危険物施設の屋内消火栓5箇所同時放水試験【※屋外消火栓は4箇所】

あれ?屋内消火栓とか屋外消火栓の同時放水試験って2箇所じゃなかったっけ?
危険物施設の場合は危険物の規制に従うので、5箇所とか4箇所なんですよ。

消防法は主に以下の2つの物について規制が適用されています。

  1. 建物
  2. 危険物

消防設備士の業務で関わるのは「1. 建物(消防法第17条関係)」についてですが、今回は消防設備士だけでなく危険物取扱者の領分である「2. 危険物(消防法第10条関係)」の業務に係るものでしたので紹介させて頂きます。

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防火対象物の放水試験

建物(防火対象物)に対して設置されている屋内消火栓および屋外消火栓の放水試験については消防法施行令 第11条〔屋内消火栓設備に関する基準〕および消防法施行令 第19条〔屋外消火栓設備に関する基準〕にて以下の通り規定されています。

  同時放水 放水圧力 放水量
屋内消火栓 2箇所 0.17MPa以上 130ℓ/min以上
屋外消火栓 2箇所 0.25MPa以上 350ℓ/min以上

放水圧力の減圧措置

放水圧力の屋内消火栓は0.7MPa以下屋外消火栓は0.6MPa以下となるように減圧措置をすることが消防用設備等の設置工事完了した際の合否判定をする為の試験基準(屋内消火栓設備_試験基準屋外消火栓設備_試験基準)で規定されています。

屋内消火栓の減圧措置

屋外消火栓の減圧措置

上記の試験基準で規定されている放水圧力の最大値については防火対象物だけでなく、以下の危険物施設の完了検査においても適用されています。

危険物の放水試験

一方、危険物に対して設置されている屋内消火栓および屋外消火栓の放水試験については危険物の規制に関する規則 第32条〔屋内消火栓設備の基準〕および危険物の規制に関する規則 第32条の2〔屋外消火栓設備の基準〕にて以下の通り規定されています。

  同時放水 放水圧力 放水量
屋内消火栓 5箇所 0.35MPa以上 260ℓ/min以上
屋外消火栓 4箇所 0.35MPa以上 450ℓ/min以上

 

危険物の規制に関する規則より

屋内消火栓設備は、いずれの階においても、当該階のすべての屋内消火栓(設置個数が五を超えるときは、五個の屋内消火栓)を同時に使用した場合に、それぞれのノズルの先端において、放水圧力が〇・三五メガパスカル以上で、かつ、放水量が二百六十リットル毎分以上の性能のものとすること。

屋外消火栓設備は、すべての屋外消火栓(設置個数が四を超えるときは、四個の屋外消火栓)を同時に使用した場合に、それぞれのノズルの先端において、放水圧力が〇・三五メガパスカル以上で、かつ、放水量が四百五十リットル毎分以上の性能のものとすること。

50Aの媒介金具(減圧機構付)

特に危険物施設の屋内消火栓および屋外消火栓は設計圧力が高い為、減圧措置として媒介金具(減圧機構付)を追加で設置する場合が多いです。

この媒介金具はバルブと消防ホースの間に噛ませて使用し、バルブから出る水の勢いをオリフィス(穴のある薄い金属板で、配管内などに設置することで流体の流量や圧力を制御するもの)で規定の放水圧力値まで弱めます。

