット間の結線

火災通報装置本体には「ローゼット」という電話線の繋がった四角い箱が収納されています。

このローゼット内には番号の割り振られた6つの端子台があり、電話交換機より引かれた2本の電話線をローゼット内のL1とL2と記載された端子に電話線をそれぞれ結線します。

この一見シンプルな、電話交換機とローゼット間を電話線にて接続する工事ですが、実は「工事担任者」という電気通信工事の免状が無ければ行えません。

甲種4類消防設備士の免状取得者が、火災通報装置の工事着工10日前までに所轄消防署に提出する「着工届」にも、工事担任者の免状番号と名前を記入する欄があります。

電気通信設備工事担任者の資格について

電気通信設備工事担任者(以下“工担”)の資格は、以下のように分類されています。

  • 【アナログのみ】第一級アナログ通信、第一級アナログ通信、AI第2種
  • 【デジタルのみ】第一級デジタル通信、第二級デジタル通信、DD第2種
  • 【アナログ・デジタル両方】総合通信(旧:AI・DD総合種)

1~3種というのは、アナログであれば回線数、デジタルであればデジタル信号の入出力速度によって分類されています。

ところが、受験資格については制限がなく、例えば第一級デジタル通信(旧:DD1種)にいきなり挑戦する事も可能というルールになっています。

私が受験するに際して、初めは火災通報装置の通信回線もデジタルに移行していくだろうと予想しており第一級デジタル通信(旧:DD1種)を取ろうと思っていたのですが、やはりアナログもまだまだ必要だろうと思い返し、第一級デジタル通信(旧:DD1種)と総合通信(旧:AI・DD総合種)をダブル受験することとしました。

そして勉強に取り組んだのですが、総合通信(旧:AI・DD総合種)の出題範囲が、第一級デジタル通信(旧:DD1種)の出題範囲にアナログ回線について少し追加されたのみであった為、主に第一級デジタル通信(旧:DD1種)の勉強に取り組み、余裕があれば総合通信(旧:AI・DD総合種)…と言う様な方法が可能でした。

ですから初めて受験される方は、併願して総合通信(旧:AI・DD総合種)に挑戦されては如何かと思います。

自動火災報知設備との連動

有床の福祉施設等の用途では、自動火災報知設備の発報に連動して火災通報装置が働く様にしなければなりません。

その火災通報装置の「自火報連動」にするに際して、自動火災報知設備の受信機と火災通報装置本体の間に“連動停止スイッチ”という機器を設けます。

主に点検時、この自火報連動停止スイッチを押し、感知器や発信機を試験した際に火災通報装置が連動しない様にします。

法改正により設置義務が生じる事となった連動停止スイッチですが、一時期は施工ラッシュで消防設備士は大忙しでした。

また、最近の自動火災報知設備の受信機には、連動停止スイッチの様に火災通報装置との連動のみを制御するスイッチを受信機上に設けられる様になっています。

ですから、新設の建物に連動停止スイッチを設けることは少なく、主に既存の建物の受信機―火災通報装置間に対して設置を要する機器となります。

自動火災報知設備の感知器が作動した段階では、まだ火災かどうか断定されていない状態であり、誤作動の様な「非火災報」である可能性があります。

それにも関わらず、所轄消防署への通報がなされ、消火・救出活動を行う消防隊の方々が駆け付けられる仕様となっている事から、火災通報装置が“自火報連動”となっている有床の福祉施設(老人ホーム等)の用途で使用されている建物は、火災発生時の危険度が極めて高い位置づけとなっている事が読み解けます。

今後、ますます高齢化が加速する日本にて、福祉施設等の用途で使用される建物が増加していきます。

中には「現行の法令の規制対象にはならないが危険度は高い」様なパターンが生じ得る為、それに伴って消防用設備等にまつわるルールも変化し続けるでしょう。

誤作動による出動が増えた所轄消防署

余り大きな声では言えませんが、自動火災報知設備は“結構な頻度”で誤作動を起こす事があります。

つまり、自動火災報知設備と火災通報装置を連動させるという事は、その“結構な頻度”で起こる誤作動のタイミングで119番通報がされるという事であり、当然消防署の方々が誤作動に伴って出動する回数も増えてしまいます。

誤作動であるに越した事はありませんが、特に自動火災報知設備の調子が悪い福祉施設が管轄内にある消防署は手間が増えただろうと推測しております。

自動火災報知設備や誘導灯については日常的に目にする事ができますが、同じ4類の消防用設備でも火災通報装置は設置されている実物を目にする機会が限られているので、是非その存在だけでも頭の片隅に置いておいて頂けましたら幸いです。

まとめ

  • 火災通報装置本体と専用受話器の各端子台間は、合計9本の電線を用いて接続した。
  • 火災通報装置の電源は、自動火災報知設備や誘導灯と同じく分電盤内にAC100Vの専用回路を設け、火災通報装置本体の端子台に結線した。
  • 電話交換機とローゼット間を電話線にて接続する工事は「工事担任者」という電気通信工事の免状が無ければ行えなかった。