防火管理者は何をする?その役割と7つの責務について解説【保存版】
きっと多くの方々が突然『防火管理者、できますか?』と言われてもムチャ振りで何をすれば良いのかさっぱり分からない状況でしょうから、ここで消防設備士であり防火管理にも詳しいプロの立場から簡単に噛み砕いて解説していきます。
この記事に書かれていることを実行していけば、誰でも防火管理者の役割および責務を果たせるでしょう。
目次
防火管理者が実施すべき防火管理業務7つ
- 消防計画の作成
- 消火・通報および避難の訓練の実施
- 消防用設備等の点検および整備
- 火気の使用または取扱いに関する監督
- 避難または防火上必要な構造及び設備の維持管理
- 収容人員の管理
- その他防火管理上必要な業務
これらを適切に実施して、防火管理維持台帳に記録するまでが防火管理者の責務です。
これらの防火管理業務について、はじめに「消防計画の作成」で全てを規定しておきます。
消防計画の作成が防火管理者の実務7つのうちの一つ目で、残り6つの防火管理者の実務について消防計画に予め規定しておくルールとなっています。
【補足】統括防火管理者と防火管理者の違い
- 建物全体についての消防計画の作成・届出
- 建物全体についての消防計画に基づく、消火・通報および避難訓練の実施
- 防火対象物の廊下・階段・避難口その他の避難上必要な施設等の管理
統括防火管理者は、統括防火管理の業務上必要があると認める時は各防火管理者に対して必要な指示をすることができる。
それでは以下に作成する消防計画の内容を通して、防火管理者の役割となる防火管理業務7つについて順番に解説していきます。
1⃣ 消防計画の作成
消防計画とは、それぞれの建物やテナント部分で火災予防または火災の被害を最小限にする為に防火管理者が作成するものです。
消防計画上で規定しておく事項は建物によって様々ですが、おおむね以下の事項を謳っておきます。
2⃣ 消火・通報および避難誘導の訓練の実施周期
建物の用途が特定防火対象物(不特定多数の人が出入りする用途)なのか、それ以外(非特定防火対象物)かで訓練回数が異なるので注意しましょう。
訓練種別 | 訓練回数 | |
特定防火対象物 | 非特定防火対象物 | |
消火訓練 | 年2回以上必要 |
消防計画に定める回数
(年 1 回以上が目安) |
避難訓練 | ||
通報訓練 | 消防計画に定める回数(年 1 回以上が目安) |
※訓練を実施する際には、消防訓練実施計画(結果)報告書を消防署へ提出します。
せっかく高いカネ払って消防用設備等を設置しているのですから、しっかり訓練まで実施して使えるものにしなければもったいないと思いませんか?
3⃣ 消防用設備等の点検および整備について
消防用設備点検の 実施時期 |
機器点検 | 6 ヶ月ごと |
総合点検 | 年1回 |
点検結果の報告時期 (※総合点検の結果を報告) |
特定防火対象物 | 1 年に 1 回 |
非特定防火対象物 | 3年に 1 回 |
【補足】消防用設備点検と防火対象物点検の違い
消防用設備点検がハード面(自動火災報知設備やスプリンクラー設備など)の点検であるのに対し、防火対象物点検はソフト面(防火管理者を選任しているかや消防訓練などを実施しているか等)の点検である為、両者は別の点検制度です。
消防用設備点検がハード面の点検であるのに対し、防火対象物点検は防火管理者を選任しているかや消防訓練などを実施しているか等のソフト面の点検である。
新宿歌舞伎町ビル火災を契機にできた点検報告制度で、消防署だけでは建物の防火管理体制の全てに目を通すことは数的に困難であったことから民間に一部業務が流れたもの。
防火対象物点検の実施義務がある建物は年に1回実施および報告をします。
防火対象物点検の実施義務がある建物の防火管理者をされている方で、まだ特例認定を取っていない場合は維持管理費をムダ払いしているので今すぐ確認しましょう。
4⃣ 火気の使用または取扱いに関する監督
もし火気の使用が想定される場所が決まっているならば、そこに防火管理者が火元責任者を選任して指示すべきでしょう。
この火元責任者その他の防火管理の業務に従事する者についても、あらかじめ消防計画にて謳っておきます。
5⃣ 避難または防火上必要な構造及び設備の維持管理
㈱石井マーク(避難経路の維持管理および案内について
避難経路となる避難口や階段および通路等には避難障害となる設備を設けたり、物品を置かないように防火管理者が維持管理します。
もし防火管理者が消防計画に則り、防火管理ができていれば救われた命があったのです。
防火設備の維持管理
防火戸・防火シャッター等の付近に閉鎖障害となる物品が置かれていないかを防火管理者が定期的に確認します。
避難経路の確保や防火管理の維持管理は防火管理者の責務ですから、もし有事の際に動作するように業者に依頼する等、定期メンテナンスをしておきましょう
6⃣ 収容人員の管理
消防法上、収容人員が多いほど火災リスクが高く、そこに適用される規定も厳しくなります。
もし建物を利用する収容人員が増加する場合は、所轄消防署へ報告することも検討しましょう。
7⃣ その他防火管理上必要な業務
建物によっては例えば少量の危険物を保管したり、可燃物を取扱ったりと独自の防火管理業務が必要となるケースがあります。
それらの考え得る火災リスクに対して、事前に消防計画上で予防策および届出を行っておきます。
大阪市消防局では2022年11月より消防関係手続の一部の届出等について「大阪市行政オンラインシステム」を活用した電子申請サービスが開始されます。
- 消防用設備等(特殊消防用設備等)点検結果報告書
- 消防訓練通報書
- 防火管理者選任(解任)届出書
- 防火管理に係る消防計画作成(変更)届出書
- 防火対象物点検結果報告書
- 防災管理点検結果報告書
- 防災管理に係る消防計画作成(変更)届出書
※その他は大阪市HPをご覧下さい。
ちなみに青木防災㈱のBOSAIメンバーであれば、上記の防火管理維持台帳に記録する「消防計画に基づいて実施される事項」を全てWeb上の専用マイページにて電子データで管理できる為、防火管理業務がラクになりますよ!
その他、防火管理上の質問など御座いましたら青木防災㈱公式Twitter(@aokibosai)のDMもしくはLINEオープンチャット「消防設備士Web勉強会」上でご連絡下さいませ。
現場からは以上です!
まとめ
- 防火管理者は消防法第8条に基づき、管理権原者(建物の所有者・管理者など)から防火管理業務を行う担当者として選任された人のことであった。
- 防火管理業務について、はじめに「1. の消防計画の作成」で全てを規定しておく為、消防計画の内容について理解しておけば防火管理者として何をすればいいか分かった。
- 防火管理者が果たすべき役割の中で、何をするのか不明な点があれば我々プロの消防設備業者がサポートしていた。