参考J10050C_差込式メス50A×差込式オス50A_㈱立売堀製作所

屋内消火栓5箇所の同時放水試験

50Aの消防ホース

屋内消火栓5箇所の同時放水に際して建物の上階から消防ホースを降ろす必要があった為、現地調査に行ったところ消防ホースが50Aであることが判明しました。

ん?消防ホースの太さが50Aやったら何か問題でもあんの?
普通は40Aなんですよ‥ってか40A以外見たこと無かったので、現地調査行ってホント良かったです。

注意

危険物施設の屋内消火栓は必要な放水量260ℓ/分を確保する為、消防ホースの径が50Aになっている可能性があるので必ず事前に現地調査をしておきましょう。

50Aに対応した試験器を用意

いつも使っている40Aの口径では放水試験ができないので、これを機に50Aに変換する消防ホース結合金具を買い揃えました。

注意

一番左のステンレス製の測定機については無理矢理40A→50Aに変換しているだけなので正確な値は測定できません。あくまで放水圧力を弱める為だけの物です。
でも‥お高かったんでしょう?
こちらの元を取る為にも‥是非、弊社へ危険物施設においても消火設備の設計・施工およびメンテナンスをお任せ頂けましたら幸いです。

また、手持ちのピトーゲージも圧力計を更新して用意しておきました。

注意

手持ちのピトーゲージで測定する場合は測定者が飛び散った水でビショ濡れになる為、必ず雨合羽を持っていきましょう。

屋内消火栓5箇所の同時放水試験の結果

5箇所同時放水試験で無事、全ての屋内消火栓にて0.35MPa以上の放水圧力が確認されました。

ピトーゲージ使用上の注意点

危険物施設は設計放水圧が0.35MPa以上と強い為、測定者が持っているピトーゲージが水圧に押されるので測定の難易度が高いです。

ピトーゲージの説明書にも記載されていますが、消防ホースの口径Dの1/2の距離で放水圧を測定しましょう。

力強く持ち、跳ね返ってくる水に負けずに測定しましょう。
やっぱピトーキング(※商品名)を含む放水試験器ってスゴイですわ…周囲に水が飛び散らないし測定者も濡れないし。

屋外消火栓4箇所の同時放水試験結果

次に屋外消火栓の同時放水試験を実施した際の測定結果ですが今回、以下の3パターンを測定しました。

  1. 同時放水4箇所(A~D)
  2. 同時放水2箇所(DおよびE)
  3. 直近1箇所(Eのみ)

所轄消防署の指導に基づく測定方法です。

同時放水4箇所

4箇所全て0.35MPa~0.6MPa以内の放水圧力で収まっている為、試験基準クリアです。

同時2箇所(直近と1栓)

こちら同時2箇所の放水試験が、いつも消防設備士が普通の建物の実施している方法です。
【※追記】いつも消防設備士が実施しているのは(最遠と1栓)でした。YouTubeライブ配信中に気づきました、お詫びと修正をさせて頂きます。

D・E共に0.6MPaを超えていた為、媒介金具(減圧機構付)を設置することによる放水圧力の調整を検討する必要がありました。

参考J10065C_差込式メス65A×差込式オス65A_㈱立売堀製作所

しかし、Dについて同時放水4箇所の放水圧力が0.45MPaだったものに媒介金具を設置すると大体0.3MPa~0.35MPaと規定の最低放水圧力値を割る可能性がありますよ。
ここは所轄消防署の消防検査時に危険物担当の方と要相談でしょう。

単独1箇所(直近のみ)

最後に直近1箇所の放水試験です。こちらは圧力が強すぎないかを測定するものです。

危険物施設に適用される消防法は普通の建物と違うから、その分だけ覚えておかなきゃならないことも増えるネェ~。
ちなみに無事、消防検査はクリアしておりますから危険物施設における消防用設備等の設計・施工およびメンテナンスも弊社に是非お任せ下さいませ。

まとめ

  • 消防設備士の業務で主に関わるのは「1. 建物(消防法第17条関係)」についてだが、危険物取扱者の領分である「2. 危険物(消防法第10条関係)」の業務に係るものもあった。
  • 危険物施設では屋内消火栓および屋外消火栓の放水圧力を0.35MPa以上にし、かつ屋内消火栓は同時放水5箇所で屋外消火栓は同時放水4箇所で試験をしなければならなかった。
  • 危険物施設の屋内消火栓および屋外消火栓は設計圧力が高い為、減圧措置として媒介金具(減圧機構付)を追加で設置する場合が多かった。